なぜ白髪染め専門なのか?「hair space G.O.D」鈴木さん流3つの経営指針
オンラインサロンなどでマーケティングやプロモーションの手法を学び、1年半というわずかな期間で売上が急上昇した美容室「hair space G.O.D」。前編では代表者である鈴木日出寿さんに、大きな転機が訪れたきっかけやTikTokの活用術についてお話を語っていただきました。お店の経営方針を大きく変えたことは分かりましたが、成功の秘訣は具体的にはどのようなことだったのでしょう? 後編では、鈴木さんがこの1年半の間に実践した経営術についてをクローズアップしてお届けします。
今回お話を伺ったのは…
鈴木日出寿さん
1978年生まれ、20歳から恵比寿や渋谷といった都内で美容師として活躍。2008年12月、31歳で出身地である千葉県茂原市で美容室「hair space G.O.D(ヘアースペースゴッド)」を開業。同月の24日に結婚した美容師である奥さま秋塲富恵さんと一緒に、二人三脚でお店をもり立ててきた。2021年から「髪を傷ませないオーダーメイドの白髪染め専門店」として人気を集め、次回予約率が1年で19%から80%に増え、年商は約400万円もアップ。現在は予約1ヶ月半待ちの状況が続いている。
東京での挫折を経て地元で独立開業。再び訪れた大きな壁にどう立ち向かう?
――そもそも東京でご活躍されていたそうですが、地元でサロンを開いたのには理由があるのでしょうか?
じつは20代後半でパニック障害という病気を発症してサロンワークができなくなったんです。電車に乗っているだけで過呼吸になったり、仕事中に倒れそうになったり……あの頃はまだ精神面が幼かったのだと思います。やむなく都内で仕事を続けることを諦め、地元である千葉県茂原市に帰ってきました。私の人生のなかでもとくに大きな挫折でしたが、あの辛い時期を経てこそ今の私がいるのですから、振り返ってみると良い経験だったのだと思います。公私ともにパートナーである妻との出会いも、リハビリをかねて働いていた近所の美容室でした。
――その後、独立されてからの経営は順調だったのですよね?
そうですね。大家さんから立ち退きを迫られるまでは順風満帆でした(笑)。それまでカット、パーマ、カラーを行う一般的な美容室でしたので、別の土地に移転した場合、今まで通りにお客さまが通ってくださる保証はありませんから。大きなアピールポイントになるメニューがなければ、このまま美容室を続けることは難しいと考えました。
――そこで、なぜ白髪染め専門店を選ばれたのでしょうか?
これまでの経営状況をデータに置き換えて見直したところ、売上の比率が大きかったのが「白髪染め」と「縮毛矯正」だったからです。どちらか一点に集中して長所を伸ばそうと考え、妻に「専門にするならどっちを選ぶ?」と二者択一をせまりました。
――奥さまを説得するのは大変ではありませんでしたか?
妻自身、ひとりで独立して美容室を開ける十分な実力を持っていますが、「hair space G.O.D」ではスタッフとして、経営方針に関しては私に一任するスタンスをとってくれています。確かに、妻は私に対して厳しい目を持っていますが……公私ともに10年以上もずっと側にいますから。だからこそ、私が間違った道に進みそうになった時には、それを正してくれる大変ありがたい存在でもあるのです。今回の方針転換の場合は「じゃあ白髪染め」と即決でした。
徹底したカウンセリングを行うことで6ヶ月後、1年後の理想の髪を実現!
――オーダーメイドの白髪染め専門店に特化したことが功を奏して売上は急上昇。2021年6月にはカットのみの新規受付を停止されたそうですね。
はい。現在は「新規でカットのみ」というお客さまのご予約は受け付けておりません。顧客ファーストですので、お客さまからのご紹介などであれば歓迎しておりますが、徐々にカットのみのお客さまの割合は減り続け、将来的にはゼロになる見込みです。経営面で重要なのは、こうした失客率と集客率のバランスを見極めることでしょう。
――やはり、売上アップの秘訣はそこにあるのでしょうか?
カットのみの技術売上では、目標である夫婦二人で月間平均300万円を達成することは難しいものです。「グレイカラーエステ」のお客さまが増えたことで、客単価は以前の2倍以上になりました。白髪染めは定期的にリタッチが必要ですので、施術にご満足いただければリピート率も上がります。同時にトリートメントも行い、歯医者さんと同じように治療を続けるイメージです。それを続けた結果、現在の次回予約率は約80%、リピート率は90%以上あります。
――それはすごい。お客さまの満足度を高めるに何か工夫はしているのですか?
パーソナルカウンセリングが重要ですね。「今日はどのような髪にしますか?」ではなく、私は6ヶ月後、1年後の提案をしています。大切なのはお客さまに寄り添うこと。そしてお客さまの髪について、誰よりも深く考えることです。初回のお客さまには30分ほどお時間をいただき「シャンプーをする際に引っかかりはないですか?」「洗い流した時にギシギシ感はないですか?」など髪に関するさまざまなお悩みごと伺います。お客さまの髪質を常に理想的な状態にキープするためにはどうすれば良いのか。私だけの力では長持ちさせることができませんので、お客さまにもご協力をいただけるように後押しするのも美容師の役目です。
知識豊富な経営者に助けられてきたからこそ、次は自分が誰かを助けたい
――それぞれのお客さまとしっかり向き合っているのですね。予約が1ヶ月半先まで埋まっている状況もうなづけました。
ひとまず「hair space G.O.D」は予約で一杯にすることができたので、次は他のサロンの番ですね。私が学び、研究してきたマーケティングや経営のノウハウはまだまだ語り尽くせていません。田舎でお店を経営されている方、夫婦で美容室を経営されている方など、私と似たような境遇の方にはとくにお役に立てると思います。
――鈴木さんの経験が美容業界を盛り上げていくことを願っています。それでは、最後に今後の目標も教えてください。
参加している良質なオンラインサロンを広めていくのが今後の目標です。現在は、次回予約率100%、店販購入率72.8%、店販売上275万円という非常に理想的な経営をされている松島智仁さんのオンラインサロン「物販塾」のサポートメンバーとして、失客させない商品販売の仕組みを学びながら伝えています。私も直接経営を教えていただこうとダイレクトメールを送って知り合いになりました。失客させない商品販売の仕組みが学べますので、ご興味のある方はぜひ検索してみてください。よろしくお願いします!
経営の方針転換を成功させる3つの法則
お話をうかがったなかで鈴木日出寿さんが「hair space G.O.D」の売上を急上昇された方針転換の秘訣は以下の3つにあるようです。
1.アピールポイントをデータで割り出し、厳しい目を持つ相手に相談
2.これまでのお客さまを大切にしながら新メニュー&次回予約で経営を安定化
3.徹底したヒアリングでお客さまに寄り添い、6ヶ月後、1年後の提案を行う
白髪染め専門店だからこそ、色持ちが長く、髪を傷ませないためのオリジナル商品は欠かせないと鈴木さん。美しい髪を持続させたいという想いがあればこそ、市販品とはどう違うのか、しっかりと商品の魅力を伝えればお客さまにもお喜びいただけると熱く語ってくださいました。