16年前、まだ未開拓だった眉に特化したサロンをオープン。事業の種はお客さまの声にあり!【mime オーナー 川島典子さん#1】

「ゆくゆくは独立したい!」と考えている人に、さまざまな独立の形をご紹介するこの企画。今回お話しを伺ったのは、まだパーツケアという言葉が一般的ではなかった2006年、サラリーマンから転身して眉とまつ毛ケア専門のサロン『mime』を開業した川島典子さん。

美容従事者ではなかったからこそ生まれた自由な発想と、サラリーマン時代に磨かれた「とことんやり抜く」責任感で、開業から16年を経た今でも人気サロンであり続けています。

前編では、化粧品会社の広報担当からパーツケアのサロン経営に転じたいきさつや、まだ普及していなかった眉に特化したサロンを始めたきっかけ、男性の眉ケアを当初から取り入れた理由などについて伺います。

お話しを伺ったのは…
mime オーナー
川島典子さん

4年制の音楽大学を卒業後、老舗専門店の外商部に配属され6年ほど勤務。結婚を機に退職し、PR代理店に転職。その後、化粧品会社の広報担当となる。2006年に退職し、女性2人で株式会社FLOWを立ち上げて共同の代表取締役となり、目もと中心の化粧品ブランド『LyuVie』、眉専門のサロン『mime』を切り盛りしている。

「眉ケアのニーズは絶対にある!」と確信してサロン起業を決意

16年前はまだ眉ケアのサロンが一般的ではなく、既成のものがなかったため、施術用のイスは家具メーカーに特注。家具メーカーのイスだけに見た目も座り心地も格別。

――化粧品メーカーの広報と言えば、誰もがうらやむ職業。安定した生活を捨てて、なぜ起業したのですが?

後輩たちの経験値もスキルも上がっているのに、マネージャー職にあった私が抜けないと、みんなの仕事が広がらないと思い始めていました。ちょうどその頃、私は海外の眉サロンブランドを日本に展開するプロジェクトのPRをしていて、一区切り着いたところでした。広報担当として6年務めたことだし、大学院でメディア論をもっと勉強するか、それとも何か新しく始めようか、ちょっと考えていたんです。

そんなとき、同じプロジェクトで意気投合した同僚と「大きな会社ではできないことをしたい」という話になり、起業することにしました。

――川島さんが起業した当時、「眉」に特化したサロンは無かったですよね?

自分たちが日本に持ってきた眉サロンもありましたし、ワックスで脱毛するような「眉」のメニューが一部のエステサロンではあったんです。その当時、「L.A.のセレブには専属のアイブロウスタイリストがいる」という話がメディアを賑わせていていました。これからは日本人にも、私たちにフィットした眉のお手入れ、メイク道具が必要になると思いました

――今でこそ、まつ毛や眉のお手入れをするサロンは一般的ですが、「眉」に絞るには勇気がいったのでは?

女性誌で何度も繰り返すように眉特集が組まれるのも、読者が「知りたい」と思っているからですよね。そもそも眉のお手入れを自分でやるとなると、すごく難しい。高い技術を持って、その情報をきちんと伝えれば大きな成功はしなくても、大きな失敗はしないだろうと思っていました

――エステサロンを開いて、眉のお手入れをそのメニューの1つにすることは考えなかったんですか?

エステのサロンはスパ施設など水回りの設備が必要で、しかもお客さまごとに個室を作らなくてはいけません。開業資金がものすごくかかるんです。開業資金は私と共同代表の二人の貯金と銀行からの借り入れが元手。資金の面でも眉に特化した方がチャレンジしやすかったんですね。

――会社を辞めて、どのくらいの準備期間でサロンがオープンしたんですか?

3か月くらいですね。店を借りると、その日から賃料がかかります。なるべく早くオープンしてお金が回るようにしないと、収入が途絶えてしまいます。ほぼ毎晩、徹夜しながら開店の準備をしました。

サロンの内装工事、スタッフのトレーニング、サロンで使う化粧品の開発をすべて同時に進めました。一部の容器を中国で製造していたんですが、「やってる、やってる」と言いながらサンプルが届かない。製品を担当していた共同代表が「待っているより、現場に行った方が早い」と、開店準備で忙しいなか中国まで取りに行ったんですよ。たまにその当時を振り返って「もう一度やれ」って言われたら無理だよね~って、同僚と話をしてます(笑)。

――美容室でもエステサロンでもないので、設備を整えるのが大変だったのでは?

