車いすを使っていた方が歩けるように!訪問美容で感じた美容の力 美容師・滝澤翔太さん
美容師にも珍しくなくなった多様な働き方。今回はフリーランスとして働きながら、訪問美容や国立がんセンター内のサロンでも活躍されている滝澤翔太さんに登場いただき、その仕事の魅力について伺いました。
訪問美容での介護度の高いお客さまへの施術は、姿勢を維持するのが難しい方や、コミュニケーションが取れない方も多く、最初は難しさを感じたといいます。しかし奇跡的な瞬間にも立ち会え、美容の仕事の奥深さを感じるきっかけにもなったそうです。また国立がんセンターではがん患者の方への施術を担当。メンタルケア心理士の資格を取得し、安心して話せる環境を心がけているといいます。
今回お話を伺ったのは…
滝澤翔太さん
美容師・「GOTODAY SHAiRE SALON銀座キラリトギンザ」マネージャー
フリーランス美容師として働く傍ら、株式会社訪問美容サービスでは、訪問美容の施術以外に営業も行う。国立がんセンター内の「T&S salon」ではがん患者の方へ施術を行っている。
美容の技術をもっと活用するため、訪問美容の道へ
──銀座のシェアサロンで働くほかにも、訪問美容師としても働かれているそうですが、どのようなきっかけで?
フリーランス美容師として働いていたときに、訪問美容の話を聞いて興味を持ったのが始まりですね。元々、美容の技術をサロンワーク以外に発揮できないかと思っていたんです。
そこでまずは介護のことを勉強しようと思って介護職員初任者研修、これは以前のヘルパー2級と同じような資格にあたるんですが、それを取得しました。さらに訪問美容の講座を受けてノウハウを学びましたね。
資格取得後は自分で施設を周り、切らせてもらえるところを探そうと思ったんですが、断られてばかりで…。訪問美容の会社が増えているので、個人が飛び込んでいってもなかなか契約は難しいんです。それならひとりで会社を起こそうと思っていたときに、訪問美容の会社の社長と出会い、一緒にやらないかと誘われました。
──訪問美容師として、初めてカットしたときの感想は?
難しい!と思いましたね。介護度の高い方はとくに姿勢をまっすぐに保てない方も多いですし、寝たきりの方やコミュニケーションをとれない方も多いので、施術はとくに難しかったです。普段のサロンワークとは違う特殊な技術だと感じました。
きれいになった自分を見て、車いすを使わずに歩き出した利用者さん
──やりがいの部分はどうでしょうか?
やりがいは本当にあります。ものすごく感謝されることが多いですし、それがうれしくて長く続けられています。すごく印象深かったのが、ある女性の方に髪を切らせていただいたときに、車いすに乗って施術する場所まで来られたんですけど、髪を切ったあとにすごくテンションがあがって、車いすに乗らずにすたすた歩いて帰ってしまったんです(笑)。
──それはすごいですね!
髪を切ることは人の気持ちをこんなにも変えることができるんだと思いましたし、美容には年齢は関係ないということ改めて感じました。訪問美容をやるようになり、美容師は本当にいい仕事だと、今まで以上に思うようになりましたね。
実は今、訪問美容師としてカットをするだけでなく、施設を周って営業もするようになりました。とても良い仕事だと思うのでほかの美容師がやってみたいと思ったときに、働ける場所が増えるよう、営業も精力的に行なっています。
メンタルケア心理士の資格を取得し、治療中の不安に寄り添えるように
──国立がんセンターのなかのサロンでもお仕事をされているそうですね。どういうサロンなんですか?
がん治療中の方が通うサロンになっています。がん治療中というのは抗がん剤で髪の毛が抜けてしまうので、ウィッグのカットメニューがあるのが大きな特徴ですね。髪のそぎ方が普通とは違うので、最初はウィッグ会社の方に研修を受けました。あとは、髪が生え始めた方のカットをすることもあります。抗がん剤で治療を始める前に医師から、頭を丸めるように勧められる方が多く、そういう方への施術も行うんです。泣いてしまう方もいて、こちらも辛い気持ちになります。
──そうなんですね。心がけていることはありますか?
コミュニケーションを何より大切にして、心のケアができるようにしたいと思っています。病気のことがあったうえに髪の毛をそることになり、やっぱりみなさんすごく落ち込まれているので、安心して気持ちを吐き出せたり、寄り添えるように、メンタルケア心理士の資格をとりました。メンタルケアについて知識ができたので、患者さんの心の動きが分かるようになりましたね。
あとは少しでも前向きになれるような提案をしています。ウィッグの色味で少し遊んでもらったりとか、生えてきたらこんなふうにしてみたらどうですか?と提案したり。今までたくさんの方を見て来て、髪の毛は確実に生えるので、そのこともちゃんと説明し、少しでも心の支えになれたらいいなと思っています。
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滝澤さんが介護、医療分野の美容を担ううえで心がけている3つのポイント
滝澤さんが介護、医療分野の美容を担ううえで心がけているポイントは、以下の3つでした。
1.介護職員初任者研修を取得するなど、ベースとなる知識も身につけた
2.メンタルケアについても学び、利用者の方が安心してコミュニケーションをとれるような姿勢を心がけた
3.少しでも前向きになってもらえるような、施術や提案をした
後編では滝澤さんの美容師人生を振り返りながら、3つの転機についてお話いただきます。美容師という仕事に対して本気になった瞬間、フリーランスという選択をした理由、旅を通じてもう一度美容師の仕事に取り組んでみようと思った過去。それぞれの瞬間に、美容に対する熱い思いが感じられました。後編もお楽しみに!