美容師でも産休はとれる?産休をとるための方法や産休に入る前に何をしておくべきこと
美容師はいっけん華やかで、性別関係なく目指す方が多い職業です。
しかし、実際には美容師免許の取得が必須だったり、それ以上に自分の腕を磨き知識を身につけ、お客様が満足していただけるようなサービスを行なわなければならなかったりと、意外と大変な職業でもあります。
そんななかで美容師として働いている、目指している女性にとって、疑問のひとつが産休に関することではないでしょうか。
子どもはほしいけれど、下積み時代を耐えてせっかく磨いてきた技術や、お客様から得た信頼を、結婚や育児のために手放してしまうのはもったいない…。
美容業界にとっても、結婚や出産を機に退職する方が増えるのはかなりの痛手です。
そこで、最近では結婚して子どもを産んでも働き続けられるように、産休を始めとしたさまざまな支援や福利厚生があるサロンも増えてきています。
美容師が産休をとるにはどうすればいいの?
「産休」とは、労働基準法で定められた「産前産後休業」のことです。働く女性の全てにこの休みをとる権利が認められています。
産前は出産の6週間前、産後は出産の8週間後の期間中休むことができるのです。
しかし、実際に産休をとっている女性労働者は多くありません。それは、産休制度をよく理解していないことや、働けなくなることで所得が減ると思っている方が多いことが理由でしょう。
ここでは、産休をとるためにはなにをすればよいのか、申請方法などについてお話していきます。
産休は誰でもとることができます
繰り返しになりますが、産休は働くすべての女性に認められている権利です。
たとえ雇い主に「働いてくれ」と頼まれたとしても休みをとることは可能ですし、休んだことによって働くうえで不利益な扱いを受けることも法律で禁止されています。
ですので、女性の皆さんは安心して出産に備えることができるのです。
また、働く女性すべてということはパートやアルバイト、派遣社員でもとることができますし、勤続年数も関係ありません。
産休を取得するための条件
妊娠したことがわかってから、職場へ報告するタイミングは人それぞれですが、もしあなたが出産後も働き続けたいと思っているのなら、早めに相談することをおすすめします。
先ほど産休は産前6週間、産後8週間と述べましたが、どちらも必ず休まなくてはいけないというわけではありません。
産前休業は、本人の申請により出産予定日の6週間前からとることができるようになっています。
一方、産後休業は働きたいかどうかに関わらず、出産の翌日から8週間取らなければならないことになっています。
ただし例外として、産後6週間を過ぎて本人の希望と医師の許可があれば、仕事に復帰することができます。
産休の申請方法
産前休業は労働者の申請により取得できるものなので、とらないという選択肢もあります。しかし、出産の日が近づくにつれ、体調もかわってきますので、無理をしない程度に自分と相談するようにしましょう。
申請用紙はほとんどの場合は会社で用意されていますが、もし無い場合は、「産休 テンプレート」で検索すると無料のテンプレートもありますのでそちらを利用するといいでしょう。
産休中は社会保険や厚生年金の保険料が免除となりますが、こちらの手続きは会社が行なうことになっているので心配はいりません。
産休中に給与が貰えるかはお店によって変わります
産休期間は産前産後含めて14週間ありますので、その間給与がないのは、生活するうえでのやりくりが大変になってしまいます。
会社側にとっては産休中に給与を払う義務がありません。
なかには給与を支給する会社もありますが、それには条件や手続きが必要です。また、給与ではなく手当がもらえることもあります。
次では、産休中にもらうことができる手当についてみていきましょう。
産休中のもらうことができる手当とは
先ほど産休中は給与が払われないと書きましたが、そうなっては安心して出産をむかえることはできませんよね。
しかし、条件によっては申請することで手当を受けとることもできます。実際にもらえる手当はどれか、どのくらいもらえるのかなどについてみていきましょう。
休業中にもらえる手当
産休中にもらえる手当には「出産手当金」「出産育児一時金」のふたつがあります。あなたが入っている保険によってもらえる手当が変わってきます。
社会保険に加入している場合には両方とももらえますし、産休中の社会保険と厚生年金の保険料が免除されます。
一方、国民健康保険加入の場合には「出産手当金」のみとなります。
出産手当金
出産手当金は社会保険被保険者の生活保障として、健康保険から支給される手当です。産休中、給与の支払いを受けなかった場合に支給されます。
出産日(実際の出産が予定日後の場合は出産予定日)以前の42日から、出産の翌日以後56日目までのあいだで、仕事を休んだ日数が対象です。出産が遅れた場合は、その遅れた期間も対象になります。
出産手当金の金額は「月額給与の標準報酬額を平均した額÷30×3分の2」で出すことができます。
また、加入してから12カ月たっていない場合の支給額は、次のいずれか低いほうの額が支払われるでしょう。
①直近の継続した各月の標準報酬額の平均額
②当該年度の前年度9月30日における、全保険者の同月の標準報酬月額を平均した額
出産育児一時金
出産育児一時金は、健康保険法などを根拠に、日本の公的医療保険の被保険者が出産したときに支給される手当です。
あなたが社会保険に入っていなくても、分娩費用の補助としてもらうことができます。出産育児一時金の支給額は、1児につき42万円になります。
また、本人に代わって医療機関が健康保険組合に出産費用を直接請求する「直接支払制度」もあります。
制度は、出産後請求してから出産育児一時金が支払われるまで、3〜4カ月かかります。
通常であれば全額立て替えることになりますが、この制度を利用すれば、42万円をこえた額だけの支払いで済むのです。
美容師が産休に入る前には何をしておいた方がいい?