まず、施術をするイスがありません。美容院でシャンプーをするときに使うイスでは、施術者がストレスなく眉のお手入れができませんでした。そこで家具メーカーに発注して作ってもらうことにしたんです。ベースになっているのは、一般の家庭でも使われている電動のリクライニングソファで、施術しやすいように、首を支えるヘッドの部分が倒れるように改良してもらいました。

アイブロウペンシルも特注です。当時、日本にはブラウン系とグレー系の2パターンしかなくて微妙な色がなかったんです。それでドイツのメーカーにお願いして7色作ってもらいました。先方の担当者に「何で日本人はそんなに眉の色が必要なんだ?」って聞かれました(笑)。すべてが初めてだったので、こだわれることは徹底的にこだわりました。今思えば、こだわりすぎたところもあるかもしれません。

本当に欲しいものはお客さまが知っている!? 開業当初からメンズメニューも充実

ユニセックスで使えるようにデザインもシンプル。男女で仕様が違うのはアイブロウテンプレート(写真は男性用)のみ。

――お店のオープンにあたって、宣伝や広告はどうしましたか?

とにかくお店を開かないと取材してもらえません。オープンしてからは今までご縁があった出版社やテレビ局やラジオ局などを回って、サロンの説明をしてきました。1か月で100人以上の方に会って毎回同じ説明をしているうち、あるときお風呂に入ったら、悲しくもないのに涙が止まらなくなって。お客さまにお越しいただけないと家賃も給料も出せないシビアな現実と、新しいことを始めて忙しい高揚感に、ちょっとバランスがおかしくなっていたのかもしれません(笑)。「少し冷静に仕事をしよう」と思いました。

地道なPR作戦が功を奏したのか、やっと雑誌に取り上げてもらえて、そこからお客さまが増え始めました。やがて新聞に載り、テレビの取材も受けるようになりました。珍しさもあって、話題になったんですね。

――男性用のメニューもあるんですね。

男性にこそ需要があると思っていました。女性の場合、美容院やエステ、化粧品のカウンターなど眉のケアやアドバイスをしてもらう機会はたくさんあります。でも男性は機会が無かったんです。特に16年前は、男性は床屋さんで剃ってもらう以外、アドバイスを受ける機会はまだまだ少ない状況でした。悩んでいらっしゃる方、実は多かったと思います。

――男性にこそ眉ケアが必要だと、気づいたきっかけは何ですか?

お客さまとの会話からです。ご主人が眉のお手入れをご自分でやっているようだけれど、どうも上手くできなくて困ってる…というような話を聞いて、やっぱり男性のニーズはあるんだと確信しました。当初から男性のお客さまも想定していたので、メニューに「メンズシェイピング」がありますし、化粧品も文具をイメージしたシンプルなデザインにしました

最初はお客さまとして奥さまがいらして、ご主人や息子さんを連れていらっしゃることもあります。中学生になると、眉をいじりたくなりますよね。自分でやると細くなりすぎたり、左右の長さが違ったり、だいたい失敗して痛い目に合うことが多いもの。息子さんがそんな目に遭わないように、ご自身に似合う眉を最初に教わっておけば安心…というお気持ちがあるようです。

――お客さまの声にヒントが隠されているんですね。

わざわざマーケティング会社に依頼しなくても、サロンにいれば最近の動向は分かります。逆に調査を依頼しても、情報が手元に届くころには古くなって使えないかもしれません。物事の流れが速くなっているので、サロンにいらしているお客さまやその場の空気を感じられる現場にいることが「今」を知るには何よりも重要だと思います

とは言え、お客さまの声を聞きすぎるのもよくありません。以前「個室を作った方がいい」というお声がたくさんあって、サロンを移転をする際に作ってみました。でも実際に個室を利用なさる方はそういらっしゃらなくて、「あ~。必要なかったんだね」ということがありました(笑)。トライ&エラーを繰り返しながら、仕事は進んでいくと思っています。情報に流されるのではなく、内容をきちんと精査して、「取り入れるべき」と思えたならチャレンジすればいいと思います

川島さんに学ぶ! 起業を成功させる3つのポイント

1.必要な設備・道具は妥協しない。納得できるまでこだわること

2.現場のお客さまの声から今、求められているものをキャッチする

3.無謀なことはしない。ただし、失敗を恐れずにやってみる

オープン当初はフロントにも立っていた川島さん。施術の前後でお客さまと話をするなか、いろいろなリクエストやアイデアを得ていたとか。今も施術スタッフの声やお客さまの反応など、現場の声を大切にしているそうです。後半では、東日本大震災やコロナ禍をどう乗り切ったのか、16年も経営を続けられた秘訣などをご紹介します。

撮影/古谷利幸(F-REXon)

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Salon Data

mime
住所:東京都中央区銀座1-6-1 銀座クレッセントビル9F
TEL:03-5856-9305
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