沖縄県内の貧困解消&美容業界の底上げのために、経営者として美容に取り組みたい【アイラッシュサロン経営者 當山(とうやま)佐菜さん】#2
サロン展開のみならず、商品の開発・販売、エステティック養成校と、沖縄県の美容の活性化を図る、LVS株式会社経営者の當山佐菜さん。高校を中退して経営者を志し、見事美容業界で成功をおさめます。當山さんが、事業を拡張できた秘訣とは? 会社の理念や展望などについて詳しくインタビュー。
前編では、経営者を志す中で「美容」に着目した理由や独立までの経緯、サロンの売上を軌道に乗せた経営術について伺いました。後編では、会社の譲れないモットーやスタッフ育成、今後の目標をお聞きします。
アイラッシュサロン経営者 當山佐菜さん
高校在学中に美容業界経営者になることを決意し、エステサロンに就職。3年働いたのち、独立を果たす。現在は、サロン経営をするほか、商品開発・販売、さらにはエステティック養成校の運営にも着手し、沖縄県での美容意識の底上げをサポートしている。プライベートは一児の母。
商品開発事業をスタート! 「労働型」ではないお金の作り方に成功
――商品の開発経緯をお聞かせください。
当時サロンとは別に、お客様の肌悩みを聞くちょっとしたセミナーのような場を設けていて、「洗顔」の大切さについて何度かお話ししていました。ところが、ある日メンバーの1人から「洗顔が大事なのは分かったけれど、めんどくさい」と言われてしまって。しかも、めんどくさいと思っている人が結構いたんです。
毎日の洗顔をめんどくさいと思っている人たちも簡単にケアができて、「洗顔」の重要さを伝えられるような商品を作って届けようと思ったことが、商品事業に取り組むきっかけになりました。
ちょうど、会社としても私が構想する「労働型」ではない事業の参入を考えていたタイミングでちょうど良かったと感じます。
――どんな準備を始めたのですか?
まず始めたのは工場探し。ツテも何もない状態で、小さいロット数で生産できる条件で探しました。最初は「OME」といった、他社ブランドの商品を作る会社に依頼をしていたのですが、外部の大手メーカーでうちの会社の役員を兼任していただいている方より「これではすぐに真似されてしまうし、資金も残らない可能性がある」とアドバイスをいただいて。アドバイスのもと、知り合いに紹介いただいた工場に変更し、同時に商品もリニューアルすることに。沖縄県で無農薬で育てたアロエベラを収穫し水を一滴も使用しない(日本初水使用しない自己発泡型)特別な一品を開発できました。この商品開発をきっかけに、好調な滑り出しが切れたんです。
会社にファンをつけて、永く愛されるサロン経営を目指す
――商品事業によって軌道に乗り始めたとのことですが、会社のモットーについてお聞かせください。
会社の理念として大事にしているのは「ゆいまーる(絆)」。一時的ではなく未来の綺麗も一緒にかなえていくためにお客様との絆を結び、大事にしていくといった想いを込めています。
また、未来の綺麗を叶えるためには売上をキープさせることも重要と考え、人に依存しない仕組みづくりの構築を目指しています。
――具体的に取り組んでいることは?
サロンにファンをつけることを意識した指導やマニュアル作成を行っています。
例えば女性ですと、結婚によって辞めたり、子どもができて産休に入ったり、あとは独立してしまうなどの理由でサロンを離れてしまう可能性がありますよね。その場合、スタッフを慕ってご利用いただいていたお客様は来店する必要性を無くしてしまうため、売上低下に繋がってしまうんです。いちスタッフを慕って通っていただけるのはとても喜ばしいことですが、そうした女性のライフステージによる環境の変化は、サロンの売上にも影響してしまいます。人に頼らずサロンの魅力を知っていただければ、サロン自体にファンがつき、安定した売上が望めると思っています。
――では、サロンで働くスタッフに求めることは?
まずは、愛嬌があるかどうか、技術力が足りなくても指導で補えますから、もともとの素質を重要視しています。どんなに技術に長けていても、どんなに綺麗でも、内面が会社の理念にそぐわないと感じた方は採用しません。完全に中身重視ですね。
やはり会社ごと愛してもらうためには、愛嬌は必須。外だけではなく家でも同じことができるようにという気持ちを込めて、口酸っぱく「やーなれふかーなれ」(意味:外ではできても家で行っている習慣はいずれ外で出る)と呼びかけています。
沖縄県に貢献したい気持ちから、スクール事業を拡大
――現在、特に力を入れて取り組んでいることはありますか?
会社としてエステティック養成校を抱えながら、国から認定していただいた「国の受託事業職業訓練校」での指導にも力を入れています。
――会社運営のスクールのほかに、「国の受託事業職業訓練校」を設立した理由は?
沖縄県の貧困をなくしたいと思ったことから設立に至りました。
実は沖縄県は、日本の中で最も貧困率が高いと言われていて。早い年齢での結婚や出産の影響により、働き口が見つかりにくいのが現状なんです。そうした状況を打開したいと思い、学校設立に至りました。
――どんなことが学べるのですか?
美容に関連する、エステマッサージやまつげなどの基本的な施術のほか、思考のクセをつけるなど4ヶ月のカリキュラムの中で、内面の教育も行っています。
――思考のクセとは?
個人的に物理的な貧困(お金がない)って、心とか考え方といった内面から影響する現象でもあると思うんです。
ならば、貧困に陥ってしまう考え方、思考のクセを直して軌道修正できたら解決に近づくんじゃないかと。教えるときに指標としているのが、祖母の存在。祖母には幼少期の頃から人とのつながりや人の在り方などについて教えてくれていました。幼いうちではあまり理解できなかったのですが、大人になった今は理解できるようになり、仕事をしていくうえでとても役に立っていますね。
――現在は経営もほとんど手離れしており、広告塔として活動していると伺いました。
そうですね。技術者としてスタッフの育成は、先述した再現性のあるマニュアルをもとに、ほぼほかの幹部の社員にお任せしています。ただ、将来経営をしていきたい、独立を目指しているスタッフには指導やサポートも積極的に行っています。一人ひとりに「どうなりたいのか」「何を目指すのか」ヒアリングをして進む方向に寄り添い、進んでいくことを大事にしていますよ。
私が広告塔に力を入れている理由は、自社スクールや国の受託事業職業訓練校に興味を持ってもらうためです。やはり学校は、「誰に教わりたいのか」が重要だと思っていて。なるべく曝け出し、私の雰囲気や人柄を知っていただくことで、学校へ興味を持っていただけるきっかけになれば良いと思っています。
――美容の魅力は?
目の前で「ありがとう」と言っていただき、喜んでいただけるうえにお金がもらえるなんて、これ以上ない喜びです。たまたま美容業界でいろいろと活動させていただけている状況に感謝し、地元である沖縄県を美容で活性化させ、恩返しをしていけたら良いと思います。
経営者として成功できた3つのポイント
1. 美容施術の本質を見極め、ビジネスに繋げる
2.自分と会社の未来を考えるために目標を明確にし、計画を立てる
3.永く愛されるために、会社にファンを定着させる仕組みづくりをする
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/生駒由美