【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.2/新システム構築で営業もスタッフ教育も効率化する/Garland 真木 遊さん #1
コロナ禍での働き方は、「時短で高パフォーマンス」がキーワード。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、どんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果とは?
今回取材したのは、Garlandでマネージャーを務める真木 遊さん。「コロナ禍では、問題や大変なことも多いけれど、充実したよい時間も生まれました」という真木さんに、美容室のあり方や働き方の変化についてお聞きしました。
お話を伺ったのは…
Garland マネージャー 真木 遊さん
都内2店舗を経て、Garlandオープニングスタッフとして参加。現在は、経営やスタッフ育成のサポートなどにも携わりながら、精力的にサロンワークもこなすトップスタイリストに。顔周りの繊細なカットを得意とし、お客様一人ひとりの個性を光らせるような仕上がりにファン多数。メイクの評判も高く、ファッション誌でのヘアメイクやモデル、タレントからの指名が絶えない。
勤務システムの変化/予約数に合わせて勤務人数を変動、アシスタントの教育は動画アプリの導入で効率アップ
——コロナ禍で、サロンの勤務体制は変わりましたか?
最初は、お客様の予約の数に合わせてスタッフの人数を調整していました。明日の予約が決まったところで、前日にスタッフに勤務があるかどうかをお知らせ。ネット予約は解放していたので、翌朝になってさらに予約が入っていた場合は、当日朝に追加や変更も含めて再度スタッフに知らせる、といった流れ。予約が少ない時は自宅待機になることもありましたが、当日に予約が入る場合もあるので、自宅にいてもいつでも動ける準備をしていました。やはりスタッフの安全面もあるので、必要以上に接触をしないためにも、出勤or自宅待機の調整はしっかりしていましたね。今では徐々に前のように戻ってきていますが、そういう体制ができたことは初めてだったし、かなりの変化だと思います。
サロンの休みは変わっていませんが、営業日は閉店を1時間繰り上げています。平日21時までだったのを20時までに、金土日は21時まで。夜みなさん出歩かなくなったし、早く帰るようにもなりましたよね。在宅勤務の人も増えて、今まで会社帰りに来てくれてたお客様も減ったように感じています。以前は18時、19時の予約が多かったけれど、それが今は比率的に少ないですね。
——働き方として変わったことはありますか?
自粛期間中は、店長やマネージャーなど上のスタッフはお店を再開するためにいろんな準備があったので、ZOOMを使ってミーティングをすることは多々ありました。そこで決まったことを、営業時に各店のスタッフに伝える形です。その流れで、店長会議は今でもZOOMで行っていますが、遠方から来ていたスタッフは移動時間がカットできるのでその辺はメリットになっています。
アシスタントが受けるカリキュラムをすべて動画にしたのもこの時期でした。これまでずっとやろうやろうと言っていたこの動画制作を、今このタイミングだ! ということで一気に実現しました。4月いっぱいお店を閉めていたので、その期間に制作しています。アシスタントの教育は、チェックが1個受かったら新しい項目を教わるという流れなのですが、毎回同じことを教える作業であって、しかも何人にも教えなければならない。それだけ同じ時間が毎回かかっていくわけです。ある程度先に動画で見て頭に入れておけば、実際のレッスンでの理解度がぐんと深まる、それが狙いです。
教える側も教わる側も、効率がよくなることで結果時短にもつながっていると思います。このカリキュラム動画はアプリで見られるように作っていて、閲覧できる最大人数は30人くらいの設定。アシスタントだけが見られるシステムです。カットやパーマなどのコンテンツが各種あり、分かりやすくテロップを入れたりしながら解説しています。基本の技術なのでこれをベースにみんなが同じものを習得していく。多店舗展開になっていくと、教え方や内容にズレが出がちなのでその対策にもなっていくかなと思います。
集客の心得/お客様によって温度差があるのは当然。過剰な集客よりも安心・安全を伝えることを優先
——顧客とのコミュニケーションで注意したことはありますか?
