苦手だった商品販売。お客さま視点に立って意識を変え、必要な理由を説明することで克服「ルミエ・パリ」中田さん
国内に5店舗を展開するエステティックサロン「ルミエ・パリ」。徹底的にこだわった商材と、高い技術で人気を集め、創業から今年で38年目を迎えています。そんな「ルミエ・パリ」に2016年に入社し、時短勤務中ながら、2023年には店長の補佐を務めるリーダーに抜擢されたのが中田さんです。
前編では中田さんがエステティシャンになったきっかけや、前職を含めて新人時代の体験について伺いました。
後編では「ルミエ・パリ」に入社した中田さんが、2、3年目に感じた壁について伺います。中田さんが苦手意識を持っていたのは、お客さまに商品を提案し、購入につなげること。しかしお客さまの側に立って考えてみたときに、意識が変わり、克服できるようになったといいます。
今回、お話を伺ったのは…
中田さん(仮名)
「ルミエ・パリ」所属エステティシャン
2店舗のエステサロンを経て、2016年に「ルミエ・パリ」に入社。技術とサービスにおいて高い評価を受けており、2023年には子育てのため時短勤務という立場ながら、店長の補佐役であるリーダーに抜擢される。
販売したいからおすすめするのではなく、お客さまに必要なものを提案する
――デビューまではスムーズだったとのことですが、では新人時代にはあまり苦労はなかったのでしょうか?
技術面ではあまり問題はなかったのですが、販売のスキルを身につけていくのが、私にはとても難しく感じました。先輩たちからは、こういったお客さまにはこういった提案をするというようなベースになる知識を教えていただいたのですが、お客さまの反応もそれぞれなので、なかなか購入にはつながらないことも多くて、壁に感じていました。ある程度経験を積まないと、お客さまにあった提案方法は身につかないと思いましたね。
入社2年目、3年目くらいのときは、提案をすることに苦手意識があり、精神的な負担になっている時期もありました。
――どのようにしてその壁を乗り越えたのでしょうか?
ひとつには、気持ちの持ち方を変えたことが大きかったと思います。なぜお客さまに提案をするのかを考えたときに、販売したいからおすすめするのではなく、お客さまに必要なことだから提案をするんだと思えるようになったんです。そこからは商品提案に対して、あまり否定的な気持ちにならなくなりましたし、お客さまにとってその商品が必要な理由についてもきちんと説明ができるようになりました。
また先輩の接客をよく見るようにしていて、大切なのはお客さまとの信頼関係だと気付いたんです。商品そのものの魅力や、必要な理由ももちろんありますが、結局は「あなたにおすすめされたから、やってみる」と思ってもらえるかどうかなのだと思います。
――具体的に、お客さまと信頼関係を築くためにやってきたことはありますか?
これは私が個人で考えてきたことではなく、企業理念につながるのですが、「ルミエ・パリ」では「Pleasing(プリージング)」を掲げています。Pleasingとは、心地よい、満足などを意味する言葉で、お客さまにそう感じていただけるように、おもてなしにとても力をいれてきました。
その活動のひとつとしてアフターレターがあり、担当させていただいたお客さまに手書きでお手紙を書いて郵送させていただきます。そのなかには、お客さまとお話しした内容を入れたり、これからこんなお手入れを担当させていただきたいですと思いを綴ったりしています。小さなことかもしれませんが、こういったことの積み重ねで、信頼関係が段々と築かれていくのだと思っています。
手に真心を込めて、施術を行う
――エステティシャンとして心がけてきたことは、どんなことでしょうか?
真心を込めるということです。以前にお客さまから、「人の気持ちというのは、手からすごく伝わるんだよ」と仰っていただいたことがあるのですが、本当にそうだなと実感しています。
以前、何度か担当経験のあるお客さまがお越しになった際、私が考えていたことがお客さまに伝わっていたことがあったんです。ご予約時はマシンを使った効率のよいメニューだったのですが、お身体に触れていくと、今日はリラックスしていただけるようなオールハンドメニューに変更した方がいいなと思ったんです。そうしたらお客さまからも「今日は、オールハンドでお願いしたい」と言われたことがあって。思いは伝わるんだと実感した出来事でした。
最近は私もトレーニングで後輩社員の技術モデルになる機会が多々あるのですが、手の動きだけで、どんなことを考えているのかをなんとなく感じます。お客さまがなりたい姿、目指す姿に近づけるよう、手に思いを込めて施術を行うようにしています。
――ほかにも、心がけてきたことはありますか?
お客さまが求めていることをかならずキャッチしながら、プランニングや提案をしていくことです。とにかく結果を出したい方や、お話しを聞いてほしい方など求めているものはさまざまなので、それを捉えた上での提案がとても大事だと思っています。
――どうすれば、お客さまの求めるものをキャッチできるようになるのでしょうか?
この人に委ねてもいいと思っていただき、心を開いていただくことがとても大事だと思っています。そのためにも初めてお会いした際の第一印象はとても重要ではないかと思うんです。そこで最初にお会いするときには、笑顔と、安心して任せていただけるように振る舞うことを常に心がけています。サービス業の心得について書かれた書籍を読んだりして、お客さまとの関係性が良くなるように、模索を続けています。
エステの仕事が自己肯定感をあげてくれた
――これまでエステ一筋でキャリアを積んできた中田さんだからこそ感じている、エステティシャンの魅力とは?
ひと言で言い表すのは難しいのですが、自分の手でお客さまを変えてさしあげられるという部分が、私にとっては大きな魅力でした。ボディラインや、お顔のたるみやシミなど、お客さまは本当に悩んでいらっしゃって、なかにはもう諦めてしまっている方もいらっしゃいます。そういう方に結果を出して差し上げられると、心から喜んでくださるので、この仕事のやりがいをとても感じます。
とくに女性の場合、家事、育児、仕事、介護と本当に自分を犠牲にしてがんばっていらっしゃる方がとても多くて、その方たちが自分のご褒美としてエステにいらっしゃるので、少しでもお役に立ちたいという気持ちで施術を行っています。技術を磨き続けるのはもちろんですが、美容業界は流行など変化も激しいため、最新の情報をチェックしたり、書籍を読んで学んだりしながら、お客さまに最善のものを提供したいと思っています。
――最後に、これからエステ業界に入ってくる方に、アドバイスをお願いします。
エステというのは、お客さまやスタッフなどいろいろな人に携わる仕事です。私は、人と関わることで得られるものはとても大きいと思います。私はエステティシャンの仕事を始めてから自己肯定感がすごくあがったんです。その理由をお客さまから必要とされるからだと分析しています。
「あなたにお願いしたい」、「ここでケアをしてもらうと違う」、「次に来るのが楽しみ」と、お客さまがかけてくださる言葉の1つひとつが自分の肯定感を上げてくれますし、そういう自分でいられるようにもっと努力をしようと思えるんです。
とてもいい仕事だと思いますので、興味のある方にはぜひ挑戦してみていただきたいです。
中田さんが大切にした新人時代の3つの心構え
1.お客さまが必要としているものを提案する意識で、商品販売の苦手意識を克服
2.小さな積み重ねで、お客さまとの信頼関係を構築
3.お客さまが求めているものを常にキャッチ
言葉の端々から、エステティシャンという仕事が本当に好きだという気持ちがあふれていた中田さん。その気持ちも手を通してお客さまに伝わっており、それが信頼感にもつながっているのだと感じました。これからエステティシャンになりたい方、もっと活躍したい方はぜひ参考にしてみてくださいね。