スタッフが主体的に成長できるサロン「EXCIA」代表・中川俊樹さん
23歳の若さで独立し、1年で顧客ゼロから月の店舗売上を500万円にまで成長させた、美容師の中川俊樹さん。前編ではなぜそのようなことが実現できたのかを伺いました。ポイントとなっていたのは、構築から運用まですべて自分で行うというホームページ集客。メニューごとに4つのホームページを作ることで、確実で再現性の高い集客力を身につけることができたといいます。またそこに行き着くまでにはひたすらに検証を繰り返す、中川さんの努力がありました。
後編では、中川さんのマネジメント術について伺います。アシスタント時代の苦労をだれにも味わってほしくないと、雇われていても、若くても、家族がいても収入をあげられる仕組みを考えたという中川さん。スタッフが成長し、売上をあげれば給料に反映されるような仕組みにしたことが、スタッフの主体性にもつながっているといいます。
今回、お話を伺ったのは…
中川俊樹さん
美容師/「EXCIA」代表
20歳でジュニアスタイリストとなり、23歳の若さで独立。アシスタント時代、18歳の若さで、結婚、第一子が生まれたことから、美容師として高水準な給料をあげるために必要なことを模索し始める。独立後は1人でできて再現性の高いホームページ集客に注目し、顧客ゼロから月売上500万円のサロンへと成長させることに成功。その後脱毛サロンを開業させ、2022年10月には2店舗目のオープンも控える、業界注目の若き経営者。
成長とがんばりに見合った給料をスタッフに払うため、集客に力を入れる
――マネジメントや人材育成でとくに心がけていることはありますか。
スタッフが主体性を持って成長し、成長に見合った給料を提供できる仕組みを一番に考えています。会社に所属していても、若くても、家庭があっても自分のがんばりに見合った給料がもらえるというのが、うちのサロンの最大の強みです。僕自身がアシスタント時代に苦しい生活を送っていたため、独立後は自分だけでなくスタッフも輝けるような場を作りたいと思っていました。
主体性にこだわっているのは、強要されることにはあまり意味がないと思っているからです。うちのサロンでは売上の目標を立てることはありません。サロンの経営を成り立たせるため、スタッフに「これくらいの売上をあげてほしい」と伝えても、それは結局他人ごとになってしまいます。自分でもらいたい給料から逆算すれば、自分ごとになり自ずと努力するようになると思うんです。うちのサロンは集客がうまくいっているので、100万円くらいの売上はかならずあげられますが、70万円しかやりたくないというのであればそれで構わないと思っています。目標を宣言してもらったり、どれくらい達成できているかを明確にしても数字があがるわけではなく、集客ができていれば自然と売上はあがっていくというのが僕の信念です。
――数字に対してのマネジメントは行わないんですね。
スタッフがこれくらいの給料をあげたいと思ったときに初めて、「じゃあいつぐらいまでにこのくらいの売上がいる、だとしたら足りていないのはここ」という指摘をすることはあります。そしてそのとき僕がやることは、スタッフに数字のプレッシャーをかけることではなく、お客さまを連れてくることです。今の倍の売上を出したいというスタッフがいたとしたら、その倍のお客さまを僕が連れてくる。そうすれば必然的に、スタッフの求める給料に届くことができると思います。
提供する技術を限定し、スタッフの成長スピードもあげる
――とはいえ、中川さんが集客をするだけでなく、スタッフも成長しなければ高い売上水準は維持できないと思うのですが、何か心がけていることはありますか?
うちではメンズの縮毛矯正など究極に特化させた4つほどの技術を打ち出しているので、そのメニューをしっかり習得できれば、問題ないという考え方です。ほとんどすべてのメニューをマスターして、トレンドもチェックして、練習もして、集客もしてと、僕は美容師に求められているものが多すぎると思っているんです。求められているものだけを磨いていけば、それぞれの技術水準は早くあがりますし、アシスタントのスタイリストデビューも早くなります。
――スタッフの方とのコミュニケーションはどのようにしてとっていますか?
朝礼終礼は一切行っていませんし、連絡事項はLINEで送っています。現状では僕が集客のコンサルティングや、東京進出の第一歩として表参道に場所を借りてサロンワークをしていることもあり、お店にいないことも多いんです。なので対面のコミュニケーションを密にとるより、僕が店にいないときにもお店がきちんと回る仕組みを考えていますね。
オーナーに必要なのは適切な距離感を保ち、困ったときに助ける信頼感
――スタッフに接するときに気をつけていることはありますか?
スタッフとは適度な距離感を保つようにしています。あまり仲良くなりすぎてもなあなあになってしまいますし、遠すぎてもよくないですし。いつもスタッフには「何か困ったことがあったら声をかけてね」と伝えるようにしていて。もちろんこちらも気にしてみるようにはしていますが、たとえば元気がないときに飲みに誘ったり、何が起きたかを探ったりはしないです。そこはスタッフのプライベートの領域だと思うので。大切なのは、スタッフが困っているときにSOSをちゃんと出せる信頼関係だと思っています。
スタッフのことを注意したりすることもあまりないです。だめなことはだめといいますが、その人それぞれのよさがあるので、わざわざつぶす必要がないと思っています。
――最後に今後の目標を教えてください。
うちのサロンは給料の水準も美容業界のなかでもいい方だと思いますので、出店を待ってくれている美容師の方も多いんです。そこで全国に30店舗くらいは展開していきたいと思っています。美容師の可能性を十分に感じられる、サロンを作っていくことができたらうれしいです。またその結果、うちのサロンを喜んでくださるお客さまも増えていくのではないかと思っています。
スタッフが輝けるマネジメントの3つのポイント
1.売上目標の強制はせず、主体的に成長できる環境を整える
2.集客をしっかり行い、スタッフががんばった分を給料に反映できる仕組みを作る
3.スタッフとは適度な距離を保ち、困ったときに声をあげられる信頼関係を築く
24歳という若さながら、しっかりと自分のビジョンを持ち、だれよりも行動することで成果をおさめている中川さん。取材中も丁寧に、誠実に話している姿が印象的でした。今後ますます中川さんの活躍から目が離せません。