生涯、美容師でいるために選んだ独立という道 独立を目指すあなたへ vol.9【風と雲の美容室 JUNさん】#1

キャリアアップのひとつとして、独立と開業を目指している人も多いはず。そんな人に向けて、独立・開業したオーナーに体験談をインタビュー。今回ご登場いただくのは、表参道の人気サロンで20年のキャリアを積み、42歳で高円寺にお店をオープンした『風と雲の美容室』代表・JUNさんです。

前編では、表参道のトップサロンから独立を決めた理由と、なぜ高円寺にお店を出すことに決めたのかについて、お話をお伺いします。

生涯、美容師でいるために選んだ独立という道

『風と雲の美容室』代表・JUNさん。表参道にあった有名店に20年勤め独立、高円寺にサロンをオープン。

――JUNさんは、地元の美容室に3年勤められた後、ロンドンへ留学。その後、表参道にあった『PHASE』に20年勤められていたそうですね。20年在籍したのには、なにか理由があったのでしょうか?

師匠(元『PHASE』代表・横手康浩さん)との出会いが大きいですかね。僕、とにかく生意気だったんですよね(笑)。鼻っ柱も強いし、言うこと聞かないから、先輩たちからも煙たがられていました。でも横手は、そんな僕をあきらめずに、引っ張ってくれて。

自分はけっこう古いタイプというか、人情や仁義みたいなことを大切に思っているんです。なので、やっぱり受けた恩を倍にして返したいなという想いで、20年やっていました。『PHASE』というお店に、骨を埋めるつもりで。

――そこから独立を考えたきっかけは?

『PHASE』では毎日のように撮影やセミナー、ヘアショーとか、いろいろやらせてもらっていたんですが、それに体力と精神を奪われちゃって、お客さんに「JUNさん疲れてますね」って言われてしまって。そんな仕事の仕方を10年くらい続けていて、それにすごく葛藤がありました。40歳になったとき、この先自分は、どんな仕事をしていかないといけないのか、美容を通じて何をしていきたいのかを、すごく考えたんですよね。

出た答えのひとつが、月並みですけど、やっぱり一番大切なのは今来てくださっているお客さんで、その方たちといっしょに成長していきたいなという気持ち。もうひとつが、「生きている限りは、美容師をやろう」という気持ちでした。

そうなると、表参道という場所に対して、不安を感じてきちゃったんですよね。

2016年1月、高円寺に『風と雲の美容室』をオープン。

――表参道は、ヘアサロンが多く集まる人気エリアですよね。

そうですね、表参道に20年いたので、お店や美容師たちの移り変わりも見てきました。表参道という場所は、常に人が循環していく場所というか…。地方から志を持った若者たちが押し寄せてきて、ある程度の年齢を超えたら、いつの間にかいなくなってしまう。表参道でいくら名前が売れた人でも、70代・80代になって現場に立っているかっていうと、いないんですよね。当時、師匠が60代前半で、それが最高齢くらい。

人生、いくつで終わるかわからないじゃないですか。70代かもしれないし、90代かもしれない。生涯、美容師をやっていくとして、従業員として表参道で何歳までできるのかなと思ったんです。「生涯美容師」という志を貫くためには、やっぱり自分で身銭を切って、自分がいつまでも居ていい場所を作ることが必要だと思いました。そして、その場所は表参道ではないと思ったんです。

――独立にあたり、高円寺を選んだ理由は?

高円寺には、結婚して子供ができてから、もう10年くらい住んでいるんです。もう地元というか。僕自身、高円寺という町の空気感やカルチャーがすごく好きなんですよね。高円寺って、ちょっと垢抜けないけど、けっこう強い個性を持った人たちが、自分の好きな空間で好きなことをして生きていく…っていうカルチャーが強い土地だと思うんです。そういう土地で、自分の身の丈に合ったお店ができたらいいなと。

店舗探しでは、高円寺周辺エリアということで、吉祥寺~中野あたりで商売になりそうな場所を一通り見たんですけど、最終的には「自分が一番落ち着く場所で」という想いも強かったので、自宅に一番近い物件を借りることにしました。

前サロンとは土地柄も空気感もまったく異なる土地での開業

天井が高く、ゆったりとした空気が流れるサロン。

――表参道から、場所を変えることへの不安はありませんでしたか?

