美容師が知っておきたい社会保険の基礎知識|在職中・退職時に利用できるものとは?

健康保険や雇用保険・労災・年金など、聞いたことはあっても詳しくは知らない美容師の方も多いのではないでしょうか。社会保険と呼ばれるこれらのシステムを知っておけば、必要なときに最適な支援を受けられます。

今回は、美容師が知っておきたい社会保険の基礎知識を、わかりやすく解説します。在職中に利用できるものについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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そもそも社会保険とは?

そもそも社会保険とは、万が一のリスクに備えるための、公的な保険制度のこと。日本政府が国民の生活リスクに備えて展開する、4つの社会保障制度のひとつです。社会保障制度にはほかに、社会福祉や公的扶助、保険医療と公衆衛生が含まれます。

社会保険は健康保険・年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つで構成されています。しかし実際は、会社員に身近な医療保険・年金保険の2つを指す言葉として、より狭い意味で使われることも少なくありません。

社会保険制度の目的とは?

社会保険制度は、病気やケガ・加齢・介護・失業・労働災害などのリスクに備えるため、展開されています。

これらのリスクは、誰しもに降りかかる可能性があり、多くは突然に訪れます。そんなときに、何の保険もない状態では、やがて生活に困り、最低限の生活水準を維持することもできなくなってしまうでしょう。

社会保険制度はそうした事態を防ぐことを目的としており、原則として対象者全員の加入が義務付けられています。

社会保険制度の仕組みとは?

社会保険制度は「ひとりは万人のために、万人はひとりのために」という、相互扶助の考え方にもとづいて成り立っています。加入者全員で少しずつ費用を負担し、万が一のときはそれをもとにして保障がおこなわれます。

社会保険制度の費用を払っているのは、おもに加入者や加入者を雇っている事業主です。それでもまかないきれない、加入者の負担を軽くしたいなどの場合は、国や地方自治体などが一部費用を支払うこともあります。

社会保険にはどんな種類があるの?

社会保険は社会保障制度の一部、公的な保険制度のことであり、万が一のリスクを互いに支え合って乗り切るために運営されています。

では、美容師に関係する社会保険には、どのようなものがあるのでしょうか?とくに関係が深いものとして、健康保険・年金保険・雇用保険・労災保険の4つをご紹介します。

1.健康保険

健康保険とは、医療費の負担が軽減される制度のことです。毎月一定額以上の支払いが免除されるほか、窓口で支払う医療費も3割の負担で済みます。そのほかにも、長期間働けない場合に支給される傷病手当、出産手当や出産育児一時金なども、健康保険の一部です。

健康保険には社会保険と国民健康保険の2種類があり、日本に住む人は必ずどちらかに加入しなければなりません。美容師の多くは社会保険に加入しており、保険料は加入者である美容師とその雇用主が半分ずつ負担しています。

国民健康保険

健康保険には、社会保険と国民健康保険の2種類があります。社会保険は会社員などの従業員が加入する保険、国民健康保健はそれ以外の自営業者やフリーランスなどが加入する保険です。

社会保険には配偶者や子どもを保険に入れる「扶養」という制度がありますが、国民健康保険にはありません。保険料は市区町村によって異なり、加入者が全額を負担します。

2.雇用保険

雇用保険とは、一時的に働けない、または仕事が見つからない期間に、手当が支給される制度のことです。

失業中の基本手当はもちろん、育児休業中の給付金や指定の教育訓練への補助金なども、雇用保険による保障の一部です。そのほかにも、労働者の福祉推進を目的に、失業の予防や雇用状態の見直し、雇用機会の増大、労働者の能力開発といった事業もおこなわれています。

加入条件を満たす従業員は、必ず雇用保険に加入しなければなりません。保険料は加入者と雇用主の双方で負担します。

3.労災保険

労災保険とは、仕事または通勤が原因のケガや病気に対して、手当が支給される制度のことです。支給により療養中の経済的な負担を軽減し、対象者の社会復帰をうながします。

従業員をひとりでも雇ったら、雇用主はその時点で必ず労災保険に加入しなければなりません。加入義務は、事業規模や職種、働き方に関係なく、パートタイマーやアルバイトを含むすべての従業員に対して発生します。

なお保険料は雇用主の全額負担が原則となっており、従業員側の負担はありません。

4.年金保険

年金保険とは、65歳以降に一定額の老齢年金が支給される制度です。働き手が亡くなったときにその家族に支払われる遺族年金、病気やケガで障害が残ったときに支払われる障害年金も、年金保険による保障の一部です。

年金保険は、国民年金の上に厚生年金がある、2階建ての構成になっています。20歳以上60歳未満の人は国民年金に、70歳以下の従業員はさらに上乗せして厚生年金に、必ず加入しなければなりません。

たとえば、従業員として働く20歳以上60歳未満の美容師は、国民年金と厚生年金の双方に加入する必要があります。

厚生年金

厚生年金とは、会社員や公務員などの従業員が、国民年金に上乗せして加入する年金保険のこと。農林水産・サービス業などを除く従業員5名以上の個人事業所、または法人事業所で働く70歳以下の従業員は、必ず加入しなければなりません。

