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丸山裕太 interview:途上国の貧困問題を美容でデザインし、解決する、自立支援旅する働く美容師

「世界的なレベルで美容の価値を高めたい」。丸山さんがそう感じた原点は、世界一周の途中、中東で髪の手入れをしていない人や、ガラスの破片で髪を削ぐ少年を見た時でした。以来、美容の価値を上げるとともに、美容によって社会的な問題を解決するため、『世界一周の旅人美容師』として国内外を一年中跳び回った結果、世界の途上国に美容専門学校を建てたいという思いと、から「世界の子供たちを対象とした美容を利用した社会貢献活動で、見事『青年版国民栄誉賞、人間力大賞』を受賞しました。サロンのオーナーであり、国際ボランティア団体の会長であり、そして一美容師である。多様な顔を持つ丸山さんのお話を聞いてください。

きれいなもの、きれいな人を見るため海外へ

丸山祐太さん

「美容専門学校を卒業してすぐ、アメリカに行きました。どうしても日本社会になじめない自分がいて、アメリカはもっと自由だろうという想いからです。実際に、違いましたね。みんな自分の意見をちゃんと言うし、議論もします。こういう世界もありなんだと、カルチャーショックでした。1ヵ月ぐらいで戻る予定だったんですが、すっかりアメリカが好きになって結局、半年滞在しました。

帰るきっかけになったのは、働かせてもらっていたサロンのボスが、『日本に帰れ』と言ったからです。その時はクビになったのかと思いましたが、今だとその意味が分かります。『ベーシックなカット技術を学ぶなら、アメリカではない』と言ってくれたのだと。それを機に帰国して白金のサロンで2年半働いたあと、世界を回ろうと決めました。理由はとてもシンプルです。サロンでお客様に『すごいきれいになりましたね』と言うのが、何か違和感がありました。『きれいにするって何なんだろう。きれいなものをもっと見てみたい』と。

そんな時に、ある人に『きれいなもの、きれいな人は世界にはたくさんいる』と言われて、『じゃあ行ってきます』と(笑)。香港からスタートし、次の国に移動する費用はその国で稼ぐというルールのもとに、カットやパーマ、カラーリングをしながら60ヵ国ぐらいを1年半弱かけて回りました」

お客様のエゴを叶えるサロン「EGO」

「世界を回り、アメリカでグリーンカード(永住権)申請の準備に入っていた時に、父が体調を崩しました。23歳ぐらいのころです。同時期に友人を病気で亡くし、もしかしたらもう帰国のタイミングなんじゃないかと思いました。でもまだどこかで『一発当てたい』という気持ちがあって躊躇していたところ、『独立しないか』という話が来たんです。同業者である父からでした。

もともと僕は、父の後を継ぐつもりはありませんでした。他人が作り上げてきたものを横から取るようなイメージがしたんですね。でも、白金のサロンの同僚で、特に仲良くしていた美容師の笠井智博さんに声をかけたところ、『一緒にやりましょう』と言ってくれて。その言葉で帰国を決めました。いまでは彼とは、もう12年の付き合いになります。

父が経営していた理容室をいったん閉じて、美容室に形を変える。後を継ぐのではなく、自分で一から始める。サロン名も変える。それが、僕が決めた条件でした。新しいサロン名は『EGO』。お客様が言いたいことを言えるアメリカの環境がすごくいいなと思っていて、お客様のわがままを叶えられるサロンという意味を込めました。これは今も変わらないコンセプトです」

美容ボランティアのNPO団体を設立

丸山祐太さん

チラシ

「サロンをオープンして翌年から、スタッフ全員でカンボジアの小学校や孤児院を訪問して、ボランティアカットをするようになりました。これは、僕が世界中をカットして回ったことがベースにあります。だからスタッフの入店の原則は、『カンボジアに行くこと』です(笑)。現地にはヘアスタイルのサンプルをいくつか持って行って、子供たちに選んでもらってカットします。人気なのはやっぱりソフトモヒカンなど、サッカー選手のヘアスタイルですね。

そうしているうちに、一緒にボランティアに行きたいという仲間が、サロンの外からも増えてきました。さらにはNPOをつくろうという声が上がり、みんなに背中を押されるようにして昨年7月、『NPO法人国際美容ボランティア協会』を設立しました。美容師だけでなく、エステやネイル、お掃除屋さんやトイレの研究家もメンバーとして所属しています。衛生面での美を手助けするという考え方ですね。現地では、トイレで用をたす時の立ち位置のシールを貼るなど、それぞれが自分にできることをするんです。

次に予定しているのは、美容学校の学生を対象にしたカンボジアツアー。美容学校の研修先といえば、ほとんどがパリかニューヨークです。でも『顔』の要素として考えれば、ニューヨークやパリに引けをとらないものがカンボジアにもあると僕は思っています」

年間の3分の2は海外を飛び回る日々

「いまは、1年間のうち3分の2ぐらいは海外にいます。たいていシンガポールから始まって、韓国、カンボジア、もう一度シンガポール、マレーシア、ミャンマーと回って日本に戻ってきます。だから家はないも同然です。

