【美容師のパーマ技術】ANTI CHIIさん流 円錐ロッドで作る『ゆる縦ウェーブ』#1
「外国人風」と呼ばれるパーマスタイルが求め続けられ、よりリアルなクセ毛のような質感と動きが目指される昨今。『パーマの魔術師』小松利幸さんの技術を受け継ぐ「ANTI」のCHIIさんは、円錐ロッドとエアウェーブを用いることで、そんなパーマスタイルを実現しました。
前編では、技術力アップのポイントについてお伺いします。
ANTI CHIIさんにインタビュー
体感し受け継いだ技術を、後輩たちに伝えていく
――美容師を目指したきっかけは?
小さいころ、母の行きつけの青山にある美容室へ、車に乗って家族でよく行っていました。そこで、サロンの小さなスタッフルームの中に入れてくれて、一緒に遊んでくれたロングヘアの素敵な女性の美容師さんを見て、「優しいな、かっこいいな」となんとなく思っていたのは、美容師を目指すきっかけだったかなと思います。
実際の進路を決めるときは、美容師、保母さん、カメラマンの3つで悩みました。でも、「これって…小さい子どものカットができて、写真も撮ってあげればいいのかも!!」と思い、一生続けられる美容師になろうと決めました。
その後、日本美容専門学校を卒業して、ANTIに入社、25歳でスタイリストデビューして、36歳で店長になりました。
――アシスタント時代、技術力を磨くためにしていたことは?
サロンワークで先輩の技術を見てぬすむのはもちろんですが、先輩たちに私自身が施術してもらうことで得たものも大きかったと思います。気持ち良くて眠くなってしまうような前髪カットや髪の扱い方を、お客様の気持ちになって感じることから習得することも沢山ありました。
自主練習も、早くデビューしたかったので、朝も夜も積極的にやっていました。でもウィッグの練習だけで上達したんだろうか? と今思うと、スタイリストとしての今の私に繋がっていることは、あの時の「ANTI」を経験したこと自体なのかなと。
私のアシスタント時代は美容ブーム全盛期だったこともあり、サロンワークだけではなく、セミナー、撮影、ヘアショーなど、BOSS小松や先輩の仕事に同行させてもらえるチャンスが本当に沢山あったんです。なので、全てに関われるようにアンテナを張り続けること、アシスタントとして使ってもらえるように、アイディアを聞いてもらえるように、意識していました。多分歴代スタッフで一番ミスもしましたし、指導を受けることも多かったと思います。
何より個性豊かで魅力的な沢山の先輩のアシストをさせて頂けて、その経験から得たものは、今の私にとってとても大きく、一生の宝物です。
――若手時代に技術力を高めるためにしておくべきことは?
お客様の求める形、ヘアスタイルをつくるという「似合わせる技術」にこそ、多方面から「その人」を見極めることが必要になると思います。
なりたい女性像や求めるデザインを、カウンセリング時のファッション、表情、言葉のチョイス、立ち振る舞いなどから、少しでも読み取れるように。そして、いくつかのデザインパターンが想像できるようになること。そのためには、街で出会う沢山の人、電車の中の沢山の人の「似合う」を想像するクセをつけておくのは、すぐできることの一つですね。
あとは、自分の好きなもの、逆に苦手なものを理解して自己分析する事はとても大切です。どんなテイストのサロンで働くべきか見極めるきっかけにもなります。
――後輩への技術指導を行うときに心がけていること、特に力を入れていることなどを教えて下さい。
時代も変化して環境が変わってきている今、私がアシスタントだった時よりも、さらに早いスピードで全ての技術を習得していかなければならなくなっていると感じます。そんな中で、どれだけ意味を理解して技術力、接客力を高められるかがとても重要です。
そのために私ができることは、後輩といっしょに、サロンワークで沢山のお客様一人一人に関わり経験しながら、私の技術や接客のこだわりを伝え続けることだと思っています。
『教えることは自分自身にとっての成長につながること』というBOSSから貰った言葉があるんですが、日々それを実感していますね。習得したもの、気づいたこと、生み出したものを、自分だけのものにするのではなく。
