最速スタイリストデビューのエース美容師が、なぜ中国・上海へ?! 私の履歴書 【美容師兼ヘアメイクアップアーティスト 井上 匠さん】#1

東京・神奈川に複数の店舗ヘアサロンを展開する「KINGDOM(キングダム)」。その中でも本店と位置付けられる東京・青山のサロンで、井上 匠さんはトップスタイリストとして活躍しています。

美容師をしながら、実はヘアメイクアップアーティストとしても活動しているという井上さん。さらには中国・上海へ1年半ほど渡航していた経験もあるなど、唯一無二のキャリアを積まれています。

前編では、美容師を志すまでの物語から始まり、美容師としてのキャリアを築く様子、中国・上海へ渡るきっかけやそこでの様子などをお話しいただきました。

TAKUMI’S PROFILE

お名前

井上 匠

出身地

福岡県福岡市

出身学校

大村美容ファッション専門学校 美容科

プライベートの過ごし方

映画観賞、読書

趣味・ハマっていること

「ヘッドピース作りです。制作したものは、作品撮りの時の小道具としても使っています」

仕事道具へのこだわり

「美容師としては、7本のハサミをヘアデザインによって使い分けていること。ヘアメイクアップアーティストとしては、とにかく実際に試しながら厳選することですね。ポイントメイクなら発色、ベースメイクなら肌へのなじみ具合は特に注視しています」

美容師に興味を持ったきっかけは、厳しかった学校の校則

井上さんが美容の仕事に興味を持った、その意外なきっかけとは?

——早速ですが、井上さんが美容師を志すこととなったきっかけや経緯を教えてください。

当時通っていた、高校の校則が厳しかったことです。今時珍しいと思うんですけど、男子生徒は、全員襟足を刈り上げていなくちゃいけなかったんですよ。

——野球部だとか、所属する部活動によらず、ですか?

はい。厳しい校則をかいくぐりながら、どうやってオシャレに見せようかと、日々試行錯誤をしていました。高校生って、男子も少しずつオシャレに興味を示し出す年頃ですしね。

友達同士で色々試していく中で、人の印象を左右するヘアデザインについて興味を持ちました。友人の髪を僕がカットしたりアレンジしたりして、喜んでもらえたこともあります。

そんな高校生活が背景にあり、進路を決める段階では「美容師になろう」と、美容専門学校に進学することにしたんです。

——どちらの専門学校へ?

「大村美容ファッション専門学校」の美容科に進みました。僕の出身地である福岡では、有名な美容系の専門学校です。就職率も良く、有名サロンへの輩出者も多かったことも魅力でした。その時は、東京や大阪に出ることは考えていなかったので、地元の学校を選びました。

——学生時代は、いかがでしたか?

2年間みっちり学ばせていただき、無事国家試験もパスして美容師免許を取得しました。

この頃よく思っていたのは、ウィッグヘッドではなく実際の人に施術したいという気持ちでしたね。早く一人前の美容師として、お客様のヘアスタイルをデザインしたい! とずっと思っていました。

そんな思いもあり、就活時には、スタイリストになるためのカリキュラムなどについてサロンに質問して回り、早くスタイリストになれるサロンを探していました。

誰よりも鍛錬を積み重ね、たった1年半でスタイリストデビュー!

上京し、本格的に美容師としてのキャリアをスタート。そこでの快進撃について伺った

——就職活動をする中で、早くスタイリストになれるヘアサロンとして「KINGDOM」に就職を決めたのですね。

はい。僕は新卒の時からずっと「KINGDOM」なんです。配属先もここ、青山の本店に決まり、就職を機に上京しました。

——そうだったんですね! 新人時代は、いかがでしたか?

一刻も早くスタリストになりたかったので、寝る間も惜しんで練習していました。

始発でサロンに向かって朝練し、通常営業をこなした後も残って夜遅くまで練習し、帰宅後も自主練する…そんな日々でしたね。

休みの日にはモデルさんの髪をお借りして練習させていただいたり、カメラマンさんなどとも協力しながら作品撮りをしたりしていました。

——努力の人ですね…!

アシスタントのままだとお客様のヘアカットができないので、「早く自分でお客様を担当し、トータルで可愛く、格好良くしたい」というその一心でした。

猛練習の甲斐あって、スタイリストになるための試験をほぼ最短でクリア。1年半で、スタイリストとしてデビューを果たしました。22歳のときだったかな。

——最速でデビューされたのですね! スタイリストとしてお客様を担当してきた中で、印象に残っている出来事はありますか?

やはり、お客様にご満足いただけた気持ちを伝えてもらえたことですね。

「今までどこのサロンへ行っても、仕上がりや翌朝以降のヘアスタイルが思い通りにならなかったんです。けれど井上さんに担当してもらってからは、仕上がりも思った通りだし、翌朝以降の髪も扱いやすくなりました。おかげで毎日気分が良くて、サロンへ足を運ぶのも楽しみです」と言っていただけたことがあって。とても嬉しくて、今でもよく覚えています。

——お客様とヘアスタイルの認識をすり合わせるのは簡単ではないと思いますが、オーダー時に気を付けていることなどはありますか?

参考画像などを見せてくださるお客様が多いのですが、そのヘアスタイルの「素敵だと思うところ」のすり合わせを特に大切にしています。

どこを素敵だと思っているかというポイントは、意外と人によって違うんですよ。それが、例えばシルエットなのか? はたまた毛先のニュアンスなのか? など、細かいことかもしれませんが、突き詰めてお聞きするようにしています。

井上さん愛用の、7本のハサミ…と言いたいところだが「ちょうど1本研ぎに出していて、今6本しかないんです(笑)」(井上さん)
井上さんが在籍する「KINGDOM AOYAMA 表参道・青山本店」。敷地内は緑が多く、バンブーを使用した柱や天井の装飾なども相まってリゾートな趣き

美容師としてのキャリアを着実に積み上げていた中、突然の海外チャレンジ!

