同じ方を向かなくていい。お互いの個性を活かすことが大切。独立を目指すあなたへVol.13【LECO代表 内田聡一郎さん & QUQU代表 浦さやかさん】#1

若手のうちから独立を視野に入れている人が多い美容業界。本企画では、独立するためには何が求められるのか、独立した先輩たちにその体験談を伺います。

今回ご登場いただいたのは、美容業界の先陣を切ってきた内田聡一郎さん、そして独特かつ唯一無二のセンスで多くのファンに愛される浦さやかさんのお二人。内田さんが代表をつとめる「LECO」の2店舗目となる「QUQU」が今年の春にオープン。元otope代表の浦さやかさんをQUQU代表に招き、同い年の実力者二人による新しい挑戦がはじまりました。

前編では、お二人の出会いや、同じブランドで活動するに至った経緯を教えていただきました。

二人の挑戦したいタイミングが合致

――内田さんが、独立して「LECO」を立ち上げたきっかけから教えてください。

内田さん:38歳で独立したのですが、独立を考えはじめたのは35歳くらいのとき。大きな病気をして入院したことが転機になりました。正直、この先プレイヤーとしてやっていくとしても、五体満足で仕事ができるとは限らないんだなと、そのときはじめて気づいたんです。それで、自分が美容師を続けられなくなっても自分のDNAを残せる場所があったらいいなと思い、ブランドをつくって、人を育てようと決めたんです。

当時は30代前半で独立する人が多く、僕のように38歳で独立する人はあまりいませんでした。そのくらいの年齢までいくと組織に残って幹部になるのがほとんどなので、僕が独立するとき、周りにすごくびっくりされたんです。それに誰にも何も言わずに、水面下で進めていたのでなおさら(笑)。もともと人に相談しないタイプなので。

――LECOを立ち上げるとき、まず何から着手されましたか?

内田さん:人材と物件の確保です。僕は走りながらアジャストしていくタイプなので、人と箱さえ決まればやりながらで大丈夫だろうと考えていました。もちろん融資を受けるための経営計画書などは細かく作ったりしました。そのときに自ずと全体をイメージできたような気がします。

――LECOの2店舗目となるQUQUを出した狙いは何ですか?

内田さん:LECOが今年3年目で、単純にスタッフの数が増えてきたので、そろそろ2店舗目を出さなければパンパンになりそうだったからです。そのときに、ちょうど良くLECOの近くに良い物件が見つかったのと、浦とのタイミングが合ったんです。

――浦さんは以前otopeの代表をつとめられていましたよね。otopeを畳んで、QUQUで再挑戦しようと思われたのはなぜですか?

浦さん:これまでもotopeの代表として色々とやらせてもらってきました。今年でちょうど40歳になるのですが、今後の仕事のスタンスなどを改めて考え直さなければと思っていたところでした。自分がどういう形で美容師をやっていくのかを考えたときに、まだまだ長い美容師人生の中でもう少し新しいことをやってみたいなと。

内田とは去年、「テンサイズ」というクリエイティブユニットを組んだことで一緒に仕事をする機会が増えたのですが、お互いのこれからの仕事や美容業界に対する気持ちを共有していたんです。ちょうどLECOの2店舗目を出したいという話が上がっていて、お互いが挑戦したいタイミングが重なったんですよね。内田のことはすごく尊敬していましたし、仕事のスタンスや考え方が私とは真逆で、それが良い刺激になって面白いかもと思ったんです。

内田さん:オープンする半年前くらいからトントントンと決まった感じです。それまでは一緒にやるってことはほぼ考えていませんでしたから。本当に偶然ですね。

――QUQUのコンセプトを教えてください。

内田さん:「キミノメカラウロコ」というのがQUQUのコンセプトワードで、SNSでもそのワードにハッシュタグをつけているんです。浦然り、QUQUのナンバー2の楽人というスタッフもかなり前衛的なスタイルというか、QUQUでしかつくれない世界観を持っているので、「目から鱗な提案をしてくれる特別な場所」にしようと思って。

内田さんは外側、浦さんは内側を強化する立ち位置に

――お二人は「テンサイズ」を組まれるよりもずっと前からのお付き合いだったそうですが、お互いの最初の印象はいかがでしたか?

内田さん:はじめて顔を合わせたのは10~15年くらい前ですかね。当時は美容業界がちょっとずつ変わりはじめていた頃でした。従来は、他サロンやブランドが一緒につるむことが何となくタブーとされていたのですが、それが段々となくなり、同世代や同じ誌面に掲載されているスタイリストたち同士で情報交換をしたり、飲みに行ったりとかが盛んに行われるようになったんです。僕もアラサー会と称した飲み会に誘われて、浦とはそこではじめて話した気がします。

浦さん:内田のことは、雑誌などによく出ていたので存在は知っていました。でも、美容師としてはあまりよく知らず…。ファッション系のイメージが強かったので、自分とは交わらないタイプのようだったし、気が合うとはあまり思っていませんでした(笑)。実際に会って話してみると、イメージよりも真面目な人なんだなという印象を受けました。

内田さん:当時、浦は今とまた違ったテイストというか…アンティーク好きな感じでしたね。髪型も今ほど強烈な個性があったわけではなかったですし、雑誌もコンサバ系ものに載せていたんです。単純に誌面に出ていてすごく当たっている人、上手い人という印象でした。

――性格が真逆とのことですが、一緒に働いてみていかがですか?