今でこそ状況は戻りつつありますが、自粛期間中はお客様に「来てくださいね」とはなかなか言えなかったのが実情です。人によって考え方も違うから、ほぼ外に出ませんという人もいれば、タイミングを見て足を運んでくださるお客様もいる。そのあたりの温度差がやはりあって、対応は難しいものです。当初はあまりおおっぴらに営業してます! とは言わなかったけれど、サロンのブログやSNSは更新し続けていましたね。過剰な集客は控えつつも、おすすめのスタイルを更新したりして、「いつでもお越しくださいね」という空気感。休業していた時(4月)以外は、常にオープンしているスタンスを保ちながら、お客様の気持ちと判断で来店をおまかせてしていた感じです。
再開の時はこういう風にスタートしていきますよ、こんな感染対策を行っていますといった動画は配信しました。お客様に向ける姿勢として、集客よりもまずそういった安全面。安心して来ていただける環境作りを徹底していました。
時短接客のコツ/密にならないスムーズな施術が肝心! スタッフ人数と空間バランスをしっかり調整
——接客面で時短を意識しているポイントはありますか?
みなさんサロンに来る頻度が少なくなったことで、逆にせっかく来たのだからカットもケアもしっかりやって帰りたい、という人が増えたように感じます。施術自体の時短は結構難しくて、早く終わらせようと一人に対してスタッフ人数が多すぎると密になるし、一人だけで全部やろうとしても時間がかかりすぎる……ある程度のスタッフを確保しつつ、スムーズにやっていくバランス配分が大事だと思います。どちらかと言うと、お客様同士があまりかぶらないよう調整する方に気を配っていますね。うちは2階建てなのですが、1階が全部埋まったら2階に通すのではなく、1階にまだ余裕があっても2階に通す。できるだけ空間を空けるようにしています。コロナ前だったら、外からお客さんがいっぱい見えて賑わっている方がよかったんですけどね。今はある程度の空間と余裕があること、それが安心感につながるようです。
——スタッフの動きやチームプレイで変わったことはありますか?
スタッフの出勤人数を調整していた頃は、少し変動がありましたね。担当するスタイリストの軸はまずあって、付けるアシスタントの人数を調整していました。密にならないようにという配慮はもちろん、アシスタントの稼働率に偏りを出さないためでもあります。例えば、私の予約が集中した場合、私のチームのアシスタントだけ稼働率が上がってしまい、逆に休みが多くなるアシスタントも出てきてしまう。そういったアンバランスが起きないように、時にはいつものチームをバラして、他のスタイリストのサポートに付いてもらうことも。全スタッフの出勤をバランスよくならす感じでコントロールしていました。(今はスタッフ人数を調整しつつ、元の状態に戻りつつあります)。
売り上げはどう変化した?/これまでにない急激なアップダウンを経験。エリアによって差が出ることも判明
——コロナ禍で売り上げの変動が大きかったと思います。
3月は徐々に雲行きがあやしくなってきて、4月に緊急事態宣言が出た後は4月いっぱいお店を閉めていたので売り上げはガクンと落ちました。5月から再開しましたが、お客さんはかなり少なかったですね。外出の制限が緩和されると、6月は急激に忙しくなって繁忙期なみでした。そこでみんなが一気に切りに来ているのでそこからまたダウン。だいたい2〜3か月スパンで来る方が多いので、8月9月くらいにはまた伸びる。そんな流れで波はゆるやかに戻ってきました。みなさんが少しずつ慣れてきたことで、春先のように急激に落ちることはもうないのかなと。ただ夜の制限がもしまたあった場合、遅い時間帯のお客さんはあまり増えないのかな? とも思ってます。
基本的には自分の髪は自分で切れないので、「行かなくてもいい」とならないのが、飲食店との違いかもしれませんね。でも、今までは決まった場所まで切りに行っていたけど、家の近くの美容室で切るようになったという声は結構聞きます。はたまた、地元のサロンに1、2回行ってみたけど、やっぱり元のサロンがいいと戻ってきました、というケースも。Garlandは吉祥寺店があるんですが、そちらは表参道ほど売り上げのアップダウンがなかったと聞きます。地域によってやはり差があるということでしょうね。まさかこういう日が来るとは思わなかったけれど、その時ばかりはみんなが吉祥寺店がんばって、頼む〜! みたいな。店舗がたくさんあって救われたな、と思う瞬間でした。
スタッフの勤務日程やアシスタントの教育など、とにかく調整することが盛りだくさんだったという真木さん。お客様に安心してお店に来てもらえる環境を作るため、努力と挑戦はこれからも続きます。
後編では、そんな真木さんの1日のタイムスケジュールや、今後の動向などについてお伺いします。
▽後編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.2/オンラインとEC活用がこれからのスタンダードに/Garland 真木 遊さん #2>>
取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:mika