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人が辞めないサロンをつくる!NORAの取り組みとは?広江一也さんと、その仲間たち #1

1990年代後半の美容師ブーム。その真っただ中に美容師を目指し、当時東京・青山にあった〝日本一のサロン″で働き始めた広江一也さん。1998年にスタイリストとしてデビュー。徐々に頭角を現し、最終的に店長にまで上りつめます。

折しも世の中は、カリスマ美容師ブーム。どの雑誌を開いてもスター美容師によるヘアスタイルが並ぶ日々。ほぼ毎日、休む間もなく働いて、半年先まで予約がいっぱいという今ではまったく考えられない状況の中、せっかく一緒に切磋琢磨してきた“仲間”がどんどん辞めていくのを目の当たりにした広江さんは考えました。

「どうしたら、ずっと一緒にみんなが働けるサロンができるのか」
この究極の理想とも言うべき課題を、独特の視点とユニークな手法で切り抜けてきたNORAの取り組みを紹介します。

売り上げでなく〝和″を大切にした経営

「僕がスタイリストになったのが、ちょうど〝カリスマ美容師ブーム″の絶頂期で、働いている側も世間的にも、自分のサロンは日本一のサロンだと思っていたし、きっとどこかにそうしたおごりがあったと思うんですよね。そんな中、人が辞めていくのが当たり前になっていくことに日々疑問を感じていました。美容業界では売り上げが第一なのはわかるのですが、数字が低いと社歴が長くても発言すら許されないような、それだけで評価される環境が正直、しんどかったです。辞める人イコール悪みたいな目線ってありますよね」

2006年12月、一身上の都合でサロンを退社。「ちょうどその年に母が亡くなり、実家のことを整理するつもりで辞めました。人間って儚いなと。どこかで区切りをつけないと、と思ったんです。32歳になる年でした」

その後、同時期に辞めた仲間5人と2007年4月にNORAをオープンすることに。全員がかつて〝日本一のサロン″でともに働き、日々しのぎを削ってきた実力派ばかり。それぞれが個々に独立開業しても十分にやっていけるメンバーでした。

「みんなで話し合ったんです。もはや一人のオーナーやトップ数人が下の世代を率いていく時代ではないと。ただ売り上げを競うだけのやり方はいつか疲弊するし、第一、その人のいいところを見ていない。例えば材料のことに詳しかったり、後輩の練習の面倒見がよかったり、雑誌の撮影やヘア&メイクなど外の仕事をうまく回せたり。そうした一つひとつの能力も評価するべきだと。それぞれの得意分野が生かせるサロンづくりをしたいと思いました」

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左前段から反時計回りに 株式会社NORA代表取締役・広江一也さん、エグゼクティブ・ディレクター塚本織衣 さん、取締役PR担当 安藤秀一さん、姉妹サロンNORA Journey代表 田中衛さん。(ディレクターのKEIKOさんは取材時不在)

若手にまず、まかせてみる「やり方」

NORA HAIR SALONでは、春夏(S/S)と秋冬(A/W) の年に2回、ホームページ上でトレンドヘア(ヘアコレクション)を発表していますが、基本的にその制作は店長を中心にした若手にゆだねているそうです。「一般的なサロンでは、オーナーをはじめとする幹部が考えたヘアをその季節のトレンドにするのが大半ですが、うちは違います。若手が企画立案からカメラマン手配、サロンのどのスタイリストにヘアを担当させるか、すべて決めるんです。もう2013年から続けていて、僕らはほとんど口を挟まないし、どちらかというと裏方的なサポートをしています」

サロンにとって大事なビジュアルを若手にまかせて大丈夫なんでしょうか? 
「サロンを背負うというプレッシャーで、かえって皆が真剣に取り組みますよね。未熟な部分はもちろんありますから、個々にサポートはしますが、基本は本人たちの自主性にまかせています。いつまでも上から言われたことだけやっていたら、それだけしかできませんからね。僕らカリスマJr.世代と違って、圧倒的に撮影の経験数が少ないですから、とにかく数をこなさなきゃならないわけです」

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卒業のカタチを代表自らがプレゼン

――NORA HAIR SALONから、昨年一人独立された方がいましたが、それは痛手ではなかったのですか?

「もちろん、大切に育てた後輩がサロンを〝卒業″していくのは寂しいですが、逆に代表の僕から相手に提案をするんですよ。

①完全独立 ②NORA100%出資の姉妹サロン化 ③まったく別ブランドをつくる ④49対51の出資率 ⑤51対49の出資率 の5つです。

それぞれ付帯条件が異なりますが、ロイヤリティゼロ、お客様も連れて行ってOKというスタンスです。ただし正々堂々と。裏でコソコソ、不義理なことは絶対にしない、というのがルール。今ってゆるくつながる時代だとつくづく思うんですよね。僕らはシェアと呼んでいますが、うちで育った後輩たちとも、ずっとつながっていたい。

だからこそ代表の僕から相手が選択しやすい条件を提示する。もしすべてNOで完全独立を望んだとしても、それはそれ。結局、(冒頭の)彼は①を選びましたが、今でも仲間ですし、一経営者として認め、ことあるごとに一緒に食事をしたり、交流しています」

何とも理想的な形です。代表自身が柔軟な考え方で、つねに仲間を大切に、みんなで話し合っていろいろな課題に向き合うNORA。

次回は、サロンを越えたユニークな取り組みについて紹介します。

取材・文/山岸敦子
撮影/石田健一

Shop Data

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NORA (ノラ)

代表の広江さんを中心に5人の実力派美容師により2007年オープン。
以来、着実に後進を育成し、今ではNORA HAIR SALONで17人、姉妹店のNORA Journeyで8人のスタイリストが在籍。うち20名が新卒採用というからいかに「人を育てる」サロンかがわかる。店内には新進気鋭の現代アーティストの作品を展示。音響メーカーなど異業種とのコラボでイベントを開催するなど、その動向が注目されている。

NORA HAIR SALON
http://www.nora-style.com/nora/
NORA Journey
http://www.nora-style.com/journey/

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