瘦身美容家「More beaute」の篠原まゆかさんが教える集客の失敗例と成功例
表参道エリアでプライベートサロン「More beaute(モアボーテ)」を営んでいる篠原まゆかさん。前編で語っていただいたのは、Twitterで痩せるための知識を発信している理由、パーソナルトレーナーのようにカンセリングを大切にしている経営論、コンサルティング業に対する想いなど。業界の常識にしばられず、大好きなエステの仕事をしながら自由に生きている様子が伝わってくる内容でした。後編では、そんな篠原さんが独立した際の失敗談から、経営を軌道に乗せるまでのエピソードに注目します!
今回お話を伺ったのは…
篠原まゆかさん
本気痩せ隠れ家サロン「More beaute(モアボーテ)」のオーナーエステティシャン。一人ひとりの体質、脂肪のつき方、生活スタイルといった状況に合わせてオーダーメイドで施術を提案する。「本当の太る原因」を導き出して持続可能な理想の体を作り出すプロフェッショナル。AEA上級認定エステティシャン、JEO認定エステティシャン、日本テステティック協会認定エステティシャン、AJESTHE認定衛生管理者、AJESTHE認定認定美肌エキスパート、日本痩身美容協会認定痩せる家庭教師インストラクターなど資格も多数。Twitterでは「痩せる家庭教師」としてさまざまな情報を発信中。現在フォロワーは2.9万人。
SNSの集客に頼って大失敗した1年目。地道なリピーター獲得で経営安定化
――独立したのは25歳の頃だったと伺っています。顧客が0の状態だったそうですが、どのようにして集客を行なったのでしょうか?
独立した当初は、予約サイトとSNSが集客の柱でした。表参道ヒルズの近くにあるマンションを借りて、私よりもキャリアの長いエステティシャンとの共同事業ではじめたのですが……月間売上が家賃を下回る月もあり、それまでの蓄えがなければサロンを続けることができない状況が1年ほど続きました。
――やはり顧客がまったくいない状況からのスタートはシビアですね。
まずはフォロワーが10万人以上いるような女性インフルエンサーを、知人から15人くらい紹介してもらい、施術料を無料にすることでレビュー投稿をしてもらいました。
――単純計算で言えば150万人にアプローチできた訳ですね。それは反響が大きかったのではないでしょうか?
結果だけ先にお伝えすると、集客のために運営していたアカウントのフォロワーは1人も増えず、新規予約をいただくことも一切ありませんでした。
――それは何故なのでしょうか?
あらためてご協力いただいたインフルエンサーの方々のフォロワーを調べると、ほとんどが男性だったのです(笑)。当時、私はまったく経営知識がない状態からのスタートだったこともあり、非常に恥ずかしいエピソードなのですが、それではエステサロンのターゲットである女性に届かなくて当然ですよね。
――経営が順調な今でこそ笑い話ですが、当時は打ちひしがれたことでしょう……。
気を取り直し、そこからは予約サイトや知人の紹介でお越しいただいた新規のお客さまを、1人も逃さないように心がけました。その当時のリピート率は90%以上あったと思います。
料金は高く、コース時間は長く。初回からご満足いただけるサービスを提供
――リピート率90%以上とはすごい。どのような取り組みが功を奏したのでしょうか?
集客の段階から「気軽に訪れるお客さまを減らすこと」を意識したのが良かったのだと思います。30〜40代の女性をターゲットに単価を高く設定し、予約サイトでもお試し価格などの割引はせず、初回サービスとしてコースの時間を長く設けました。
初回コースの時間を長く設けたのはカウンセリングのためです。新規のお客さまに60分施術した程度ではエステの効果は伝わりにくく、次回のご来店につなげることは非常に難しいでしょう。重要なのは信頼関係を築くためのカウンセリングです。写真撮影や採寸などを行いながら、お客さまが理想とする体型について一緒に考え、そのために効果的な施術や生活習慣を提案しています。もちろん、その際に勧誘行為などは一切行っていません。お客さまの目的次第ではカウンセリングを早めに切り上げ、施術の時間を伸ばすようにも心がけています。
――価格設定を上げて、カウンセリングをしっかり行えば、リピート率は上がるものなのでしょうか?