内田さん:対局にいるからこそ上手くいった部分もあったんじゃないかな。一緒の方向を向いて同じことをするのではなく、自分の苦手なところ、得意なところを上手くセッションして仕事ができているなと感じています。

浦さん:同じ会社で働いていると、さらに違うところが見えてきますよね。内田は思っていた以上に経営者としてかなりストイックでした。あとは、仕事のスピード感とかキャパの広さとか…私には絶対にない感じですね。だから、それですごく助けられています。

内田さん:僕はすごくせっかちなんですよ。やりたいことがあれば間髪入れずに行動する方ですが、浦はわりとゆったりやりたいタイプ。だから、スピード感が合わなくて喧嘩になることもしばしば(笑)。

――現在、お二人はどのような役割分担になっているのですか?

内田さん:僕は完全にオーナー業というか、ディレクションや外側のアウトラインをプロデュースする立場で、浦は教育や技術指導など、内部を強くする立場。この前も店内で技術講習を開いてくれました。

浦はどちらかというとプレイヤーを楽しんでいたい、何かをつくりたいという人なんです。僕も昔はその側面が強かった方なんですが、今はブランドをディレクションしたりプロデュースしたりすることが好きです。だから、浦がやりたいことを自分がサポートしながらハシゴをかけていければいいなと思っています。

浦さん:otopeにいた頃は、とにかく実験的にやっていたので、一か八かみたいなことが多かったんですが、こっちに移ってからは内田がアウトラインを一緒につくってくれるので大きい失敗はないですね(笑)。心強いし、思い切ってできます。

――内田さんは、独立するにあたり大変だったことはありますか?

内田さん:お店がオープンしてすぐの頃は、まだプレイヤーという感覚でいたので、自分の主観が第一でした。自分のジャッジやスピード感が周りのスタッフとズレていたのでぶつかることが多かったです。それをトップダウンで押さえ込もうとしていたことが結構あって…。でも、それが間違っているとわかり、今はトップダウンではなくなりましたね。

うちも人数が増えて組織になってきましたから、自分が言わなくてもナンバー2の子がピリッとさせてくれています。自分が一番外側を守っていれば、組織として上手くいくのかなと。自分は口を出さない方が円滑に進むということも最近感じています。

コロナ渦の営業自粛はかえってプラスに働いた

――QUQUのオープン早々、緊急事態宣言に伴う営業自粛で大変でしたよね。

浦さん:そうなんです。世の中的に華々しくオープンできず、そおっとオープンするしかなくて(笑)。さらに、オープンして一週間で自粛になったので、オープンしたんだかしていないんだか…という感じでしたね。そこまでいっちゃうと開き直ってプレオープンだったということにしました!

でも、悪いことばかりではなかったんです。20日間くらい営業自粛をしていたのですが、その間に結構頭の中の整理がつきましたし、スタッフ教育についても色々と考えることができました。QUQUはスタイリストが2人、スタイリスト目前のアシスタントが1人、新卒の子が3人というスタッフ構成で、技術的にほどんど何もできない子が半分を占めているんです。そういう若手スタッフたちをじっくり教育する時間ができたので、練習もかなりの量をやりました。そのおかげで今すごく助かっているんです。1年目で入れる仕事が増えて、教育カリキュラムも通常よりもすごく進んでいるんです。

うちの場合はスタッフの人数が少ないので、どんどん現場に入っていかないと成長できません。だから、今となっては逆にあの時期があって本当に良かったなと思っています。普通にバタバタはじまっていたら今の成長はないですし、お客さんも戻ってきてくれているので、結果オーライです!

――営業自粛を受け、スタッフさんの反応はいかがでしたか?

浦さん:新卒の子たちは休みに慣れちゃってるなぁと感じる時期も確かにありました。でも、LECOの先輩スタッフたちがフォローしてくれたり、アシスタント同士で交流があったり…そこにも助けられました。

――LECOとQUQUのスタッフさん同士、結構交流は多いのですか?

浦さん:ありますよ! QUQUでは1年目スタッフのカラー練習をLECOの中堅スタッフが見てくれていますし、LECOでは若手スタイリストのレッスンを私がやっています。サロンワークでも、どちらかの店舗が非常に忙しい日はもう片方のスタッフがヘルプに行ったりとか。私がLECOでカットすることもあれば、内田がQUQUでカットすることもたまにありますよ。LECOのスタッフはスピードが早くて、うちのスタッフも良い刺激になっているみたいです。

二人の強みを生かしたサロンづくりをするために

性格が対局的で、なおかつ、それぞれが誇れるキャリアを持っている二人が一つのブランドを統括することは容易ではないでしょう。今回注目したのは、お二人の「スタッフに対する真摯さ」。お互いの個性を落とし込みながらどのようにスタッフたちをまとめているのか、その秘訣をお聞きしました。

1.お互いの個性を尊重し、自分が得意な領域で教育を担当する

2.店舗間に境界をつくらない

3.上下関係ではなく、仕事相手としてスタッフと接する

後編で、スタッフとの向き合い方についてさらに深堀していきます!

▽後編はこちら▽
個性が2つあるからこそ、スタッフ教育の幅が広がる。独立を目指すあなたへVol.13【LECO代表 内田聡一郎さん & QUQU代表 浦さやかさん】#2>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/岩田慶(fort)

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Salon Data

LECO

住所:東京都渋谷区渋谷1-5-5 デュラス青山B1F
TEL:03-6874-3850
URL:https://leco.tokyo/

QUQU

住所:東京都渋谷区渋谷1-5-10 小笠原ビル1F
TEL:03-6427-9175
URL:https://ququ.tokyo/

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