実は、中国・上海を拠点に活動していた時期があるという。そのきっかけや経緯をお話しいただいた

——美容師としてのキャリアは、いかがでしたか?

順調な方だと思います。2015年にはGOLDWELL世界大会で予選を通過、2018年にはキャンパスコレクションバックステージに参加し、KINGDOMの成人式用カタログのスタイルも担当させていただきました。6年目となる2019年にはトップスタイリストに昇格しましたが、このタイミングで突然、びっくりするようなお話をもらったんです。

——詳しく聞かせてください!

中国の大学に進学した高校の後輩がいたんですが、その方から「上海で美容師として働く気はないか?」とオファーいただきました。

驚きましたが、話だけでもと思って聞いてみると、「中国でセミナーやヘアショーをやってほしい」「日本のヘアスタイリストの技術を取り入れたい」というお話だったんです。

せっかくだし、またとない機会だろうと思ったので、思い切ってチャレンジしようと、上海へ渡ることを決めました。

——中国・上海へ拠点を移すことに、不安はありませんでしたか?

もちろん、不安でしたよ。期待よりも不安の方が大きかったくらい。けれど、ダメだったら日本に帰ってくればいいや! くらいにも思っていました。「手に職」の強みかもしれませんね(笑)。

どのくらいいることになるかもわからないから、KINGDOMも退職するつもりだったんです。しかし店長が、籍は置いておいて構わないと言ってくださったので、所属はそのままにさせていただきました。

——上海での日々は、いかがでしたか?

おもしろかったですよ! 紹介先である上海のヘアサロンに所属し、サロンワークをしながらセミナーやヘアショーにも取り組むといった感じでした。

中国は紹介の文化が強くてフットワークも軽く、仕事の動きが早いんです。セミナーやヘアショーもすぐに次が決まり、滞在中は中国の20都市以上で実施させてもらいました。2020年にはコロナの影響で帰国せざるを得なかったので、期間としては1年半ほどですね。

——刺激的な環境ですね! 中国と日本でサロンワークをしていて、実感した違いなどはありますか?

まず、これは国民性にもよるところだと思いますが、中国のお客様の方が何事もはっきりと主張することですね。曖昧な態度をとってしまうと信頼を勝ち得ないので、僕もはっきりとした言動を心がけていました。

髪質も、同じアジア圏でも日本とはまた異なるんです。髪質が原因で、日本でやっていたようなヘアデザインができないこともしばしばでした。また、現地で好まれるデザインのバランスも日本とは違います。日本では丸みのあるデザインが好まれますが、中国ではやや四角めのバランスが支持されていました。

ヘアサロンの使い方にも、日本との違いを感じたかな。日本はスタイルチェンジやヘアのメンテナンスといった感覚で利用されるお客様が多いと思いますが、中国では何かしらの予定の前に利用される方も多くて、再現性プラスアルファで仕上がりをかなり重視される印象でした。

——日本と中国で、こんなにも違いがあるのですね。大変だったことなどはありましたか?

やはり、言葉の壁は感じました。オーダーのすり合わせなど、慣れるまでは本当に大変でしたね。フリー(指名なし)のお客様を担当しようとしたら、自分が中国語に明るくない日本人だと分かった途端、お客様に「担当を変えてくれ」と断られてしまったこともありました。あれは悔しかったなあ…。

また、サロンで使用する薬剤の反応も違いました。実際に使用したら思っていたカラーが出ず、仕上がりを見たお客様が泣いてしまったことも…。薬剤の製造面の違いが原因ですが、サロンワークをする中で経験を積み、調整していきました。結果的に、技術力はグッと上がりましたね。

——学んだこともありましたか?

もちろんありました。例えば、中国の美容師さんによるメンズヘアの刈り上げ技術。カット料金500円ぐらいの安い美容室でもみんな刈り上げが上手なんです。表現の幅が広がるので、この技術は盗んで帰ろうと思いましたね。

あと、これは中国でも日本でも共通して言えることですが、優秀な美容師は総じて気が利く方々ばかりだと実感しました。だから、お客様も安心して髪を任せられるんですよね。


高校時代の青春の思い出から美容師を志し、KINGDOMに入社した後、最速でスタイリストデビューを果たした井上さん。デビューまでに重ねた猛練習のモチベーションは「自ら担当したお客様を美しくしたい」というただ一心でした。その向上心は止まるところを知らず、美容師としてのキャリアを順調に築く中、ひょんなことから舞い込んだ中国・上海での美容師としての挑戦。あらゆることが日本と異なる環境で様々なことを吸収しながら、美容師としてさらに経験を積み重ねていきます。後編では、井上さんのもう1つの仕事、ヘアメイクアップアーティストについてのお話。上海滞在中にトライしたというその経緯や、現在のワークスタイルについて、井上さんの仕事観も交えてお伝えします。

撮影/野口岳彦
取材・文/勝島春奈

1
2


Check it

美容師・井上 匠
Instagram

KINGDOM AOYAMA 表参道・青山本店
住所:東京都港区南青山 5-6-24 バルビゾン23 B1F
TEL:03-6418-6111
WEB予約

ヘアメイクアップアーティスト・井上 匠
Instagram
HP

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