セラピストとして一番大切なことは「心地よい自分」でいること 「Salon Sonoteto」代表・坂口千晴さん
アロマセラピストで「Salon Sonoteto」オーナーセラピスト、調香デザイナー、そしてラジオパーソナリティとしても活躍中の坂口千晴さん。前編ではどのように仕事を広げてきたかを伺いました。お話を聞いていて見えてきたのは、やりたいと思ったことは言葉に出し続け、すぐに行動に移すという坂口さんの姿勢。しかし結果については焦らず、時間をかけてじっくりと基盤を築いてきた坂口さん。提供する価値をじっくりと伝え続けたことで、理想とする働き方に近づいてきているといいます。
後編では坂口さんがアロマセラピストとして、大切にしてきたことを伺います。手のひらを通してお客さまに触れるアロマセラピストの仕事をしていくには、「心地よい自分」でいられるように、日々を過ごすことを大切にしています」と坂口さん。また施術をしている時間だけでなく、「お客さまの日常に香りを」と、ワークショップなども開催しているそうです。
今回、お話を伺ったのは…
坂口千晴さん
アロマセラピスト/「Salon Sonoteto」代表/アロマティーク調香デザイナー/ラジオパーソナリティ
大学在学中、うまく心身のリラックスができなくなった時期に、アロマセラピーに救われた経験からアロマセラピストの資格を取得。大学卒業後は一般企業に就職しながらも週末に自宅サロンでアロマセラピストとしての活動を続ける。シェアサロン、自宅サロンなどで活動をするうちにリピーターや紹介が定着し、2022年より自宅サロンに加えて代々木上原でもアロマトリートメントの提供や商品の販売を開始。現在はリピーターや紹介客中心のサロンとなっている。アロマトリートメント以外にも、マンツーマンのコンサルテーションを通してオーダーメイドの香りを作るメニュー「scent of voice」の提供や、オリジナルの香りを作るワークショップ、季節に合わせた香り商品の販売など、その人の人生に寄り添う香りを届けることをミッションに活動中。また2018年より「渋谷のラジオ」で放送中の番組で、火・水のラジオパーソナリティも務める。
自分が与えるのではなく、その方の持っているエネルギーをただ巡らせていくように
――アロマセラピストとして、心がけてきたことはどんなことでしょうか?
アロマセラピストはお客さまのお身体に直接触れる仕事で、自分の手のひらからすべてが伝わってしまいます。自分自身が心地よく整った状態でお客さまに接することを一番に心がけています。そのために、自分の気持ちのありかたというのがとても大事だと思っていて。
以前の私は自分のエネルギーをお客さまに与えるようなイメージで、お客さまのお身体を良くしないといけない、悪いところを治さないといけないという気持ちで接していました。でもそういう気負いがあるからか、自分が消耗してしまってしんどくなってしまうこともよくあったんです。今はお客さまはもう「充分に足りて」いて、私は滞りをただ巡らせるのが役割と思うようになりました。身体は自分の心身との調和がうまくいかなかったり、気が滞っていたりしているのを、「不調」というかたちで教えてくれているだけなんですよね。それを精油の力を借りて私の手でほぐして、流していく、そんな気持ちでお客さまと向き合っています。
――思いが大切なんですね。
はい、そう思います。私もお客さまも同じ人間で、1人1人の人生、暮らしがあって、人との関係性や、その日の天気などさまざまな要素のなかで、揺らぎながら生きています。そのなかで人生が交差する瞬間、たまたまお客さまと私が出会っている。
そこで、せっかく出会ったのなら私はその方に対して誠心誠意、心を込めて接する。そういうシンプルな考え方にかわっていきました。お客さまに何かをしなければ、というより、その瞬間に丁寧に寄り添うような気持ちでいます。
関わった人の人生そのものがよくなるように
――ほかにも大切にしている思いはありますでしょうか?
お客さまに対して施術をさせていただいている瞬間だけでなく、その方の人生が少しでも良くなりますようにという思いを持って関わることです。せっかく出会えたのなら、その方の人生を応援したいといつも思っています。これは定期的に来てくださっているお客さまでなくても、初めて来たお客さまでも、ワークショップなどに来てくださるお客さまも、同じです。
――香り作りなどのワークショップも開催されているそうですが、そこにはどんな思いを込めているのでしょうか?
お客さまの人生がよくなるように自分にできることが、施術以外にもないかなと考えたとき、ワークショップでなにかできるのではないかと。もともと「Salon Sonoteto」の「Salon」には「社交の場」という意味も含まれていて、サロン名を決めるときに「Salon Sonoteto」をきっかけにして人と人とのつながりが生まれたり、集うことで笑顔が生まれたりしたら良いなぁと、ちょっとした願いを込めました。
サロンのお部屋も使わせていただいている鍼灸サロン「Herb and Needles」の菅歩実さんからお声がけいただいたことも大きなきっかけでした。歩実さんが「千晴さんの香りへの想いを届ける場を作りたい」と言ってくれて、お灸とのコラボでワークショップ開催がすぐに決まりました。こんなありがたいことはないですよね。彼女とはいつも楽しいことを一緒に考えています。香りを作るワークショップでは3時間ほどたっぷりと時間をとって、アロマセラピーの基本についてお話したり、鍼灸師の歩実さんにお灸をしてもらったりと、その時間自体も楽しんでいただけるのですが、そこでの体験や持ち帰った香りがその方の人生、日常に寄り添うものになればうれしいと思っています。
また現在は香りづくりのワークショップだけでなく、マンツーマンのコンサルテーションをしてオーダーメイドの香りを作る「scent of voice」というメニューも新たに加わりました。精油を嗅覚の判断に従って直感で選んでいただき、その方の現状の傾向を紐解くことで、その方に合ったリラックスや、マインドセットや、セルフケアに役立てていただける香りアイテムを作り、お届けするメニューです。
アロマセラピスト、ラジオパーソナリティ、サロンを通して癒しを提供し続けられるように
――最後に今後の目標を教えていただけますか。
最終的には自分の拠点を持ちたいと思っています。今は3つの拠点があってそれぞれに良さがあるのですが、いつかはサロン、人の集うスペース、アトリエ、すべて兼ね備えた拠点を持ちたいと思っています。
身体を楽にする場でもあり、人が楽しく集う場でもある「Salon Sonoteto」で、お茶を飲んだり、おしゃべりをしたりしながら、そこに香りという要素もある、そんな場を提供していきたいです。
そこで人が元気になって「またがんばろう」と思えるきっかけになれたら、こんなにうれしいことはないです。あとは自分のラジオ番組を持つというのも、一つの目標です!
セラピスト、調香、ラジオパーソナリティー、どの自分も、「誰かの日常に寄り添い励ませるような働きができたら」という思いは一緒なんです。なので自分のなかでは、別のことをしているという感覚があまりないのかもしれません。自分の人生を使ってやっていきたいことが、そのまま仕事になっているので、ここまで熱く走れるのかなと思います(笑)。
坂口さんがセラピストとして人気を集めた3つのポイント
1.お客さまを治すという意識ではなく、持っているエネルギーを循環させるイメージで施術を行っている
2.携わった人の人生が少しでも良くなるように願いながら接している
3.自分の生きる上での目標がそのまま仕事になっている
お話しているだけで、ほっとした癒される気持ちになる坂口さん。しかしその奥には揺るぎない「人の人生を応援したい」という強い思いがしっかり感じられました。多忙な生活を送っていても、坂口さんからエネルギーがあふれているのは、その思いに従って行動しているからだと感じました。多様な働き方に興味のある方、アロマセラピストの方は参考にしてみてくださいね。