ほかにも価格設定に見合った細やかなサービスは必要でしょう。例えば、カウンセリングの際に調べたお客さまのお体の詳細は、その日のうちにメールでお送りしています。そういったアプローチで、お客さまを大切にしている気持ちを表し続けていれば、自然と親密度は深まるものです。
お誕生日の前後にお越しになったお客さまには簡単なプレゼントを用意しますし、日付が変わった瞬間にお祝いのメッセージを送るようにもしています。大手サロンに所属されているエステティシャンの場合はなかなか実践できないサービスですが、もしも個人でサロンを経営されているのであれば試して損はないですよ。
――たしかに年齢を重ねるごとに誕生日を覚えていてくれる相手は減るものですし、実際に祝われると印象に残りますよね。施術に関しては他店との差別化を図っていますか?
アピールポイントはメニュー数が非常に少ないことです。例えば、私が以前所属していた大手サロンの場合は30種類以上メニューがありました。そこで選択した内容に合わせて購入したチケットを消費するという定番のシステムですが、私は今の時代には適していないと感じています。美容室と同じような感覚でエステに通っていただくためにはシンプルな仕組みが必要なんです。
そこで「More beaute」では、カウンセリングを通してお客さまに必要と感じた施術を、コース時間内であれば何でもご提供しています。筋膜剥がし、スロータスマッサージ、カッピング、EMS(電気的筋肉刺激)、ラジオ波(高周波)、キャビテーション、バンテージなど一般的な施術は網羅しているはずです。
経験豊かな大人の女性が「特別なひととき」を過ごすのにふさわしい空間へ
――やはりオーダーメイドというと非日常感がありますよね。そういえばサロンに入ってから、空間だけでなく提供されるお水ひとつ取っても特別感があると思っていました。
そういっていただけたら嬉しいです。もちろん独立1年目から、満足のいくおもてなしができていた訳ではありません。当時のサロンは今よりもずっと簡素な空間でした。30〜40代の大人の女性に「特別なひととき」をご提供するのであれば、空間のアップグレードは必須だと考えていましたが、当時の共同経営者と方針が合わず……新型コロナウイルスの影響が大きくなったことを契機に袂を分かち、現在の場所でひとりで再スタートしたんです。もともとサロンを大きくしようとは考えていませんでしたが、今後は部屋数なども増やし、エステ以外の美容をご提供することも計画しています。
――それでは最後に、篠原さんの今後の目標についても教えてください!
私と同じくらい熱量を持って、お客さまと向き合えるプロフェッショナルを探しています。さっそくひとり目のパートナーが見つかり、まずはネイルサロンを併設する予定です。その後も美容業態の幅を広げて、丁寧なカウンセリングを軸とした総合的なサービスを提供したいと考えています。
――この表参道エリアに訪れるのは美意識が高い方々ばかりですから、特別感のある総合的なサービスは喜ばれそうですね。
はい。ここ最近は個人でサロンを続けることに限界を感じていたので、シフトチェンジする良いタイミングだと思っています。私は10代からエステティシャンを続けるなかで、大好きな仕事に打ち込みすぎて、プライベートを疎かにしていた部分もありまして……。このままひとりでサロン経営を続けるのであれば、結婚や出産などの問題にも直面するはずです。自分自身が理想とする未来予想図を描きながら、よりよい環境を築けるようにチャレンジを続けていきたいと思っています。
エステサロンの経営を軌道に乗せた3つの教訓
今回お伺いした篠原さんの失敗例や成功例を教訓としてまとめています。
1.ターゲット層を正しく理解する。結局は地道な集客が効率的なことも多い
2.しっかりとお客さまと向き合える時間を確保する。信頼関係の構築が大切
3.将来の理想を思い描きながら、自由な発想でアップグレードを続けていく
エステティシャンは「女性として自由に生きていける職業」と語っていた篠原さん。これからも思い描いた理想の未来を目指しながら、多くのお客さまをより美しく導いていくのでしょう。