介護美容師・福祉美容師として開業するために必要な資格とは? 出張美容・出張理容について知っておきたい注意点
お年寄りなど介護を要する方をお客様とし、施設や自宅に訪問して美容サービスをおこなうのが介護美容師や福祉美容師の仕事です。店舗を必要としないため開業する手段としても注目を集めていますが、そのためにはどのような資格が必要になるのでしょうか。
今回は介護美容師・福祉美容師として開業するために必要な資格について、出張美容・出張利用について知っておきたい注意点に触れながら解説します。開業に役立つ資格についてもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
介護美容師・福祉美容師として開業するために必要な資格とは?
介護美容師・福祉美容師として開業するために必要な資格には、どのようなものがあるのでしょうか。資格内容や取得方法など、詳細を確認していきましょう。
サービス提供に美容師免許は絶対に必要!
介護美容師・福祉美容師として働くために必要な資格は、美容師免許のみです。その名称から介護・福祉系の資格が必要と思われる方も多いようですが、そちらは必須ではありません。
美容師免許を取得するためには、厚生労働省が指定する養成施設に昼間・夜間なら2年以上、通信なら3年以上通うことが必要です。その後、実技と筆記からなる国家試験を突破して、ようやく美容師を名乗ることができます。働きながら美容師資格の取得を目指すならば、夜間コースや通信コースをうまく利用してみるとよいでしょう。
取得すると仕事に役立つ資格はある?
先ほども解説したとおり、介護美容師・福祉美容師として働くために必要な資格は、美容師免許のみです。しかしながら、その仕事には介護や福祉の要素が多く含まれるため、プラスして介護・福祉系の資格をとっておくのもよいでしょう。ここからは、介護美容師・福祉美容師におすすめの、仕事に役に立つ資格を紹介します。
日本訪問福祉理美容協会|訪問福祉理美容師
訪問福祉理美容師は、日本訪問福祉理美容協会が主催する資格です。訪問美容の基礎から必要な道具、介護の知識、お年寄りとのコミュニケーションとの取り方など、幅広い内容を短期間で取得することができます。
取得するためにはどうすればいいの? 試験はある?
訪問福祉理美容師になるためには、所定の養成講座を受講しなければなりません。養成講座の期間は1日実質6時間であり、料金は2万5,000円、対象者は美容師または理容師の国家資格保持者です。試験などはとくになく、講習を終えると認定証が授与されます。
日本訪問理美容推進協会|ヘアメイクセラピスト(訪問福祉理美容師)
ヘアメイクセラピスト(訪問福祉理美容師)は、日本訪問理美容推進協会が主催する資格です。訪問美容や介護の基本を学べるほか、「開業支援」「コンサルティング」「営業促進ツール」など、資格取得後のサポートも充実しています。
取得するためにはどうすればいいの? 試験はある?
ヘアメイクセラピストになるにためには、所定の養成講座を受講しなければなりません。訪問福祉理美容師の資格と同じく、養成講座の期間は1日実質6時間、料金は2万5,000円、対象者は美容師または理容師の国家資格保持者です。
試験はとくにありませんが、事前に郵送されるペーパーテストを講習時に提出する必要があります。
NPO全国介護理美容福祉協会|「福祉理美容師」養成コース
NPO全国介護理美容福祉協会が主催するのが「福祉理美容師」養成コースです。ほかの訪問美容の資格より、取得までの日数がかかります。訪問美容の基本から寝たきりの方へのシャンプー、お年寄り・障がい者の方の疑似体験など、幅広い内容を学ぶことが可能です。
取得するためにはどうすればいいの? 試験はある?
福祉理美容師の資格を取得するためには、所定の養成コースを修了しなければなりません。養成コースの期間は全4日、受講料金は3万8,000円になります。
理容師・美容師免許を持っていない方でも、介護のスキルアップの一環として受講することが可能です。とくに試験などはなく、コース修了後に5,000円を支払えば認定証が授与されます。
介護職員初任者研修|旧ホームヘルパー2級
介護職員初任者研修は、介護系の資格のなかで最も取得しやすい資格です。かつては、ホームヘルパー2級という名前で親しまれてきました。これを取得することで、利用者の身体に触れる「身体介護」がおこなえるようになります。
取得するためにはどうすればいいの? 試験はある?
介護職員初任者研修を修了するためには、130時間の研修を受けることが必要です。実技は必須ではないので、通信コースで取得することもできます。
研修を終えるとテストがあり、100点満点中70点をとらなければ合格できません。しかしながらテストの内容は研修を理解していればさほど難しくなく、万が一落ちても追試制度を利用することができます。
出張美容・出張理容について知っておきたい注意点とは?
