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新井唯夫 interview:『美容師』という仕事への葛藤。そして仕事の難しさ、楽しさを知る

数々のヘアデザインやテクニック、メイクアップの考案、多くの著者・メディアでの活躍に加えて、業界内でも人気の高い講習会などで、日本を代表する美容師のひとりと呼ばれる新井唯夫さん。今もなお、華々しく活動の場を広げる新井さんの、業界への愛に溢れたメッセージは、美容師を目指すリジョブ読者必見です。

美容師になるのが当たり前の環境で

新井 唯夫さん

「我が家は、両親・両祖父母が美容師という美容師一族なんです。両祖母の兄弟、叔父や叔母も美容師が多く、美容師には希望すればなれるのが当たり前という環境でした。頭部のマネキンなどが普通にある家で過ごしていましたから、ヘアスタイルには自然に目がいくようになっていたんでしょうね。中学の頃にはどこの美容室に行けばカッコいい髪型にしてくれるか友人に教えたり、『あれはちょっと違うんだよなぁ』なんていっぱしの批評家を気取っていました(笑)。

思い返せばとても恵まれた環境でしたが、高校生の頃は反発もしました。「家が美容室をやっていなければ心おきなく美容師を目指せるのに!」なんてね。高校の学費を自分で払っていたこともあり、美容以外の様々なバイトを経験しましたよ。飲食から引越し・解体作業員、選挙事務所なども。この時の様々な出会いや経験が、結果としてやはり美容師は向いていると判断する材料のひとつになった気がします」

店が消滅しかけた時、覚悟が決まった。

「高校と同時に美容学校の通信教育も始めたのですが、店を手伝ってもいたので、美容の仕事は知らない間にできていました。でもその頃はまだ家業に反発もあって、趣味で始めたサーフィンも面白くて、将来を模索していましたね。僕がそんな風にフラフラしていた頃、家は大変なことになっていました。

父親が病気になって入退院を繰り返し、その結果いくつもあった店をたたみ、会社を売り、母の店として1店だけが残してあった状態でした。最後のお店の店長さんが辞めることになって、家から本当に美容がなくなることになるかもしれない、という時、初めて自分のことを省みたんです。僕がもっときちんと跡を継ぐ意思を持っていれば、こんなことにはならなかったんじゃないかと。

そこから覚悟を決めました。当時、ハワイの有名サーファーの自宅合宿に参加するために準備をしていたんですが、それをやめて家を継ごうと決意したのが21歳の時。それから、美容の道一筋です。美容師になってからは、辞めたいと思ったことはないです。というか、店を継いでいるので最初から経営者としての責任がありますから。親の、そして従業員の、人生を背負ってしまいましたからね」

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無駄を省く工夫をすることが楽しい

新井 唯夫さん

「美容の仕事はいつのまにかできていて、それは本当に家の、親のおかげです。美容師免許を取ったのは、美容師になることを決めてからなのですが、当時は何をするにしてもこだわりや探究心が強く、相当な完璧主義者でした(笑)。小さい時から家で見てきたことや手伝ってきたこと、もともと図画工作や美術などは好きで器用だったことと併せて、工夫をするのが楽しい性分でしたね。

例えばピンカールなどの実技は、1つずつやっていると時間がかかってしまうんです。そこで先生に『あっという間にできる神業はないんですか?』と質問をして(笑)、先生は『こうやるのよ』と、サラサラ流れるように作っていく。それを見て、全く同じようにはできないんですが、今の作業から次の作業までの流れに無駄がなければいいんだな、と解るわけです。そうしたら時間短縮と無駄を省くことを意識しながら練習をする。そのおかげで、美容師国家試験は5分前に終わってウィッグの顔も綺麗に整え、道具もきちんとピシっと並べる余裕も生まれました(笑)。ポイントを的確に掴んで工夫をする。それが上手かったのでしょうね。美容の仕事自体で、辛かった思い出ってほとんどないんです」

経営、教育…。仕事の難しさと喜び。

「経営者としては辛いことはあります。従業員と意見が食いちがう時や、辞めていく時などですね。人を育てたり会社のシステムを作る時などは、厳しすぎると従業員には辛いし、かといって甘いとお客さまにはご満足いただけない。労働環境と夢のある会社で、人間力(商品力)のある従業員がいて、お客さまにも喜んでもらえて、という状況が一番幸せなのですが、必ずしもそう上手くはいかないですから。みんながきつくないように、知らないうちにレベルが上がるような、そんなシステムを作り上げないといけないといけないですね。講習会などの仕事もありますし、自分自身も向上していかなくちゃいけないですしね。

実は、東京で活躍しなくても、好きなサーフィンをやりながら独立して自分の店をのんびりやっていればいいかなと思った時期もありました。でも講習会などで父の代から支えてくれる方たちや、全国の美容師や関係者からの期待を受けたり好意をいただくと、自分の好きなことだけやってボンヤリ過ごすのは申し訳ないと思ったんです。歳を取った時に後悔するに違いないと。求められているなら、精一杯応える。それで喜んでいただけるなら、こんなに嬉しいことはないでしょう」

自分の絵でも、喜んでもらえるのが嬉しい

新井 唯夫さん

「人に喜んでもらえるのは本当に嬉しいです。僕は23歳くらいの時から絵を習い始めたのですが、基礎だけ習い教室へは行かなくなってしまったけど、当時、先生には『続けなさい』と言われました。上手くなるには一週間に一回は絶対に描きなさいと。でも絵の練習をする時間もない。どうしようかと考えて、週に何度もある講習で描こうと思いついたんです。

