仕事も子育ても趣味もあきらめず、「ちょうどよく働く」未来を目指す。私の履歴書【美容師 NARUMIさん】#2

女性美容師専門のシェアサロンnuu(ヌー)とnuu fem(ヌー フェム)で代表を務めるNARUMIさん。仕事と子育てを両立するうえで彼女が抱えた悩みやストレスは、多くの女性美容師も経験していること、もしくはこれから経験する可能性のあることでした。そんな女性たちが働きやすい環境をつくるために、現在進行形でさまざまなことに取り組んでいます。

後編では、サロンづくりにおけるNARUMIさんのこだわりから今後の展望まで、率直に語っていただきました。

「わがままに働ける」豊富なプランで差別化

女性はライフステージが変わると働きにくさを感じることも。NARUMIさんは「nuuでは自分のペースで働けると実感してもらえるはず」と言います。

――女性の働きやすさのためにこだわっているシステムや工夫は何ですか。

ほかのシェアサロンとの差別化という点だと、プランが豊富なところです。1ヶ月のお席代を家賃のような形でお支払いいただくのですが、月額プランはAからGまで7パターンあります。例えばAプランなら毎日いつでも使える、Bプランなら日曜と祝日を除いた日が使えるという風に。さらに、この日だけ、この時間だけというスポットプランも合わせると全部で9プランですね。

なぜそうしたのかというと、ママさんの場合は保育園などの関係で日祝は休みたい人が多いですし、ちょうどよく週3日だけ働きたい、月に何日出られるからわからないから単発で働けたらうれしいといったさまざまなお声をいただいたからです。だからnuuでは好きなプランを選べますし、毎月プランを変更することもできます。

――毎月プランを変えられるのは助かりますね!

子育てが大変な間は日数少なめのプランで働くとか、大丈夫なときはたくさん働きたいとか、その時々の状況に合わせたいですよね。それは私自身も同じ!だからたくさんのプランを用意して、自分の都合のよいように働いてくださいというシステムにしています。経営者としての管理はちょっと大変なんですが(笑)、それは覚悟の上。あえて「わがままに働ける」のがいいなと思ったんです

nuuで働き始めてから結婚や妊娠・出産をして、また戻ってきてくださった美容師さんもいます。一般的なシェアサロンだと産休中は契約が解除になってしまいますが、それはちょっと…と思って、うちでは産休・育休中は利用料なしで席を残しておくことができます。契約続行で席を空けておくので、自由に育児してくださいねという感じで。

――経営者視点だと、席を余らせておくというのはなかなかできないことなのでは。

ビジネス的には確かにそうなんですけど、それを言い始めたら女性が働きづらくなりますよね。何事も自分に置き換えて考えないとやっぱり不満が出てきてしまうので、「自分だったらどう思うか」「nuuに来てくださる女性美容師のためにできることは何か」を考えるようにしています

――ほかとの差別化では、インスタグラムも特徴的ですね。「超短編小説」を読んだのですが、ご自身で書かれているのですか。

そうですね。普通にシェアサロンを出しても人が集まらないと思い、女性美容師専用と謳ったわけですが、SNSもほかがやっていないことって何だろうと考えました。変わった切り口で、女性美容師ならわかる「あるあるネタ」を訴えかけたいなと思って、超短編小説のようなものをインスタに載せちゃえ!と。サラッと読んでもらって、共感を得られたらという思いがありました。

「〇〇を理由に美容師をやめない。」というテーマで書かれた、超短編小説のような投稿。NARUMIさんは中学生の頃から詩や文章を書くことが好きだったそう。

――美容師さんやヘアサロンのインスタはヘアスタイルのビジュアルがずらりと並んでいるイメージだったので、何だろう?と目を引きましたよ。

まさに狙い通りです!イラストは後輩の美容師に描いてもらいました。美容師の皆さんって、イラストが上手な方が多いんですよ。私は全然センスがないのですが(笑)。特にその子は美術系の学校で学んだことがあって途中から美容師に方向転換しているので、すごくいい感じのイラストを描いてくれて、インパクトになるなと思いました。

何かしら工夫しないと、たくさんの情報の中に埋もれてしまいやすい時代なので、どこで差をつけられるかというのは常に考えているかもしれません

nuuの始動から5ヶ月足らずで、2店舗目のnuu femをオープン

3店舗目となるsuuは、男性美容師も働ける店に。「私の感覚なのですが、下北沢なら男性美容師がいたほうがよいかもと思って」とNARUMIさん。

――nuuオープン後、たくさんの女性美容師さんが来てくださったそうですね。

見学希望や問い合わせをたくさんいただき、契約にもつながりました。このペースでいくと、nuuで働きたいと言ってくださる方の受け皿がなくなってしまうと思って、すぐに次の物件を探しました。

――2店舗目のnuu femも代官山にしたのは、何か理由が?

