【SNS活用術】シンプルこそ多くを語る。「この髪型くわしく」の一言だけで反響20倍!【ACQUA omotesando 嶋山豪さん】#2
2年前にデビューして以降、新規客数もリピート率も飛び抜けた記録を叩き出しているACQUA omotesandの売れっ子スタイリスト嶋山豪さん。Instagramのフォロワー数は約1.2万人(2021年12月現在)で、新規客の全てがInstagramからの来店のようです。その背景の一つに、時代のニーズに応えたヘアスタイルを打ち出してきたことが挙げられます。「コロナ渦で頻繁に来店することができなくなった」ことで「ブリーチなしの透明感カラー」に、「マスク着用が当たり前になった」ことで「2way前髪」に特化し、さらにはInstagramでの流行り廃りもチェックし、投稿スタイルを少しずつ変えてきました。
後編では、具体的な投稿テクニックについて詳しくお聞きします。特に、シンプル投稿の狙いとその効果は必見です。
教えてくれたのは…
ACQUA omotesando 嶋山豪さん
ACQUAの若手スタイリストの中で今最も注目度の高いスタイリストで、リピート率の高さもACQUAで随一。Instagramのフォロワー数は約1.2万人(2021年12月現在)で、新規客の全てがInstagram来店。コロナ時代に合わせて「ブリーチなしの透明感カラー」「2way前髪」に特化しているほか、時代を読み取ったネタやテクニックを絶えずアップデートしている。シンプルで端的に要点を伝える投稿テクも注目。
Instagram:@goshima08
「シンプル」にわかりやすく伝える
──嶋山さんは「シンプル派」を貫いているようですね。
そうですね。シンプルに載せた方が伝えたいことがダイレクトに伝わると思っているんです。例えばこの投稿を見てください。
これはシンプルに耳かけしただけのへスタイルですが、前髪のデザインを発信した投稿なので、つくり込んだスタイリングは不要だなと。ヘアスタイルを載せるときに意識しているのは「どこにポイントを絞るか」ということ。潔くシンプルに載せた方がポイントがわかりやすくなるんです。
──最近では文字入れが主流になっているようですが、嶋山さんも文字入れ投稿を増やしているようですね。
Instagramのアルゴリズムが変化してきたのか、文字入れをしないと伸びなくなったんです。
──画像に対する文字の割合は決めていますか?
文字を入れる範囲は結構狙っていますね。それぞれのヘアスタイルとのバランスにもよるのですが、例えばこちらの投稿を見てください。
「前髪と目元だけを見てください」という投稿なので、文字を大きくして、あえて他の部分を隠しているんです。余計な部分を隠すことで自然に前髪と目元だけに注目がいき、ポイントがしっかり伝わりますよね。
最初は肯定から入ることで受け取りやすさが変わる
──髪色を綺麗に撮影するために意識していることはありますか?
絶対条件として、自然光が入るところで撮ること。室内ではあまりヘアスタイルを撮影しませんね。
室内で撮らない理由として、背景がオレンジ味を帯びてしまうから。背景がオレンジだとカラーの透明感がきれいに写らず、投稿も伸びないんですよ。僕のヘアスタイルの投稿は全て背景が「白」になっているはずです。
──「市販のシャンプー、実際にどうなの?」という投稿もシリーズ化していましたが、反響はあったのでしょうか?
市販ネタを投稿した理由が、コロナ渦でみんなが美容室に来られなくなったから。サロンでも「市販のカラー剤で良いものありますか?」という質問がとても多かったんです。
──なるほど。嶋山さんは市販物についてメリット・デメリットの両方を伝えているのが良心的ですね。
大抵の美容師さんって市販のシャンプーやカラー剤のことを悪く言っちゃうんですよね…。でも、悪く言うとそれを使っている人を傷つけてしまうことになります。実際、「私、このシャンプーを使ってるけどダメなんですか?」と質問をいただくこともかなり多いです。その折衷案として、メリット・デメリットの両方を伝えるようにしているんです。
はじめに「僕も使います」と必ず言うこと。最初はきちんと肯定から入り、そのあとに「でも実はね…」と説明を入れるようにしています。
──その配慮があるかないかで受け取り方は全然変わってきますね
違いますよね。嘘をつく必要まではないと思いますが、話す順番を変えるだけで相手も素直に聞き入れてくれるのではないでしょうか。
オフラインを大事にしてきたからこそ、月300人までに成長した
──オーダー時においても投稿が役立ったことはありますか?
カラーも前髪も自分が得意なところで戦っているので、やりやすさはあります。ご新規様のほとんどが「この髪色で」と、なりたいイメージが固まった上で僕のところに来てくれます。だから、カウンセリングをする際にも「この髪型で」「わかりました」のシンプルな会話だけで意志の疎通がはかれるし、方向性にズレが生じることもないんです。
──Instagramの変遷とともに客数はどのように変化しましたか?
2年前は月100人ずつくらいの来店でしたが、今では月300人の来店が安定するまでになりました。来店時にアンケートで来店動機を書いてもらう欄があるのですが、僕の場合は新規のお客様の全てがInstagramにチェックを入れていただいています。
──デビューして3年目とのことですが、リピート率はいかがでしょうか?
自分は結構高い方で、新規客の2回目来店率は6〜7割くらい。この辺りの美容師さんの新規リピート率の平均が大体2割くらいですし、ACQUAの中でもダントツみたいです。
僕のブリーチなしカラーに対して「こんなに赤みが消えたことがない」「こんなに透明感が出たのはじめて!」と感動していただくことが多く、リピーターの大半がブリーチなしカラーのお客様ですね。やっぱり、そもそも技術が上手くなければリピートはしないと思います。ただでさえ、うちのサロンは料金が高いので、リピートのハードルも高いんです。
──SNSで人気を博そうと、お客様の心を掴むのは実際の技術力ですもんね。
Instagramでの見せ方がレベルアップしている一方で、「上手くいくのは新規集客だけ」「新規客は月に何百人も来るけど誰もリターンしてくれない」という人も目立つようになりました。
アシスタントにもよく伝えていることですが、今の時代は何でもオンライン化されているけれど、オフラインでお客様に喜んでもらえなければリピートされないんです。InstagramでPRすることは大切だし、それで新規客も獲得できるかもしれないけれど、オフラインではごまかしは効きません。人間性や技術力が伴っていなければどんどん落ちていきます。美容師はオフラインが命ですから。
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シンプル投稿の極意
1.ヘアスタイルは最も伝えたい部分を絞り、それ以外は手を加えない
2.広告やYouTubeのサムネばりのキャッチーな「たった一言」を画像に入れる
3.見せなくても良い部分を「文字」で隠し、見せたい部分に視線を誘導する
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/柴田大地(fort)
イラスト/なとみ みわ