リピーターのいないブライダル業界は「お客様ファースト」が経営安定の近道【MY DRESSER代表 竹本実加さん】#2
美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方へ成功している先輩オーナーの経験談を全2回でお届けする本企画。
前回に続き、ブライダルヘアメイクとして活動する「MY DRESSER」の竹本実加さんにインタビュー。前編では、竹本さんのこれまでの道のりと、経営が軌道にのったきっかけ、独立前のアドバイスをお聞きしました。
後編となる今回は、開業後の苦労と業績アップの取り組み、スタッフ教育などについてお聞きします。
お話をうかがったのは…
MY DRESSER代表 竹本実加さん
株式会社ドリート・クリエーション代表取締役。ブライダルヘアメイク・講師。広告ヘアメイクからブライダルヘアメイクへ転身。海外花嫁のようなエレガントさ、シンプルなリラックススタイルまで、人と差をつける幅広いテイストを提案。また艶感や立体感のあるスタイリングが得意。花嫁様に寄り添ったサポートで支持を集める。
Instagram:@mika.mydresser
予約キャンセル待ちが続いた2018年、スタッフを雇用し規模を拡大
——開業後、とくに苦労されたことを教えてください。
まずは、お客様に来ていただくサロン探しです。なかなか納得のいく場所が見つからず、スタートするまでに時間がかかりました。希望は、メイク道具とヘアセット道具が広げられて鏡が置ける広さがあり、駅からの動線などお客様が来やすい立地。だけど資金も少なかったので、見つけるのは難しかったですね。
また開業当初は、スケジュールを予約で埋めることばかり考えていました。何をしたらいいかを洗い出して、できることは全部しましたね。SNSで拡散される方法を探したり、お客様に宣伝していただいたり、結婚する友人に前撮りと称して撮影させてもらったり(笑)。
——結果、予約が取れないほどになったんですね。そういった業績アップの工夫でのこだわりはありますか?
常に新規顧客様となるブライダル業界では、いつでもお客様ファーストでいることが一番重要だと思います。そこをブレない軸としてプランニングすることが、業績アップの最短ルートなのかなと。
例えば友人のドレスショップと一緒に定期的に行っている試着体験会は、試着したお客様にクチコミを書いていただけるという大きな広報機会になっています。そしてお客様にとっても、一生に一度のサービスに大金を出す必要性を判断できるという大きなメリットがあるんです。そうやってお客様のメリットになること、喜んでいただける企画を、定期的に考えて発信し続けました。
また、集客のためのブログ運用やSNSの発信などにおいては、「マイルールを決めて必ず実行する」ことを地道に繰り返しました。例えばSNSへの投稿は、視聴率の高い朝8時、昼12時、夜19時の3回アップすると決め、アラームをかけて投稿したり。
——そうして業績がアップし、2018年に「MY DRESSER BRIDAL」というサービス名を掲げてスタッフを抱えるように。
2018年は、今のサロンに移転した年でもあります。一緒にやろうと言ってくれるスタッフが増え、「MY DRESSER BRIDAL」というサービス名をきちんと持って活動し始めたころです。それまでは1人で活動していたので場所も1席分のスペースだったんですが、スタッフが増えたので席が足りなくなったんですね。
そこで広いスペースを用意するとなったとき、改めて会社にして良かったなと思いました。物件を借りるのは、会社や実績がないと難しいですから。フリーランスのままだったら、そこで頓挫して次のステージに進めなかったかもしれません。
でも個人的な苦労として、新たに「人に頼ることができない」という悩みが生まれました。それまでは個人ですべて完結してきたので、スタッフが増えて組織になってからも人に頼ることに抵抗感があり、そのハードルをなかなか越えられませんでした。
「お客様ファースト」のブライダル業界だからこそスタッフ教育は重要
——スタッフさんが増えてから、教育にも取り組まれていますか?
はい。定期的な自己ブランディング講座、スキルアップ講習を開催しています。また接客に関しては、私にアシスタントとしてついてもらい、マンツーマンで一日を通して指導します。ブライダルという特殊な現場なので、本番の流れのなかで何が必要かをひとつひとつ伝えていく必要があるんです。
今後は将来的にチャレンジしたい事をすり合わせできるよう、定期的な個人面談も設けていきたいと考えています。また新卒で入りたいと言ってくださる方もたくさんいるので、そういう未来の子たちのスキルアップのための場をもっと整えていけたらと思っています。
——「ブライダルは特殊な現場」とのことですが、ブライダルに特化したことのメリットはありますか?
「ブライダル専門」にすることで、何よりお客様に安心感を持っていただける。それが一番のメリットです。
ブライダルはお客様にとって一生に一度の絶対に失敗できない現場。だからこそ「本当に慣れている人に担当して欲しい」と、みなさん考えられると思います。一般の方がヘアメイクを依頼すること自体なかなかないことですから不安も大きい。そこで専門性があることは信頼感につながります。
それに加え、「MY DRESSER BRIDAL」は、最初から最後まで同じ担当が二人三脚でコーディネイトを考えることがサービスコンセプト。マンツーマンで晴れの日のトータルコーディネイトをサポートしていくことで、より安心して当日を迎えていただけるのではないかと思っています。
そういったマインド面もスタッフと共有し、誰が担当してもお客様が安心できるようにする。そういった教育というのも、ブライダル業界だからこそ重要で、結果的に業績アップにつながるのだと感じます。
スタッフの活躍の場を拡げる活動もしていきたい
——経営者として大切にしていることは何ですか?
常に新しい発想の目を持つこと、トレンドの先読み、決断力…たくさんありすぎますね(笑)。
ひとつ挙げるとするなら、お客様と同じくらいスタッフにも、社名の由来でもある「おもてなし」の気持ちを持って接すること。まだまだできていないときもあると思うんですが…。私や会社にとって一番の理解者というか、チームであるスタッフに思いやりを持つことを大切にしたいなと思っています。
——今後の目標やビジョンを教えてください。
これまではリピーター様のいないビジネスをメインとしていましたが、次は美を磨きに帰って来られるホームのような幸せ空間を提供したいと思っています。また、同じ想いで歩んでくれるスタイリストの子たちのスキルアップ&バックアップができる機会を、たくさん作っていきたいと考えています。
最初に掲げた理念である「女性が輝ける場作り」に対して、これまでなかなか整備して来られませんでした。そこに新しいサロンの立ち上げを通して着手していけたら、と思っています。実績を重ねて独立したいという子には独立支援をしつつ、ライフステージが変わって働き方を変えたくなったら戻って来られる環境を整える。そんないろんな働き方を考えられたらと思います。
独立を目指すあなたへ
人生は一度きりなので、やりたいことは夢ではなく目標にしたほうがいい。そして自分が「成し遂げる!」と決めたことは、とにかく即行動することです!そういう目標を見つけられるのは本当に素敵で、幸せなことだと思います。人を幸せにすることであれば絶対に成功すると自分を信じて、1歩踏み出してみてほしいです。
取材・文:山本二季
撮影:米玉利朋子(G.P.FLAG)