はじめは黒板に、そのうち画用紙を持っていって、その場で描いていました。最初はすごく変な絵なんですよ(笑)。それでもみんな拍手してくれたり、欲しいとか言われるんです。渡せるようなレベルじゃないんですが、でもみんなが喜んでくれるならいいか、と(笑)。絵を描くことは今の仕事にとても役に立っています。イメージを伝えやすいですから。経験は全て糧となっている、と実感しています」

新しいお洒落をするワクワクを作り出す

「講習会では、最初はカットやカラー、パーマだったのですが、父がアップで有名だったので『息子さんもアップが上手いんでしょう』と期待されて、そうなると応えたくなってしまって始めました。ところが、アップヘアってすごく奥が深くて難しい。頭部は球体ですから、どこから見ても綺麗なフォルムを作りださなくてはいけませんが、髪質や生え方は人それぞれでしょう。どんな髪でも、毛流れや動きをコントロールする工夫が必要です。そしてファッション感やその人の雰囲気などのテイストを合わせて、全体バランスを完全にコーディネートすること。それができて初めて感動が生まれます。そこを目指すと、自分でももっともっと向上していかなければならないと思います。アップは難しいからこそやりがいがありますね。

まとまり感を作る、セットする、という感覚でいれば、ミディアムやショートでもアップスタイル風は作れますよ。諦めないで大丈夫です(笑)! 髪型が変わると、服やメイクも、ダウンスタイルとは違うお洒落をしたくなりますよね。その世界ってすごく素敵だし、面白いです。女性が変身する時の、溢れんばかりのワクワク感を作りだしていきたいですね」

1日24時間を48時間にするには!?

新井 唯夫さん

「時間はもう少し欲しいですね。1日48時間くらい(笑)。でも24時間と決まっているので、1つのことを半分の時間でできるようにしようと考えました。勉強もサロン業務も効率良く中身の濃いものにしようと。例えば試験の練習をしているとしたら、試験に出る範囲をピンポイントで徹底的にやる。そうすると100点に限りなく近づきます。サロンでは、例えばAさんというお客さまがついたら、Aさんのためだけの練習をするんです。他の技術は一切考えずに、Aさんに喜んでもらうことに集中する。そうするとお客さまには最高にお喜びいただけて、時間はものすごく短縮されます。ひとつひとつをそう考えていけばいいと思います。

僕はすごく忙しかった時期でも、サーフィンも行きました。美容師はなかなか時間がないと言われますが、やはりよく聞くように『時間は作るもの』なんですよね。考えて、工夫して、自分の人生をクリエイトしていきましょう」

相手のために仕事をすれば、絶対に成功する

「今年の初めに本社が移転しまして、セミナールーム「N.B.A.A.スタジオ」を作りました。父の代から『新井会』というものがあり、一旦解散したのですが復活させました。主にアップスタイルの講習会や講師育成のために、このセミナールームで勉強会を行っています。他サロンの店長さんやオーナーさんなども勉強をしに来てくれます。撮影機材やミシンなども用意しているので作品撮影もできますし、衣装も作ることができるんですよ! この部屋から新しい美が生み出されていったら嬉しいですね。

これから美容師を目指す人に向けて僕が言えるとしたら『何も不安がることはないよ』ということでしょうか。美容を志す人は、“もっと勉強しなくちゃ!”という真面目な方が多いんです。でも、この仕事は店によって勉強するべきことが全く違います。入社した店に来るお客さまの、店長の、一緒に働く人の、言う事をきちんと聞いて理解をしていけば、絶対に上手く行きます。お客さまが求めているのは『上手い人』よりも『自分を理解してくれる人』。もし、技術的に同じくらいのお店が2店あったら、より『私』のことを大事にしてくれる、分かってくれる、いつも考えてくれる店へと足が向かうでしょう。

これは美容師に限った話ではありません。どんな仕事に就くにしても、ほとんどの仕事は毎回毎回相手のためにあるもの。心で入って、人の心がそのまま自分の色になる努力をすれば、必ずあなたは成功します!

Profile

新井 唯夫さん

新井 唯夫(あらい ただお)さん

美容室FEERIE代表
株式会社アライタダオエクセレンス・株式会社ジェニュイン President&C.E.O
美容研究全国新井会 会長

ヘアサロンやエステティックサロンの他、雑誌やTVで活躍するトップスタイリスト。全国各地やアジア諸国にてヘアショーや実技講習会を行い、その受講者は年間2万人を超える。また、書籍やDVDなどで国内外にヘアの基礎知識やデザイン論を広めるなど後進の育成にも務めている。

Shop Data

FEERIE
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FEERIE

フランス語で『妖精の国』『おとぎの国』という意味を持つ「FEERIE」は、銀座、佃などに美容室、勝どきにエステティックなどを展開する、トータルビューティサロン。常に新しい『美』を発信し、TVや雑誌などのメディアでも注目され続けている。WEBサイトにて24時間予約可能。また、サイトにてモデル募集も行っているので、興味のある方はぜひチェックを!

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東京都中央区銀座1-5-12 銀座クリスタルタワー3F
TEL:03-3538-7555
HP:http://www.feerie.jp/

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