目指すのは、お客さまと信頼関係で結ばれている美容師【ZACC スタイリスト 定岡広樹さん】#2
新人時代をどう乗り越えてきたのかを伺うこの企画。前編では地元の関西を離れて表参道にあるZACCを選んで就職したこと、アシスタント時代からできる人を見て学んでいることなどをご紹介しました。
後編ではZACCのナンバー2、大野喜郎さんのアシスタントに抜擢されたこと、スタイリストになってから思い描くようになった将来設計についてお話しいただきます。
お話しを伺ったのは…
ZACC スタイリスト
定岡広樹さん
2017年に神戸ベルェベル美容専門学校を卒業後、ZACCに入社。ZACC vieサロンマネージャー、大野喜郎氏のアシスタントを経て‘22年にスタイリストデビューし、現在に至る。
大野氏のアシスタント経験が、向上心に火をつけた!
――アシスタントのとき、嬉しかったことは何ですか?
先輩のお客さまを任せていただけるようになったことですね。お客さまも仕上がりに満足していただけたようで、次回からアシスタント指名をしてくださいました。
――それはすごいことですね。どんないきさつだったんですか?
ZACCのNO.2、大野喜郎はものすごい数のお客さまを抱えていて、多いときで一度に10人はいらっしゃるんです。それでカットとブローは大野が担当して、それ以外のカラーなどはアシスタントという具合に分業しています。どの薬を使うのかも僕たちに任されているんです。お客さまのご希望に沿えるように、責任のある仕事をやらせてもらいました。
今でも大野のお客さまから、カラーは僕という指名が入るんですよ。アシスタントが変わるたびに説明するのが面倒なのかもしれませんが、気に入っていただけたのが嬉しいですね。
――大野さんには専属のアシスタントが付くんですか?
大野には3人の専属アシスタントが付きます。僕はアシスタント2年目の終わりから配属されました。ちょうどコロナが広がり始めた頃で、予約の入っているスタイリストと必要なアシスタントだけ出勤することになったんです。大野の場合、毎日しっかり予約が入っているので、僕の休みは週1~2日だけ。コロナ禍でも「これからどうしよう」って落ち込むこともありませんでした。大野に付いたお陰で充実した毎日を過ごせましたね。
――「大野さんに付きたい」って希望を出したんですか?
希望は出せると思いますが、すべて社内の人事で決まります。
以前、大野のアシスタントをしていた宮川勇人から「大野さんのアシスタントをやらないか?」と聞かれたとき、僕は冗談で「仕事がキツいのでイヤです」って答えていたんです。お客さまの数は多いし、サロンの営業以外でも撮影の仕事もあって、とにかく忙しい。後日、また宮川から「真面目な話、どうなの?」と聞かれて、「やりたい」と答えました。ほかのアシスタントに比べると仕事量が多くて大変でしたけれど、充実した毎日を過ごせました。
――ある意味、期待されているということですよね?
どうでしょう(笑)。大野のアシスタントになったときは、「やりきらないと!」という思いでした。
夢はお客さまと信頼で結ばれている美容師になること
――美容師になって、良かったと思う点は何ですか?
熱い想いを持っている方が多いので、そういった方々と一緒に切磋琢磨して歩んでいけるところです。アシスタントに付いていたこともあって、大野とのつながりで第一線で活躍なさっている方とお話しする機会があります。第一線で働いていらっしゃる方は、やっぱり輝いていますよね。僕も同じように熱い想いを持ち続けていたいです。
――理想の美容師像はありますか?
お金をたくさん稼いだり、使ったり、そんなことはどうでもいい。何歳になってもサロンワークをして、何人ものお客さまを抱えているような美容師がいいですね。そこにはちゃんと信頼関係があることも重要です。
大野のお客さまに、最初はお母さまと一緒に3才の頃から来店して今もずっと通っている方がいます。その方の髪は、大野以外カットした人がいないんです。すごく素敵な関係ですよね。
僕のお客さまにも、入籍する日に写真を撮りたいからパートナーを連れてきてもいいか…と尋ねられたことがありました。人生の節目に立ち合えるのもいい。新しいお客さまを大事にするのは当然ですが、今のお客さまも大切にしていきたいですね。
――将来、ご自身のサロンを持ちたいとか、夢はありますか?
アシスタントをしているときは漠然と、30才まではサロンに勤めて神戸で店を開きたい…と思っていました。でも、大野のもとで働くうち、今、僕が担当しているお客さまを大切にしたい想いが出てきたんです。でも、地元の神戸の人を幸せにしたいという想いもある。それで、例えば表参道をひとつの拠点にして、もうひとつ神戸も拠点にする働き方はできないか思案中です。どちらかを自分で経営して、もう一か所はシェアサロンを利用するのか。お客さまとの関係性が深まるにつれ、いろいろと考えるようになりました。
――やはり神戸には離れがたいところがあるんですね。
神戸にも熱い想いを持っている美容師はいます。でも東京の方が多いんじゃないでしょうか。地元を盛り上げたい気持ちが大きいですね。神戸と表参道は似ていますが、表参道にあるようなサロンがないんです。「神戸といえばここ」と言われるようなサロンをつくるのが夢です。
定岡さん流! 壁を突き破るための3つのポイント
1.できる人をよく見て、技術や動きを取り入れる
2.任された仕事はとことん責任をもって全うする
3.積極的にセミナーや勉強会に参加して自分のスキルや能力を磨く
将来、サロン経営も視野に入れている定岡さん。「今以上にサロンワークを頑張りたいし、人材の育成や経営についてもっと勉強したいと思っています」と積極的。お客さまの人生に寄り添い、共に成長し続ける美容師を目指しているそうです。
撮影/古谷利幸(F-REXon)