渋谷や原宿などほかのエリアも見に行ったんですよ。「自分が働きたいと思う環境か」というのを基準に探していたということと、nuuの利用者さんはアラサーくらいからの大人の女性美容師が多いということもあり、代官山の落ちついた雰囲気がやっぱりいいのではないかと思いました。そのときにたまたまいい物件が空くというのを聞いて、ご縁を感じて代官山にしました。

――nuu femをオープンしてみていかがでしたか。

2022年の12月1日にオープンしたのですが、7席あるのに私を含めて2人しか営業していない状況が1ヶ月続いて。2店舗目を出すのが早すぎたかな、大丈夫かな、家賃を払えるかなってドキドキしていました。でも年明けから徐々に徐々に増えていき、オープンから4、5ヶ月ほどで席が埋まりました。

コロナ禍きっかけでフリーランスになった方も多いと思います。その中でほかのシェアサロンに行ってみたけど合わなかったという人もきっとたくさんいらっしゃるんですよね。若い男性美容師さんがちょっと下品な話をしていて雰囲気が合わなかったとか、店内が汚かったとか。シェアサロンならではのトラブルもあったり。そういう話を聞きながら反面教師にして、nuuではよりよい環境をつくりたいと思っています。実は、今年11月に下北沢に3店舗目ができたんですよ。

――そうなんですね!そちらも順調ですか。

下北沢店は、男女問わず働ける店舗にしています。なので名前も変えて、suu(スー)に。ここは元々別の美容室だったところで、元のオーナー様が海外に移住されるということで、買い上げさせていただきました。設備も全部そろっていましたし、そこで勤めていた美容師さんがそのまま働いています。システムは完全にnuuの形式に変えて。ただ、働いている方は偶然にも皆さん女性だったんです。

――では、これから男性美容師さんが入ってくるかもしれないのですね。

今はそのまま居抜きで使わせていただいているのですが、これから徐々に内装をnuuの雰囲気に合わせていこうと思っています。そのあと本格的に募集を始める予定です。

託児所併設サロンに、全国展開。未来のビジョンもいろいろ!

「やりたいと思ったら、あまり後先を考えずに勢いで突き進んでしまう」というNARUMIさん。自らのビジョンと行動力で、女性が働きやすい環境を目指します。

――今後の夢や目標はありますか。

ゆくゆくは、託児所のようなものをサロンに併設するのが夢なんです。子どもと一緒に出勤して、子どもを預けて、自分はお客様の施術をして。それが一番理想の環境ですよね。オフィス内に託児所を常設している企業がありますが、そういうところを美容業界ももっと突き詰めていかないと働きやすくなりません。

美容師は、ただでさえ拘束時間が長かったり、代わりが利かない仕事だったりします。働きたいのに子どもを預ける場所がなくて働けないという状況を、もっと解消していきたいですね

あとは、シェアサロンを全国に拡大したいという気持ちがあります。シェアサロンで働くという形が都心では普通の選択肢になっていますが、地方に行くとその働き方がまだ浸透していないんですね。フリーランス美容師が自分のペースで働きやすくなる環境を、地方にもつくりたい。私たちが「ユニストア」と名付けたフランチャイズシステムを全国に広げようと思って動き始めています。

――すごい!スピード感のある展開ですね。NARUMIさんが自分らしい働き方や夢を叶えてきた秘訣は何でしょうか。

自分の思いをまず言葉にすること。ふつふつと胸の中に抱えている思いは、誰かに向けて発信したほうがいいのだと、nuuを出すにあたりとても感じました。言葉にすると誰かが共感してくれたり、私の考えは意外と需要があるかもしれないと気づいたり、こういうやり方があるかもしれないと可能性が出てきます。

次は言葉にしたものを形にしていくこと。「女性美容師専用のサロンをつくってみよう」「システムはこうしたらおもしろいかも」「SNSはこんな風に」とどんどん形にしていく。まだまだ夢の途中ではありますが、それが大切だったのかなと感じています。

――そういう思いや行動が、未来に向けて進行中という感じですね。

こうしたい、ああしたいというビジョンがまだまだたくさんあります!先ほど言った託児所や全国展開などやりたいことを発信して、それをどうすれば実現できるかを考えて、形にしていくためのプロセスを踏んでいるように思います。

女性が自分らしく趣味も子育ても充実させながら、ちょうどよく働けるように

――「ちょうどよく」って実は一番難しいのかも。

そうですよね。日本人としては特に難しい面が今まではきっとあったと思います。ただやっぱり時代は変わってきているので。正社員であることが正解というわけではないし、今後はさらに自由度の高さや選択肢の多さが求められるのかなと思います。そう考えると、シェアサロンはまだまだ伸びしろがあるのではないでしょうか。

――NARUMIさんにとって、働くこととは?

人生を豊かにすること、です

働くことによって、人との関わりや社会との関わりができます。働いていなければ出会うことのない人たちに出会い、味わうことのないできごとや感情、想い、新たな自分に出会うことができます。

大変なことやうれしいことといったさまざまな経験が、自分の人生において濃く豊かなものに変わっていく。働くことで、お金よりも人生を豊かにする経験を得ているのではないかと思います

NARUMIさんの成功の秘訣

1.自分の思いをまず言葉にする。

2.言葉にしたものを形にしていく。

3.何事も自分に置き換えて「自分事」として考える。

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子

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Salon Data

nuu fem
住所:住所:東京都渋谷区鴬谷町12-7 ヴィラロイヤル代官山1F
電話:070-9909-2754
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