厚生年金の保険料は収入の18.3%と定められており、加入者と雇用主が半額ずつ負担します。また、年金支給は1カ月以上加入した65歳以上に対しておこなわれ、支給金額は加入期間と保険料に応じて変わります。

国民年金

国民年金とは、20歳以上60歳未満の人が加入する年金保険のこと。該当の年代で日本に住む人は、必ず加入しなければなりません。国民年金の保険料は毎年改定され、加入者が全額を負担します。

また、年金支給は10年以上加入した65歳以上に対しておこなわれ、支給金額は加入期間に応じて変わります。

厚生年金との違いは、保険料や支給条件、支給金額などがあり、とくに国民年金の保険料は収入に関わらず一律であり、支給金額も加入期間にしか左右されません。

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在職中に利用できるものとは?

美容師に関係する社会保険には、健康保険・年金保険・雇用保険・労災保険などがあります。

では、これらの社会保険は、どのように利用できるのでしょうか。在職中に利用できる制度として、傷病手当・出産手当・出産育児一時金・育児休業給付金をご紹介します。

傷病手当

傷病手当は健康保険の保障であり、病気やケガにより会社で働けず、じゅうぶんな収入がえられないときに支給されます。

支給条件は、以下のとおりです。

・健康保険に加入していること
・病気やケガにより療養していること
・業務に由来しない病気やケガであること(業務由来の場合は労災保険になる)
・4日以上連続で休んでいること
・給与が受け取れない、または受け取れても傷病手当より少ないこと

すべてに該当する場合は、4日目の休みから日額換算した給与の3分の2が支給されます。

出産手当

出産手当は健康保険の保障であり、出産のために会社を休み、給与が支払われないときに支給されます。

支給条件は、以下のとおりです。

・1年以上同じ事業主に雇われていること
・社会保険に1年以上連続して加入していること(国民保険は対象外)
・家族の扶養に入っていないこと
・給与が受け取れない、または受け取れても出産手当より少ないこと

すべてに該当する場合は、出産以前42日目から出産翌日以後56日目まで、給与の3分の2が支給されます。

こちらの記事で美容師が育休を取得する方法や注意点を詳しく解説しています。

美容師でも産休はとれる?産休をとるための方法や産休に入る前に何をしておくべきこと

出産育児一時金

出産育児一時金は健康保険の保障であり、加入者またはその扶養家族が出産したときに支給されます。

支給金額は子どもひとり当たり42万円で、双子や三つ子の場合は、子どもの人数分だけ支払われます。

出産後に申請すると、支給まで3~4カ月かかりますが、直接支払制度を利用すれば、医療機関への支払い自体が42万円減額されます。

育児休業給付金

育児休業給付金は雇用保険の保障であり、1歳未満の子どもを育てるため、会社を休んだときに支給されます。

支給条件は、以下のとおりです。

・1歳未満子どもを育てるために育児休業を取得すること
・育児休業の開始前の2年間に、11日以上または80時間以上働いた月が12カ月以上あること
・育児休業中の出勤が月に11日以下または80時間以下であること

すべてに該当する場合は、180日までは給与の67%が、181日以降は給与の50%が支給されます。

こちらの記事で美容室の男性店長が育休を取得した事例を詳しく解説しています。

【子育て応援メソッド】店長自ら男性初の育休をとってみた! Ameri 武蔵小杉店 楠康貴さん #1

介護休業給付

介護休業給付は雇用保険の保障であり、要介護状態の家族を介護するために会社を休んだときに支給されます。

介護の対象となる家族は、事実婚も含む配偶者 ・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫です。対象の家族ひとりにつき3回まで、通算93日まで介護休業が取得でき、その間は月額賃金の67%が受け取れます。詳しくはお近くのハローワークまでお問い合わせください。

社会保険でいざという時に備えよう

社会保険とは、万が一のリスクに備えて全員で助け合う、公的な保険制度のことです。美容師と関わりが深いものには、健康保険・年金保険・雇用保険・労災保険などがあります。

社会保険を活用すれば、万が一の場合に生活が助かるのはもちろん、日々の労働環境をよりよく整えられます。いざというときに備えて、ぜひそれぞれの制度の概要を理解しておきましょう。

引用元
厚生労働省:社会保障とは何か
厚生労働省:雇用保険制度
厚生労働省ハローワークインターネットサービス:雇用保険制度の概要
厚生労働省:労災補償
日本年金機構:知っておきたい年金のはなし
日本年金機構:公的年金制度の種類と加入する制度
日本年金機構:適用事業所と被保険者
日本年金機構:学生のための年金のはなし
厚生労働省:国民健康保険制度
厚生労働省:育児休業給付の内容と支給申請手続
厚生労働省:介護休業とは
厚生労働省ハローワークインターネットサービス:雇用継続給付

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