これからの時代において、サロンとしてのブランディングを太い軸として、それぞれのスタッフのパーソナリティが輝き続ける環境を整え続けたいと思っています。そして、アシスタントが、デビューと同時に沢山のお客様に来ていただけるように、早い段階でその子の魅力や、こだわり、好きなテイストなどを、色々な角度から発信していけるようにサポートしています。
再度時代にマッチした、ANTIが作った「円錐ロッド」
――最近のパーマの動向について教えてください。
毛先に厚みを残したカットが主流なので、パーマもリラックス感のある感じが求められていると思います。「パーマをかけました」っていうカールではなく、昔からずっと求められている外国人風ウェーブを、よりリアルに再現する感じ。そのリアル感っていうのが、毛先にむかってウェーブがゆるくなっていく感じなんですけど、そのために使えるのが「円錐ロッド」です。
――「円錐ロッド」は、BOSS小松さんが作り出しものだそうですね。
小松が「円錐ロッド」を作った時は、毛先が軽いカットラインが主流で、しっかりカールが欲しい時代。その毛先のコントロールのために「円錐ロッド」が生まれたそうです。その後、時代的にカットラインが重くなってきたので、円錐ロッドは使われなくなっていたんですが、それが今になって、毛先のカールをゆるくするために円錐ロッドが使われるようになってきました。今の時代の、重すぎず軽すぎずなカットラインに対して、円錐ロッドがマッチしたんですよね。
プラスチックの円錐ロッドもあるんですが、ANTIでは、BOSS小松が作った昔ながらのロッドにウレタンを巻いた円錐ロッドを使用しています。うちでは、「柔らかいものに巻けば、柔らかく仕上がる」っていう考えがあるので、今改めて、ロングロッドにウレタンを巻いて作ったロッドが流行っています。
――今回作っていただいたデザインも、円錐ロッドが使われていますね。
はい。モデルさんが幼顔でかわいらしい印象があるので、パーマをかけることで、ちょっと大人っぽいリラックス感のある印象に仕上げたくて、毛先のチカラが抜けたウェーブをかけるのに円錐ロッドを使用しました。全体的に、毛先がルーズに落ちるようなカールにしています。
CHIIさんが提案する、円錐ロッドで作る『ゆる縦ウェーブ』
円錐ロッドを用い、縦に落ちるウェーブを作ったデザイン。毛先に向かってゆるくかかったウェーブで、額や耳周り、頬などの肌の見え方をコントロールして抜け感を出しています。エアウェーブによる柔らかく手触りのよさそうな質感も、リラックス感あるデザインのポイントに。
CHIIさん流『ゆる縦ウェーブ』のいいところ
1.ヘアアレンジしてもかわいい!
2.下ろしていても重すぎず抜け感が出る
3.のばしかけでも楽しめる
『教えることは自分自身にとっての成長につながること』というBOSSの考えを受け継ぎ、自らの技術力を高め蓄えながら、それを次世代へと伝え続けているCHIIさん。店長として、パーマに定評のある老舗サロンの看板を背負いながら、磨かれたセンスと技術で今にマッチするデザインを提案し続けています。後編では、CHIIさんが提案してくれたパーマスタイルについて、詳しい作り方を教えていただきます。
▽後編はこちら▽
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取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥
ヘア:CHII(ANTI)
メイク:RINA(ANTI)
モデル:浅井芽衣
教えてくれたのはこの人!
ANTI 店長 CHII(ちい)さん
神奈川県横浜出身。日本美容学校卒業後、ANTIに入社。現在は同店の店長を務める。独創的な世界観と卓越された技術で、サロンワークを中心に雑誌、web等の撮影、ヘアショー、セミナーなど幅広く活動中。その人の『らしさ』を感じさせながら新たな魅力を引き出すのを得意とし、多くの共感を得ている。
インスタグラム:chii_anti1213