美容師の有給休暇事情は?平均取得日数と消化率が低い理由
美容師にも有給休暇はあります。有給休暇はすべての労働者に与えられている権利なので、法的に決まっている日数は本来サロン側が何を言おうと全日消化していいのです。しかし、実際には美容師の有給休暇の取得率は低く、ほとんどの美容師がもっと休めるはずなのに休んでいないというのが現状です。
この記事では有給休暇そのもののルールについて説明し、美容師の有給休暇の消化率や、その消化率が低くなる原因・理由をまとめます。
有給(年次有給休暇)とは何か?
有給の正式名称は「年次有給休暇」です。「年次」と入っているように「1年間に休める日数」が毎年決められます。休める日数は「継続勤務年数」によって決定します。たとえば同じサロンに「半年」勤務したらその時点で「1年に10日まで有給を取っていい」という仕組みです。
継続勤務年数が1.5年なら11日、2.5年なら12日というように、年数に応じて有給の日数が増えていき、最長は20日です。6.5年以上継続して勤務すると毎年20日の有給休暇を取れるようになります。6.5年から先は継続年数が何年になっても「1年20日まで」です。
それでも1年に20日有給があったらかなり大きいでしょう。ほぼ1カ月休めるようなもので、しかも給与も減らないのです。このようなシステムが法律によって定められているのに、実際には大部分の美容師がこの有給のシステムを活用していません。
美容業界の有給の取得率は?
美容業界では有給の取得率はかなり低くなっています。厚生労働省が発表しているデータによると、取得率は約37.1%とのことです。年度によって多少ばらつきはあるでしょうが美容師として働いている人なら、おそらくこの値は実感に近いでしょう。
このデータは正確には美容師だけでなく「生活関連サービス業、娯楽業」という区分のデータなので美容師以外のサービス業の人たちも入っています。他のサービス業と比較しても美容師は特に有給の取得率が低いと言われているので、この37.1%という数字よりもさらに低くなる可能性もあります。
有給の取得日数で見ると美容師は1人当たり「年間6.3日」となっています。つまり「2カ月におきに1日だけ有給を取る」ということです。2カ月に1回というと、親戚の法事や友達の結婚式など、どうしてもやむを得ない事情だと推定できます。そのような時だけようやく有給が取れるような雰囲気のサロンが多いということです。
なお日本全体の有給の取得率はどうかというと約50%となっています。隣の韓国が約53%であり、日本と韓国が有給の取得率で世界のワーストの1位と2位を争っている状態です。この日本全国の50%という数字でも世界一低いのですが、美容師はさらに低くなって37%程度ということです。
美容師が有給を取りにくい理由・原因
美容師が有給を消化できない理由はいくつかあります。まず「スタッフが足りない」という理由が一番多いでしょう。大きなサロンならともかく個人経営のサロンだと全スタッフでも3人や4人程度ということも多いため、1人休むだけでも店舗が回らなくなってしまうのです。
また「指名のお客様が入る」というのも大きな理由です。そのお客様が来店する数日前などに申し込んでくれるのであれば、さほど有給には影響しません。しかし、来店する度に「2カ月後の予約」などを入れてくれた場合、その日は何をしたくなっても有給は入れられないわけです。同じようなお客様が随所でそれぞれ予約を入れてくれると嬉しいことなのですが「有給を取るわけにはいかない日」が増えていくわけです。
このように「お客様の指名予約のおかげで取れない」日に加えて「店舗が忙しくて取れない」という日が重なると、カレンダーの日付のほとんどが有給を取れない日になってしまうのです。
このように日程的に取りにくいことに加えて、雰囲気としても取りにくくなっています。美容師の有給の消化率は約37%ですが、この数字を見てもわかるように大部分の美容師は有給を取りたくても我慢しているのです。その中で自分だけ有給を消化するのは悪い気分になってしまい、有給を消化しない美容師が増えます。そうすると、ますます他の美容師も有給を取りづらくなるということです。一種の悪循環が起きてしまっているわけですね。
さらに美容師によっては「わざわざ有給を取ってもどうせ遊ぶお金はないからいい」という考えもあります。実際に美容師は給与が安いので、このような考え方になってもおかしくありません。お金を使わない趣味を持っていればお金がなくても有給を無駄に感じることはないでしょうが、お金を使う趣味しかない場合には「お金がないから有給をとっても無駄」という発想が確かに起こるかもしれません。
その他に有給を取らない理由としては「早めに独立開業をしたいのでその準備のために少しでもスキルアップしたい」というものがあります。これは美容師によって考えが分かれるもので「独立開業するからこそ経営の勉強などをする時間が必要だから有給を多めに取る」という人もいます。一方「今のサロンで早く昇格してマネージャーに近いポジションになった方が独立開業に必要な知識や経験を得られる」という美容師もいます。この場合は、今のサロンで早く昇進するために有給はあまり取らない方がいいのです。
欧米のように「有給を取っても仕事の評価が下がることがない」という雰囲気があればいいのですが、日本では美容業界でもその他の業界でもまだそのような雰囲気がありません。そのため、早く昇進したいと思う美容師ほど有給の消化率は低くなってしまいます。
有給が取りやすいサロンに転職するのもあり
全体的に有給を取りにくい美容師ですが、サロンによっては有給が取りやすい所もあります。「もっと休日が欲しい」と思っている美容師は、そのようなサロンに転職するのもいいでしょう。まだ美容師になっていない専門学校の学生でもしっかり休めるサロンで働きたいという場合には、有給が取りやすい所に絞って入社・入店するのが良いと言えます。
有給が取りやすいサロンの探し方ですが、たとえば求人情報で「有給消化率80%!」などと書かれていたら、かなり有給を取得しやすいと考えていいでしょう。100%が理想ですが、日本全体の平均が約50%で美容業界の平均が約37%ということを考えると、50%を上回っているだけでも十分でしょう。もし「80%」などと書かれているデータが本当だったら相当好待遇のサロンだと言えます。
データがしっかり書かれていなくてわからない場合には一度店舗にお客様として行ってみるという方法もあります。その会話の中でさりげなく休日について聞くのです。休日についての会話は大抵の美容院で美容師の方から振ってくるので、この話題に持ち込むことは簡単です。「今日はお休みですか?」というのは美容師からする定番の質問なので、これに絡めて聞いていけば休みやすい職場かどうかある程度判断できます。
普通のお客様ならわからないでしょうが、自分が美容師なわけですから相手の美容師が答える時の雰囲気などで「休みづらいサロンだな」とか「かなり休みやすいサロンだな」という実情を感じ取られるでしょう。
「お客様として行ったサロンに就職できるか?」と思うかもしれませんが、これは全くOKです。「事前にお客様として様子を見に行く」というのは、長く働こうとする職場では必ずすべきチェックですし、その慎重さがマイナスに見られることはありません。また、応募するということは「そのサロンが良いと思った」ということですから、その良い部分を面接で言えばオーナーやマネージャーの側も悪い気はしないでしょう。
このように求人情報だけでなく実際の現場でも雰囲気を確かめることを推奨しますが、最初はやはり求人情報から入ります。多数の求人情報からいくつかのサロンに的を絞ってそれから店舗に行くという流れがいいでしょう。