大切なのは「美容業界を変えたい」という大きな志 独立を目指すあなたへ vol.1【THEATER代表 佐々木達也さん】#1

キャリアプランを考えるなかで、ひとつの道となる「独立」にも、いろいろなかたちがあります。独立の経験談を参考にしたら、新しい道が広がるかもしれません。今回ご登場いただくのは、開業から2年半で8店舗を展開し、急成長を続ける「THEATER」の代表・佐々木達也さん。前編でお聞きしたのは独立のきっかけから開業準備について。佐々木さんはこれまでの美容業界の在り方に疑問を持ち、独立を決めたそうです。それではその経験について詳しくお伺いします。

共同代表となる4人の出会い

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株式会社THEATER 代表の佐々木達也さん。THEATERは創業時から4名で共同経営をしている。

——簡単に、経歴を教えてください。

高校を卒業後、1年間フリーターをして、ベルエポック美容専門学校に入りました。卒業後ヘアサロンに入社し、そのお店で8年2ヶ月、その後フリーランス美容師として1年、そして1年の世界一周を経て独立しました。そのサロンで同期だったのが、代表の1人のSHIGERUです。THEATERは、SHIGERU、TAKE、大井、僕の4人で共同代表をしています。

——TAKEさん、大井さんとの出会いは?

SHIGERUが別のサロンに移って、そこでTAKEが働いていました。僕は当時、世界一周に行きたくて、昼は美容師をしながら夜は下北沢のダイニングバーで働いていたんです。大井は、そこの常連でした。SHIGERUとTAKEもよく店にきていて、大井とは共通の趣味の話題などで少しずつ友好を深めていった感じです。

——お店を持つことになった経緯は?

当時、僕とSHIGERUとTAKEで、美容業界の在り方についてよく話していたんです。みんな、以前から美容業界に疑問があったんですよね。若手の美容師の労働環境って、このままでいいのかなってのがあって。最初は「こんなもんだろうな」って自分でも思っていたんですけど、3人で話していくうちに「自分たちから変えられないかな?」って、いつからか具体的に話し合うようになりました。業界をもっとよくしたい。そのために、独立というかたちで会社を作る必要があるね、と。その後、僕が1年間世界一周に行き、帰ってきてから独立の準備を本格的にスタート。そこに大井も加わってくれて、4人で会社をおこすことになりました。

1年間の開業準備は、サロンの土台を作る作業

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独立当時の代表4人。右から、佐々木達也さん、SHIGERUさん、TAKEさん、大井雅貴さん。

——開業準備は、どんなことをしたんですか?

まずは構想を練ること。お店をどんな感じにするかという大きなことから、使う材料、お店に雑誌を置くか、という細かいことまで考えました。そのなかでも、一番最初に決めたのは会社の「理念」。これがないと構想全体がブレてしまうので、会社にとって一番大切なことだと思います。

——とくに大変だったことは何ですか?

人材探しと資金調達ですかね。人材探しは、思っていたよりスムーズにいったんですが、時間はかけました。一番大切にしていたのが、理念に共感してくれるかどうか。知人の紹介や、昔の後輩に声をかけて、「ここを目指しているんだけど、一緒に船に乗れるか」と聞いて、乗りたいですと言ってくれる子を探しました。技術や能力は、あとから育てればいいものですしね。

——資金調達の大変だったこととは?

銀行の融資はなかなか難しかったんですよね。それぞれ毎月の売り上げはあったんですけど、「僕たち毎月このくらい売り上げてました」だけだとちょっと弱くて。融資をいただくために当時は事業計画をひたすら書いていました。それが一番大変でしたね。

サロンの場所は、美容室の激戦区・表参道に

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2016年9月に1店舗目となる「THEATER」を、美容室の激戦区である東京・表参道にオープン。

——出店を表参道に決めた理由は?

TAKEが以前のサロンで、町田と表参道でエリアマネジャーをしていてくれた経験があったので、両エリアの知識もあるしどちらかにしようとなったんです。ですがやはり表参道で働くことにあこがれを持っている人は圧倒的に多いので、これから人を集めることを考えると、表参道かなと。もちろんリスクは高いんですが、できない理由じゃなくて、どうやったらできるかを考えたんです。ひとつひとつ構想を立て直して、できる方法を模索したら、「いけるな」と。

——物件探しは大変ではなかったですか?