めちゃくちゃありましたよ(笑)。時代ということもありますけど、ありがたいことに前サロンでは若手のころから新規のお客さんを担当させてもらったりして、かなり恵まれていましたし、長く担当させていただいているお客さんもたくさんいました。でも、場所を移すとなったら、いくら長い付き合いのお客さんがたくさんいたとしても、その方たちが一人も来なくなる可能性も当然ありますから。

お客さんとしては、担当スタイリストがサロンを辞めるのって、絶好の美容室を変えるタイミングじゃないですか。それに、表参道のお店だと、美容室に行くだけじゃなくて、表参道の空気感を味わいに行っているという方もすごく多いと思うので。あと、お客さんって、自分についているかと思いきや、お店についているということもあります。美容師として、勘違いしちゃいけないんですよね。

だから、誰一人お客さんが来ないという最悪の状態も想定していました。実際にそうなったとしても、やらなきゃいけない。それでも、高円寺でやりたい、やっていかなきゃいけないっていう気持ちが強かったですね。

そこは不安ではありましたけど、新しい場所でお店を始めることで新たな出会いが生まれること、地域密着型の土地ならではの、お客さんの子どもとか世代を超えてつながっていけることとか、ワクワクのほうが強かったかなと思います。

――実際オープン後は、いかがでしたか?

ありがたいことに、そのまま来てくださる方がたくさんいました。真面目にやってきて、よかったなと思いましたね。誠意を持って真面目に仕事をして、それを長く続けていれば、意外と人ってついてきてくれるんだなって。これからも真面目にやろう、これを続ければいいんだっていうことが、独立してみてわかりました。

「真面目にやっていると、人って簡単に離れていかないんものなんですよね」(JUNさん)。

――独立を決めてから、まず何をしましたか?

まずは、オーナーに自分の気持ちを伝えました。40歳を迎えて自分が今どう考えているのか、いずれ地元に店を持ちたいこと。生涯美容師でいるという志のためにも、そうしたいと話しました。

それは、遠回しに「自分はいつか辞める」ということを伝えているわけなんですけど、いつ辞めるかっていうのは、僕が決めちゃいけないと思ったんです。オーナーには、それまで「この店でずっとやっていく」って言っていたし、お店の中では運命共同体なので。

だから、自分がお店にいる間に、自分に代わってお店を引っ張っていける人間を育成すること、売り上げ面をカバーしてもらえる状態まで育てることっていうのは、きちんとやりますと約束しました。そして、それには、後どれくらい居たらいいですか? と。そうしたら、「3年いてくれ」と言われたんですよね。「もちろんです」と即答しました。「もういいよ明日辞めて」って言われなかったので(笑)、ありがたかったですね。

トップスタイリストが独立するときに必要なこと

表参道の有名店で、看板的な人気スタイリストだったJUNさん。技術面、売り上げ面でも重要なポジションにいる人間が辞めるときには、どんなことを考えなければいけないのでしょうか。JUNさんが考えた条件を教えていただきました。

1.辞める時期は自分で決めない

2.自分に代わる人材を育てる

3.辞めるまではモチベーションを下げずに恩返しをする

後編では、オープンまでの3年間のお話と、現在の心境についてお伺いします。

▽後編はこちら▽
独立を目指すあなたへ vol.9【風と雲の美容室 JUNさん】#2>>

取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥

Store Data

風と雲の美容室

住所:東京都杉並区梅里1-8-15 1F
TEL:03-6796-9696
URL:http://www.kazekumohair.jp/

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