「将来性がない」というフリーランスの課題を解決するシェアサロンを展開していく【KOKUA 代表 梅澤勇人さん】#2
フリーランスサロン「KOKUA」の代表・梅澤勇人さんに引き続きインタビュー。都内で会社員・フリーランスの両方を経験したのち、地元にUターン。市街地をあえて避け、SNSやネットでの発信で差別化ができるエリアを選んだことが功を奏したそう。
後編では、雇用型サロンではなく、シェアサロンをつくった理由について深掘りします。「フリーランス」や「シェアサロン」の認知度が都内よりも低い地方において、信頼を得るために梅澤さんが考えた戦略とは? そして、フリーランスが働きやすいシェアサロンのあり方とは?
教えてくれたのは…
「KOKUA」代表 梅澤勇人さん
高校卒業後に上京。専門学校卒業後、表参道のサロンに7年勤務。その後、銀座のサロンに業務委託で3年勤務。30歳の節目に故郷の新潟県三条市に戻り、「KOKUA」を開業。県内随一の高単価・高報酬のフリーランスサロンとして注目を集める。現在、2店舗目出店を予定。
フリーランスのデメリットを解決するために、多店舗展開のフリーランスサロンをつくりたかった
――シェアサロンにした理由を教えてください。
東京でフリーランスをしていた頃に直面したのが、マンツーマンでやっていると上限が大体決まってくるということ。単価を上げたり、休日を0にしたりすればもう少し売上をつくれるかもしれないけれど、現実的な単価にするとなるとどう頑張っても月売上は140万くらいがマックス。それ以上を望むのであれば、他にスタッフがいなければ難しいなと感じたんです。
自分のことだけを考えれば正社員雇用型サロンにしても良かったのですが、入社してくれるスタッフたちも将来的にかつて僕と同じように「手取りが低い」という悩みを抱えることになる。だから、「売上以外」の収入源を確保できるサロンにするため、「シェアサロンの店舗展開」を思いついたんです。
正社員でも同じかもしれませんが、美容師は50代になると必然的に若い女性客がつきにくくなります。売上をつくれるサロンであることはもちろん大事ですが、僕はどちらかというとプレイヤーだけでなく、「店舗経営」という選択肢もスタッフに与えられる環境にすることの方が大事だと思ったんです。
――スタッフさんの将来性を踏まえ、店舗展開を前提とした開業だったのですね。
そうなんです。2022年6月に開業し、2023年に2店舗目を出店する予定で動いているところです。
現状、この地域ではシェアサロンはほぼありません。フリーランスになりたいと思っている美容師は僕の周りにも多いですが、「フリーランス」という働き方は東京ほど認知されていないのが現状です。「その働き方は大丈夫なの?」と感じる人は多いですし、低い給料にグチグチ文句を言いながらも「なんだかんだ正社員の方が安定してるよね」となるんです。
それが予測できていたので、信用をつくるためにも早い段階で2店舗目をつくりたかったんです。
――同エリアでは個人サロンが多いのでしょうか?
僕の肌感では、ほとんどが自宅兼サロンですね。僕としては自宅兼サロンはすごく不安材料が多いなと。スタッフからすると社長の家に出勤するのって抵抗がありますし、スタッフがプレイヤーでいられなくなったときにどうするのかな…という懸念もあります。なので、僕は自宅兼サロンではない形をつくりたかったんです。
スタッフそれぞれの「やりがい」に寄り添えるサロンでありたい
――スタッフへの還元率が高いこともこちらのサロンの大きな特徴ですね。
家賃がかからないことが、他店ではできない還元率を実現できている一番大きな理由ですね。
オーナーがたくさん搾取し、スタッフが安い賃金で働くという昔のやり方では、オーナーが年を取って集客ができなくなり、スタッフも給料が低いから辞めていく…と尻つぼみになるのがオチです。カリスマ美容師時代のサロンがちょうど今、その状態ですよね。これから先もどんどん顕著になると思います。
スタッフが成長していくことによって他の美容師も集まってきて、少しずつ会社が大きくなっていく。そんなサロンにしたいですね。
――こちらではどんな働き方を目指していますか?
みんなそれぞれやりたいことって違いますよね。よく「うちの美容室はやりがいがあります」と言うサロンがあるじゃないですか。でも、例えば売上50万円でやりがいを感じる人もいれば、500〜1000万円つくるのが目標という人だっている。「こうすればやりがいを感じますよ」とサロン側が押しつけるのは違うのかなと思っていて。僕は、その人が目指す「やりがい」に対して、どういう風に働けばそれが叶うのかを一緒に考えたいんです。
「こういう働き方をしてください」「ここを目指しましょうね」と共有するつもりは全くないです。それぞれが理想とする美容師としての働き方を叶えてあげられる形を取りたいと思っています。
「新潟と沖縄の二拠点で美容師をやりたい」という方と先日お話しさせていただいたのですが、そういう働き方だって僕は大歓迎。新潟である程度集客が安定していれば、連休を取って沖縄に行くことは全然可能です。これからはそんな働き方も伝えていけたらなと。
――「美容師に選ばれるサロン」を掲げているようですが、そのために意識していることはありますか?
「サロン側が美容師を選ぶ」という従来のスタイルでは集まりません。100人以上の応募が集まる都内の人気サロンだったら別ですが、そうではない場合は「あなたはうちのスタイルに合わないから」と弾くのは違うかなと僕は思います。うちは面接ではなく面談です。応募者の今後のビジョンをすり合わせることを大事にしています。
――地方だからこそ叶う!という働き方はありますか?
「地方だから」というのはあまりないんじゃないかなと思うんです。若いうちは東京などの人口が多くてライバルもたくさんいる環境で磨く時期は絶対にあった方が良いです。でも、それ以外においては地方と都会で差はあまりないと思います。「地方だからやりやすい」というのも特にないかなと。新潟も東京も単価はそこまで変わりませんし。むしろ東京はもっと単価を上げなければ難しいのでは…と思っています。
――シェアサロンとして、新潟でどんな展開をしていくのか楽しみです。
店舗を増やすことはあくまで「スタッフの幸せを叶えるための手段」でしかありません。うちに来てくれたスタッフ一人ひとりの夢を最大限に叶えられるサロンを目指したい。それが最終的に店舗展開に繋がるのだと思います。
フリーランスの働きやすさを実現できる「シェアサロン」とは?
1.スタッフへの還元率を高める
2.「店舗経営」など、プレイヤー以外の選択肢(収入源)を用意する
3. スタッフそれぞれのやりがいやビジョンをすり合わせる
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)