出張美容・出張理容については一般の美容室・サロンとは異なるゆえに、注意点はさまざまです。介護美容師・福祉美容師としてスムーズに開業するためにも、出張美容・出張理容独特の情報について、知っておきましょう。ここからは出張美容・出張理容の注意点について、詳しく解説します。
誰にでもOKではない|出張美容や出張理容ができる場合とは?
出張美容や出張理容は、実は誰に対してでもサービスをおこなえるものではありません。美容師法施行令第4条によると、出張美容・出張理容が可能な場面は以下のような場合です。
一 疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者に対して美容をおこなう場合
二 婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に美容をおこなう場合
三 前二号のほか、都道府県が条例で定める場合
三つ目は、「各自治体が条例で定める場合」も出張美容・出張理容の対象になるということです。たとえば自治体によっては、「社会福祉施設などに入所している場合」「理容所・美容所のない地域に居住する者に対して、その居住地で施術をおこなう場合」などを、出張美容・出張理容の対象に定めています。
詳しい内容については、お住いの地域の保健所などに確認してみてください。
「疾病その他の理由により、理容所・美容所に来ることができない」と考えられる方とは?
出張美容・出張理容が許可される「疾病その他の理由」とは、病気にかかった状態や認知症・骨折・障害などにより介護を要する状態をさします。加えて育児や介護をおこなっているために、外出自体が難しい方も対象です。
自治体によっては手続き・届け出が必要! 情報を必ずチェックしよう
自治体によっては、出張美容・出張理容をおこなう理美容師本人から保健所などに手続き・届け出が必要になります。出張美容・出張理容をおこなう際は、必ず情報をチェックしておきましょう。
出張美容でも美容室と同じ衛生措置は必要!
美容室における衛生管理とは施設・設備・器具などの衛生的管理と消毒、そして従業員の健康管理について定めたものです。出張美容・出張理容の場合も通常の美容室と同じく、この衛生措置を守らねばなりません。
携行品にも規定がある!
厚生労働省によると、携行品の規定は以下のとおりです。
1 洗浄や消毒をした後の理容・美容器具と衛生的で安全にこれらを収納できるもの
2 使用後の理容・美容器具を安全に収納できるもの
3 消毒済のタオルや布片類と、衛生的にこれらを収納できるもの
4 外傷を応急処置するときに必要な薬品や衛生材料
5 手を洗うための石ケン、消毒液等
美理容具や衛生用品に加えて、それらを収納できるものについても言及されています。
作業場や携行品の管理の規定
厚生労働省の「出張理容・出張美容に関する衛生管理要領」によると、作業場についての規定は、以下のとおりです。
1 多くの人が利用する施設等で出張理容・出張美容をおこなう場合には、作業及び衛生保持に支障がないよう、専用の作業室など区分された場所でおこなうことが望ましいこと。
2 作業場の腰張りや床は、不浸透性材料の使用が望ましいこと。そうでないときは、不浸透性材料のビニールシートの上で作業をおこなうこと。
3 作業場内は、近くに不必要な物がないところが望ましいこと。
4 作業場内の採光、照明及び換気を十分にすること。
同様に作業場の管理についても、「みだりに動物をいれないこと」「作業が終わったら十分な清掃をおこなうこと」などの規定があります。また携行品についても、「使用済と消毒・洗浄済みのものは分けて収納する」「血液が付着したものはその他のものと区別し適切に処理する」などの規定を守らねばなりません。
介護美容師・福祉美容師は施設や自宅を訪問してサービスを提供するお仕事
介護美容師・福祉美容師として開業するためには、美容師免許が必要です。必須ではないものの、訪問福祉理美容師やヘアメイクセラピスト、介護職員初任者研修などの資格もおおいに役にたつでしょう。
お年寄りなど介護を必要とする方をお客様とし、自宅や施設でサービスを提供する介護美容師・福祉美容師は、これからも需要の高まりが期待されます。美容師として働く選択肢のひとつとして、開業もあわせてぜひ検討してみてください。
出典元:
理容師・美容師制度の概要等について
日本訪問福祉理美容協会 資格認定制度について
日本訪問理美容推進協会
全国介護理美容福祉協会 「福祉理美容師」養成コース
東京都福祉保健局 1 介護員養成研修 開講日程の御案内
三幸福祉カレッジ 受講の流れ
出張理容・出張美容に関する衛星管理要領について
美容師法施行令