僕が個人でボランティアカットに行く時は、その時によってバラつきはありますが、2日間で60~100人ぐらいのヘアカットをします。楽しいですよ。カットが終わってから、その子が『美容師になりたい』と言ってくれると本当に単純にうれしいです。興味なさそうにながめていたのに、髪の毛を切ってあげることで美容に興味を持ってくれる。実際に、2年前にカンボジアで知り合った女性に頼まれて、カンボジアに行くたびにヘアカットを教えたところ、いま美容師としてショーに参加するようになりました。そういうギャップや成長を見るたびに、この活動を続けていこうと思います。

僕がこんな状態なので、ふだんのサロン運営は笠井店長をはじめ、スタッフのみんなに任せています。日本にいる時は、以前からのお客様や、特にご要望をいただいたりした場合は僕もサロンに入ります。ボランティア活動も大切ですが、今までのお客様に対しても全力で対応しています。数少ないお客様ですけどね(笑)」

日本と海外をつなぎ、人が流れるプラットフォームを

丸山祐太さん

「将来的には、『人の流れをつくれる会社づくり』をしたいと考えています。具体的に言うと、ニューヨーク、シンガポール、カンボジアなど海外、都内、そして地方。その3点をつなぎます。

『あのサロンはいいんだけど、海外に行く時には辞めないといけない』『海外で働いていたけれど、日本では働く場所がない。特に地方にはない』などの声をたくさん耳にします。でもそれは、工夫次第でうまくいく気がしています。国際美容ボランティア協会のメンバーのサロンが連携して、各サロンに所属しているスタッフが国内外をぐるぐる回る。そういういままでなかったプラットフォームづくりを目指しています。

実際に、カンボジアとシンガポールで計画が進行しています。シンガポールでは学校の設立を計画中。カンボジアは実際にこの9月、サロン併設の学校ができあがります。そこで現地の人達に勉強しながら働いてもらい、実践で技術を身に付けてもらいます。先ほど話したカンボジア人の美容師がオーナーになり、うちのサロンからスタッフが1人現地に行って教える予定です。

もう一つ。多くのアジア諸国には、美容師免許がありません。だからもし僕達が美容の国家資格をつくることができれば、そこでの『美容』の価値は上がると思っています。以前、中東を旅している時に、道端で手入れしていない長髪のおじいさんがいたり、少年がハサミの代わりにガラスの破片のようなもので髪を削いでいる姿を見たことがあります。衝撃でした。髪を切るっていうのはそうじゃないんだって。だから、世界的なレベルで美容の価値を高めたい。そういう思いが僕にはずっとあって、学校の設立はその延長線上に位置しています」

美容師という仕事を辞めることはない

「家族によく言われますけど、僕の人生は挫折ばかりですよ(笑)。小学校を出てからほとんど学校に行っていませんし、フリーターもニートもやった。輝かしい経歴ではないです。でも振り返ってみると、周囲に流されているようでありながら、自分のやりたいことをしてきていると感じています。

理容師としての父の仕事を見てきて、かなり厳しいというのはわかっていました。美容の世界に入るということは大変なことだと。だから逆に踏み出せずにいて、なると決めるには相当な覚悟が必要でした。

でも美容師になってからは、辞めたいと思ったことは一切無いです。そこがなくなったら、僕は生きていけない。ただ、もし美容師になっていなかったら、この仕事はやってみたいなと思うことはあります。例えば商社マンとか。僕にやれるものではないですけど(笑)。もちろん思うだけ。僕は美容師を続けていきます。これは間違いないです」

Profile

丸山祐太さんと笠井智博さん

丸山 裕太(まるやま ゆうた)さん

Hair Lounge EGO代表
国際美容ボランティア協会代表理事

出身地:東京
血液型:A型
趣味:旅
座右の銘:「The only constant is change.(変化し続けること)」

美容専門学校を卒業後、渡米。半年後に帰国して白金のサロンへ。そこで美容師の笠井智博さんと出会う。2年半勤めた後、海外に飛び出し、1年半ほどかけて世界各国をカットしながら回った。帰国後、「Hair Lounge EGO」を開業。店長の笠井さんに運営を任せ、自身は現在も海外を飛び回り、主にアジア各地でボランティアカットやカットの指導をするなど、「美容の楽しさ」を伝えている。
写真はビジネスパートナーであり、無二の親友でもある笠井智博さん(右)。

Company

Hair Lounge EGO

Hair Lounge EGO

美容師個人の長年の経験に加え、当サロン独自の海外ボランティアカットツアーなどをとおして培った経験と技術により、お客様の“わがまま”をできるだけ思い通りに実現します。エキゾチックな内装が、女性・男性問わずに気軽にお入りいただけるサロンの雰囲気を作り出しています。美容室に入りにくいという方もお気に入りいただけるはずです。

神奈川県川崎市中原区新城1-16-12 クリヤマビル1F
TEL:044-755-9246
http://www.ego-hair.com/

Information

NPO法人国際美容ボランティア協会

NPO法人国際美容ボランティア協会

世界中に存在する「貧困」という社会問題を、美容というツールで解決することを目指しています。貧困にあえぐ人たちに社会へと目を向けさせ、自立して働けるようになるまで支援し、同時に美容における雇用創出も当団体の役割です。同時に、日本における美容師の減少に歯止めをかけるために、美容ボランティアツアーを開催して、「喜ばれる、喜び」を感じてもらいモチベーションアップを図っています。
http://ibva-world.org/

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