店販で個人売上250万円!お悩み相談から自然な流れでアイテム紹介 美容師 庄司琢麻さん
町田市の鶴川でサロン「Clip Clap」を経営する庄司琢麻さん。ハイクオリティな施術が支持を集め、地元で27年間愛されるお店となっています。庄司さんは「店販」に力をいれてきたことで、長い間安定した経営を続けてこられたと話します。その手腕は話題を呼び、共同著書『今までのビジネス人生で最高に売れた最強販促事例を全て包み隠さずお話しします。』を上梓するほど。今回は、顧客の方にもメリットを提示しつつ店販を行うノウハウや、ワンランク上のクロージングの仕方をお伺いします。
今回、お話を伺ったのは…
庄司琢麻さん
町田市の美容室「Clip Clap」を27年間経営。カウンセリングや予約をつめこみすぎない、余裕のある施術で95%のリピート率を誇る。Xでは、毛髪や薬剤に関する豊富な知識を発信中。自社ブランド「gokigen」のコスメアイテムの開発・販売も手掛ける。共同著書『今までのビジネス人生で最高に売れた最強販促事例を全て包み隠さずお話しします。』を上梓するなど、店販を活用した経営にも定評がある。
店販でスタッフに依存せずに売上を作る!
――庄司さんは、ご自身が経営されているサロンでのアイテムの販売(店販)に力を入れておられます。現在はどんなアイテムを販売されていて、どれくらいの売上を上げていらっしゃるのですか?
現在は美容室専売のヘアケアアイテムや、自社ブランドのヘアケアアイテム・化粧品などを販売しています。
過去の個人の店販の月間最高売上は250万円です。年末に行っているキャンペーンに加えて、2万円のドライヤーもたくさん売れたのが達成の要因でした。今では、スタッフ5人で、店販のみで年間1200万円以上を売り上げています。
実はお店を開始したばかりの頃は、店販にはまったく力を入れていなかったんですよ!
――店販に力を入れるようになったきっかけがあったのですか?
スタッフが独立をするたびにお店の赤字が続いたことが、売上の仕組みを考えるようになったきっかけです。
スタッフの独立がない時期は安定的に黒字経営ができていました。しかし、がんばってくれていたスタッフが独立をすると、そのスタッフの顧客を失うことになり、結果的に売上が下がる。しかし、次のスタッフが育つと同時に売上も回復。またそのスタッフが独立すると赤字転落というループを繰り返していました。スタッフの独立の都度、数ヶ月赤字が続くのはまずいと思い、経営の仕方を見直すことにしたのです。
はじめに考えたのは技術で客単価を上げること。しかし私のサロンは、比較的高単価なメニューを中心に据えていたため、それだけの対策では限界があると気づきました。
さらにその頃、美容師の独立の機運が高まり、採用が厳しくなってきたこともあって、人に依存しない方法で売上を確保することを考えるようになりました。そこで目についたのが「店販」だったのです。
アシスタントと協力し、自然な流れで悩みを引き出す
――店販に力を入れるにあたり、どのようにノウハウを勉強されましたか?
メーカー主催の勉強会やセミナーなどにこまめに足を運び、最新の商品情報や薬剤知識、マーケティング的な目線でどのようにしたら商品が売れるかを学びました。そこで得た知識をアレンジして、独自の接客方法を編み出しました。
学んだ知識をお客さまにお伝えすることで「この人は髪のプロフェッショナルだ!」という信頼感を得るのにも役立っていますよ!
――常に多方向にアンテナを張って勉強されていらっしゃるのですね!Clip Clapさんでは、店販のために具体的にどんな接客をされていらっしゃるのですか?
たとえばシャンプーを売りたい場合、いきなりお客さまに「シャンプーいかがですか?」と話し掛けるのは、すごく不自然ですよね(笑)。ですから、自然な流れでシャンプーの話ができるようなシチュエーションを作ります。
具体的にはシャンプーをする前に、アシスタントから「お客さまにあったシャンプーを選びたいので、髪の悩みを聞かせていただけますか。」と声を掛けます。「パサつきが気になる」などお悩みを教えてもらったら、髪にあったシャンプーを選び、実際にそのアイテムを使って洗髪をします。そうすると自然に「このシャンプーは、うるおいを保てるんですよ!」という具合に、アイテムの話ができますよね。問題解決のための手段の一つとしてナチュラルにアイテムを紹介できるのでおすすめです。
クロージングは品よく!「使ってみませんか?」で背中を後押し
――顧客側のメリットを提示して「売られている」という感覚を抱かせずに接客するのが、店販の肝になっていそうですね。接客時に他に意識していることはありますか?
スタッフによく伝えているのは、「クロージングをしっかりしよう」ということですね。店販をする場合ありがちなのが、使用するメリットを一方的に伝えて、お客さまの返答待ちになってしまうこと。お客さまもどう反応していいか分からず、ふわっと会話が終了してしまいます。かと言って、直接的に買う・買わないの話をするのはいやらしい印象になってしまうもの……。
ですから私のサロンでは、「使ってみませんか?」という言葉でクロージングをするようにしています。この返答のよい点はイエス・ノーの答えがはっきりと聞けること。また、購入を悩んでいる人の背中を押すことができることです。購入をするための最後のひと押しを欲しがっている方もいるので効果的ですよ!
――店販に苦手意識を持っている美容師さんにアドバイスをいただけますか。
店販を苦手とする方は「ものを売る」=「悪いこと」と考えてしまいがち。ですが、まずは「ものを売ることは、実はそんなに悪いことではないんですよ」と伝えたいですね。
美容室の本分は、お客さまの髪を綺麗に保つこと。施術をしてから次に来店するまでの2ヶ月間、自宅でどうケアすれば髪をきれいに保てるか伝えるのは、美容師の義務だと思うんです。
美容師が髪の状態を診て、最適なケア方法やアイテムを紹介するのは、お医者さんが体調を診て、1人ひとりにあった薬を処方するようなもの。最終的に購入するかどうかを判断するのはお客さまですから、そのための判断材料をお渡しする心持ちでいればよいのではないでしょうか。
庄司琢麻さんの店販が成功している3つの理由
1.セミナーや勉強会に足を運び、商品の特性や薬剤などに関する知識を蓄えてきた
2.自然な流れで商品をレコメンドできるようなトークスクリプトを作成した
3.Yes・Noをはっきり聞くことができるクロージングを必ず行っている
後編では、町田市というサロン激戦区の街で、27年間愛されるサロンを作るための秘訣を伺います。長くお店を存続させるためには売上の確保が必須。Clip Clapさんでは毎年年末に感謝祭を実施し、翌年6月まで有効の1000円優待券を配布しています。そのチケットにより顧客の来店サイクルが早まり、結果的に売上が向上しているのだそう。サロンが躍進を続ける秘訣を伺った次回もお楽しみに!