千吉良恵子 interview #2:ポジティブな心が、相手の魅力を引き出す
今回は、ヘアメイクアーティストの千吉良恵子さんにインタビュー。『VoCE』や『MAQUIA』など、数多くのビューティー誌の創刊から関わっている日本を代表するヘアメイクアーティストです。
「ヘアメイクは天職です」と語る千吉良さんは、今年でデビューから30周年を迎えます。そこで、これまでの経験を振り返りながら魅力的なヘアメイクを生み出す方法や、仕事に対する思いについて語っていただきました。中編では、ヘアメイク人生の転機となる出来事や、仕事をするうえでのこだわりを伺います。
“千吉良恵子らしいメイク”誕生の裏側
――これまでに、辛かった出来事はありますか?
「体質に合わない化粧品を使ったことが原因で、自分の顔にメイクができなくなったことは辛かったです。ちょうど、ヘアメイクとして働き始めた頃でしたね。当時は24歳で、いろいろなメイクを試したい時期だったので本当に辛かったです。今でも、眉とチークしかメイクができないんです」
――自分自身にメイクができないことで、仕事にどのような影響がありますか?
「意外に思われかもしれませんが、仕事にはメイクができないことで逆にいい影響が出ていることもあります。『千吉良さんがしてくれるメイクは奇抜すぎず、かといってベーシックに寄りすぎてもおらず独特のバランスがある』と言われることもありますね。私の場合は事前に、自分の顔で一度試してからモデルにメイクをすることができないため、頭でシュミレーションをしたものを、モデルにメイクをするんです。そのため、あまり保守的にならず自由な発想でメイクをするスタイルが確立したのだと思います。女性の視点を持ちつつもベーシックになりすぎない“千吉良恵子らしいメイク”が生まれているのだと思いますね」
初めて“本物”に触れた感動。藤原美智子さんとの出会い
――これまでのキャリアのなかで、転機となる出来事はありますか?
「ヘアメイクアーティストの藤原美智子さんとの出会いは、衝撃的でした。ずっと憧れていたので、、初めて藤原さんが働く現場を生で見た時に、泣きそうになるほど感動しました。初めて“本物”に触れたと感じたんです。それまで、自分がヘアメイクアーティストとして活動してきた4年間の経験よりも、藤原さんのメイクを見たほんの数分間のほうが、はるかに価値がありました」
――その他に藤原さんとの思い出があればお聞かせください。
「自分が作った作品を藤原さんに見せた時に、瞬時に的確なアドバイスをくださり、『そんなに、細かなところまで見えているのか』と、あまりの衝撃に何も答えることができませんでしたね。それからは、『藤原さんのようなミクロの目を持つヘア&メイクアーティストになりたい』と心のなかでつぶやきながらメイクをするようになりました」
人を感動させるメイクを作るためには、自分の心を磨かなければいけない
――仕事をする際に心がけていることはありますか?
「ポジティブな気持ちでヘアメイクをすることを心がけています。なぜなら、雑誌や広告など多くのスタッフが関わるチームワークが求められる現場では、1人ひとりの感情ができあがる作品に大きな影響を与えるからです。モデルの顔に直接触れるヘアメイクは、感情が伝わりやすいため、とくに意識する必要があります。実際に、楽しんで仕事をしている時と、悩みを持った状態でヘアメイクをしている時では、できあがる写真が与える印象がまったく違うんです。だからこそ、常に心穏やかでモデルさんや女優さんをメイクしている時間に少しでも癒されるようにと、ヘアメイクをさせていただいています。人を感動させるメイクを作るためには、まず自分の心を磨かなければいけないんです」
「もちろん、仕事でうまくいかないこともあります」と言う千吉良さん。そんな壁にぶつかった時こそ、またひとつ勉強になったと感じるそうです。だからこそ、長年トップで活躍し続けられるのではないでしょうか。後編では、魅力的なメイクを生み出す方法や、今後の目標について伺います。
Profile
千吉良恵子さん
ヘア&メイクアップアーティスト
LA DONNAに20年間所属したのち、2012年11月1日cheek one設立。女性雑誌のビューティー、ファッションページ、広告撮影など幅広く活躍中。また、講演や化粧品関連のアドバイザーも務める。『千吉良恵子の可能力メイク』『千吉良恵子の効くメイク』他、著書多数。
Information
cheek one inc.
住所:東京都目黒区鷹番3-20-5
TEL:03-6451-0428
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