自分の「したいこと」にフォーカスを当てるサロン 『ここば空間』
美容師としての資格以外にもヨガの国際ライセンスを持つ森下さん。その理由には、場所や国籍に関係なく、自分がしたいことができる場所で実現する、という気持ちがありました。後編の今回は、美容師という枠すらヒラリと飛び越えていく彼女の、「これから」を中心に伺います。
インプットとアウトプットで自分を刷新
――現在はジュエリーの専門学校でヘアメイクの講師もされていますが、ヨガや講師とかなり活動範囲が幅広いですね。
「美容師はトレンドを扱う職業なので、常にインプットとアウトプットをして自分自身をアップデートする必要があると思っています。それは単にトレンドを追うというのではなく、異なる分野の学生から得るものや、講師として教えることで再認識することなども含め、新しい刺激を与え続けないといけないなと。私はもともと海外移住を考えていて、移住先では着物や食事、ヘアなどFrom Japanを海外の方、現地の日本人の方々に総合的に提供して生活ができないかと考えていました。ヨガに関しても移住先でのことを考えて始めてみたのですが、自身がヨガは本当に心身にいいと感じたからこそ、国際ライセンスを取ったんです。何かを始めたいと思っても、すぐには結びつかないこともありますよね。そんな時のために遠回りや関係ないように見えても準備してしまう、そういう性格なんです。ただ、髪の毛のプロフェッショナルとして集中して生きることを決めたことで場所に対するこだわりは消えました。今は場所に関係なく、真の髪の毛のスペシャリストとして生きたい。だからそれが日本でも海外でも、やりたいことができる場所とタイミングがあれば、いつでも店は手放します。」
いつでも動ける、という強さ
――店を手放す覚悟もおありなんですね。一般的に店を持つとそこから店をさらに大きく広げたい願う人が多い中で、あえて捨て去る決意を持つ理由は何でしょう？
「アホな生き方だなあと笑われるかもしれませんが、自分がこうと決めて納得したことしかやりたくない性格なんでしょうか。確かに、軌道に乗っている店を手放すなんて馬鹿げているように見えるかもしれませんが、最初にお答えしたようにいつかは鏡と椅子だけの店を作り、究極まで髪の毛と向き合いたいんです。そのために不要なものはどんどん脱ぎ捨てていく。それが明日か5年後かは分かりませんが、チャンスだと思った時にすぐに動けるよう体勢を整えておきたいですね。1人でこの店をやっているのも、自分だけならいつでも身軽に動けるからという理由が大きいです。また、1人だから採算性をそこまで考えず、使う商品にしても納得できるものだけを使うことができます。これが大所帯だとなかなかそうはいかないですよね。ただ、1人だからこそ常に自分との戦いなので、ここで止まっていてはダメだなとか、現状に満足した時点で終わってしまう気がします。だからこそ、なんで？と思われる選択をしても自分の道を行きたいですね。」
譲れないものを持つ重要性
――常に理想を追い求めそれに向けて着々と準備を積まれていますが、同じように美容師を目指す人に対して伝えたいことは何でしょう？
「これだけは譲れないという大事なものを持つことです。私は美容師になったのは遅かったものの、髪の毛に対する情熱は誰にも負けないと思っています。そこを譲りたくないから頑張り努力できるので、そういう背骨のようなものがある人は良い美容師になると思います。そして、枠組みにとらわれないことも大切。グローバルな現在、活躍の場は日本だけではないし、そのためには語学も学んでおくと役立つのではないでしょうか。一見関係ないよね？と思うことも、結果として無駄になることは何一つありません。私も店を持つ以前は、大型店など計5店舗のヘアサロンでお世話になりました。そこでは自分が納得できないと思うこともありましたが競争する環境や経営について知ることができ、その時は不満に感じたとしても、いざ自分が独立する上で当時の経験が役立っています。」
森下さんが持つ既存の美容師のイメージを大きく覆す考え方や視野の広さは、これからの美容師にとって欠かせない視点ではないでしょうか。お店を持ったらアガリではなく、自分自身をどんどん進化させてゆく。まるで職人のようなヘアデザインとの向き合い方は、究極の美容師像なのかもしれません。