もちろん、そんなに簡単には、理想の物件は見つかりませんでした。こだわりもありましたからディーラーさんも厳選しました。独立して1店舗目って、4~5席くらいの小さな店舗で始める人が多いと思うんです。僕らも、創業時はレセプションを入れて9人だったから、そのくらいの規模でもと考えていました。でも、それっていつかは、来たいお客様も新しいスタッフも入れなくなるんですよね。だから、先のことを考えて大きい店舗で絶対始めようと思いました。実際、1店舗目の「THEATER」は16席あります。

——大きなお店を持つのは、勇気がいる決断だと思います。

1店舗で終わるつもりはなかったので、2店舗目に向けての構想もできてましたし、人材の確保も続けていましたから。広くなれば坪単価が下がるメリットもありますよね。理念の話をしましたが、僕らは「貢献」を理念に掲げています。美容業界のために、後輩の美容師たちのために、やれるだけやりたい。そんな大きなことをしようとしている美容室が、創業5席でやろうとはしないはず。それに、美容師にとっていいことをしようとしているから、絶対に人は集まると確信していました。

「貢献」という理念と、変革のための3つのビジョン

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「美容師の労働環境をよくしたい。そのための手段が、独立だったんです」(佐々木さん)。

——「美容師にとっていいこと」とは?

創業時に「貢献」という理念と一緒に掲げた、3つのビジョンがあるんです。1つめが、美容師の年収をアシスタント含め500万円以上にすること。現在、美容師の平均年収は、大体270万円くらい。これを500万円以上に上げたいと思っています。美容師の求人って、給与や休日が「当社規定による」って書いてあることが多く、とても疑問でした。そういうのをなくしていきたいので、労働環境をよくすること、きちんとした待遇で雇用することは決めていました。

——2つめはなんですか?

雇用人数1万人を目指すことです。って言うと、たいてい笑われるんですけど(笑)。美容業界全体に影響を与えられるくらいの雇用を生み出したいと思っているんです。小さなお店で全員年収500万円を超えただけでは美容業界は変わらない。 それだけの美容師さんに働きたいと思われる会社を目指すという自戒でもあります。新しい展開も考えているので、ヘアサロンとしてかはわからないけれど、「THEATER」と聞いたら、「あ、あの会社ね」と言われるところを目指しています。3つめは、従業員の自己実現を叶えられる会社であること。これも、自分たちへの戒めでもあります。会社は僕たちのためにあるのではなく、スタッフがやりたいことを叶えるためにある。そのことをいつも忘れないようにしています。美容業界を変えたいからと思って始めた起業ですが、ふと気づけば僕たちは、この3つめのビジョンが最も強い思いとなっていました。その行動指針として、すべての従業員の物心両面の成長を促す教育機関であろうという共通認識を持っています。

——代表みなさんが、ビジョンを共有しているんですね。

そうですね。みんな、矢印が自分に向いていないんですよね。他者に向かっている。だから、例えば給与でも、自分たちがもらうよりも、スタッフに与えることを優先できる4人なんです。共同経営を反対する人もいましたけど、僕からしたらいいことだらけです。性格も、考え方も、得意なこともバラバラだけど、目指しているものが同じで、他者向けの考え方が合致しているからブレないんですよね。そんな代表陣に常に感謝と、とてつもないリスペクトが根底にありますよ。なかなか巡り会えない関係性だと思っています。

独立&開業準備の大切なこと

「美容業界を変えたい」という大きな志を持ち、同じビジョンを持つ仲間とともに独立・開業した佐々木さん。独立の準備のなかで大切なことを教えていただきました。

1.会社の「理念」、ビジョンを決める

2.資金調達と同じ理念に共感できる人材探し

3.先を見据えた店舗探し

後編では、オープン後から未来の展望についてお伺いします。

取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥

▽後編はこちら▽
独立を目指すあなたへ vol.1【THEATER代表 佐々木達也さん】#2>>

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Salon Data

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LAND住所:東京都豊島区東池袋1-40-10 東池Kビル3F4F
電話:03-5962-0708
http://hairmake-theater.com/saloninfo_land.htm

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