5年のブランクからの復帰……、そして独立への道へ！『BABEL』
表参道という美容激戦区に2013年にオープンした『BABEL』。美容師歴に5年のブランクを持つという代表・鈴木圭一さんが、どうして仕事を中断したのか。そして復帰後、どのようなキャリアを歩んだのか、お話を聞きました。
事故で美容師の仕事を中断
――お店を持つまでの経歴をお聞かせください。
「20歳に美容学校を卒業し、3年間は下高井戸にあるお店で働いていたのですが、そのあと5年ほど、美容師の仕事はしていませんでした」
――5年のブランクが空いたのは、何か理由があったのですか。
「交通事故に遭い、働くことができなかったのです。障害が残ってしまい、美容の仕事がしたくてもできず。2、3年は杖がないと歩けない状態だったのですが、手術とリハビリを繰り返してようやくある程度日常生活を送れるようになってきたタイミングで知人の先輩からお声がけいただき、業界へ復帰することができました。実は復帰する前に3日間3時間ずつのアルバイトをさせてもらったのですが、バイト後は2時間くらい足をつくことができないほど痛みがあって…本当に悔しかったですね」
――なかなか思うようにいかないこともあったなか、体力が必要な仕事に戻れた理由ってなんでしょうか。
「まずは健常者でなくなった自分へのコンプレックスとプライドの葛藤（笑）。あとはそれによって日常生活や仕事ができなかったフラストレーションが原動力です。初めはネガティブな要素が多かったですが、今は自分が出来たから何かしら悩みを抱えている人たちに見せることができる部分がある。諦めなければみんなもできるんだって伝えていきたいですね」
28歳で美容師に復帰、肉体を張った作戦で顧客獲得
――28歳のときに美容師に復帰されたのですね。
「はい。先輩が誘ってくれて、サロンでスタイリストとして働き始めました。そこでは半年で店長を任せていただくことができました」
――半年で店長とはスピード出世でしたね。何か特別なことはしましたか？
「最初、お店から新規の顧客をいただけなかったので、時間があれば、朝も夜も関係なく、道にでて“髪を切らせてください”と声をかけていました。過去のデータを掘り起こしても10人くらいしか集められなかったので、直接道でハントでもしないと集客ができなかったんです。身体は悪い状態でしたが、そのときはこの肉体を張るしかないと思ってやっていました」
――かなり根性がいる作戦ですね。
「ハントした人から、新たに紹介が生まれることがあります。次の日、次の週の予約を埋めるために必死でした。何か秀でたものがある人なら、こういう作戦をしなくてもよかったと思います。でも私にはやるしかなかった。ちなみに、この方法はいろんな人に教えましたが、誰もやりませんね（笑）」
――このときのお客さまは今も続いているのですか？
「はい。4割ほどの方が、価格が上がっても通い続けてくれています。続いている理由としては、お店からいただいたお客さまではなく、自分で声をかけていたので、お店に来る前にコミュニケーションを取る時間があったのがよかったのかと。最初に接したときの温度や密度が高かったんです。それに予約は自分で管理していたこともあり、髪以外の相談でも連絡をくれる人が増えました」
30歳までに“形”にする。円満退職で独立へ
――お店を開いたのは30歳のときですね。
「28歳で復帰するときに、30歳までに“形”にならないなら、この仕事は続けるべきではないと思っていました」
――その“形”というのが自分のお店なのですね。
「そうです。前の店舗のオーナーには最初から独立するつもりと伝えていたのに、あと半年で30歳なのですが…と話したらビックリされました（笑）。最初は本気だと思ってなかったみたいです。でもその後、お互いに支え合いながら独立への道を考えることができました。最終的には円満に退職することができましたね。今でもいろんな関わりのなかで、お会いすることもあり、本当に学ばせていただいた方のひとりです」
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