産休をとるための手続きや産休中の手当については理解いただけたかと思います。しかし、それ以外の場面でも準備が必要になってきます。
美容師の場合、お客様のなかにはあなたを指名したいという方もいるでしょう。その場合、突然産休に入ってしまうとお客様は驚かれますし、失礼になりかねません。
お客様へのお知らせはもちろんのこと、留守のあいだに訪れるお客様をお願いするスタッフへの引継ぎもかかせません。
安心して産休に入るにも、職場に復帰する際にスムーズに仕事をするためにも、しっかり準備はしておきたいですね。
担当しているお客さんへの通知
お客様へのお知らせは、休みに入る前の1カ月~1カ月半前までにしておくのが理想でしょう。
メールや電話を使ってもいいし、直接伝えるのもいいでしょう。そうすることでお客様も予定を立てやすくなります。
次では産休のあいさつをする際におさえておきたいポイントを3つ確認していきましょう。
①産休に入る日付とご迷惑をおかけすることへのお詫び
お知らせには、いつから産休に入るのか正確な日付を入れるようにしましょう。
お客様には長期の休みを取り、その間は施術ができないことのお詫びの気持ちを伝えるとよいです。
②休みの間は別のスタッフが責任を持って対応することのご案内
今まで信頼して施術をお任せしていたスタッフが休みになれば、不安に思っている客様も多いはずです。
引継ぎをして、責任を持って別のスタッフが対応することを伝えましょう。固定のスタッフに引き継げるのであれば、名前を明記することでお客様も安心できるはず。
③復帰予定時期
復帰予定時期は記載するようにしましょう。
お客様に具体的な時期をお伝えすることで、「その日まで待っていよう」と思って頂けるからです。
別のスタッフへの引継ぎ
お客様それぞれの髪質や施術履歴はカルテなどに記載されていると思いますが、日ごろの会話のなかでつかんだ情報もこの機会に整理しておくとよいでしょう。
たとえばお客様の好きなものや家族構成など、会話が弾んで楽しんでいただけるような情報があれば追加で引き継げると理想的です。
お店で働く時には働くための環境ができているかを確認してください
女性が出産・子育てをしながら働き続けることは、美容師に限らずまだまだ苦労が多い現状です。しかしスタイリストの約8割が、ママさんとして活躍している美容室も多くあります。
日曜祝日休み、17時閉店など独自のシステムで美容師を支援している会社や、柔軟な働き方を提案する会社も増えてきているのです。
制度が充実しているのはもちろんですが、同僚に同じ立場の人がいて理解も得られやすく、相談しながら助け合って仕事ができる職場は、安心できますし働きやすいといえるでしょう。
そこまでの環境を整えているお店は少ないかもしれませんが、産休中の手当の面からも、少なくとも社会保険完備かどうかは重要です。
また、以前に産休取得の実績があるかどうか、同僚に同じ経験をしたかがいるかどうかも確認してみるとよいでしょう。
手に職があるという強み、お客様に喜んでもらえるというやりがいを考えると、結婚・出産をしても美容師として働き続けるという女性がますます増えてほしいものです。
出典元:
日本年金機構
協会けんぽ
全国健康保険協会
厚生労働省