鍼灸師とは? 仕事内容と資格を取得するメリットを紹介
鍼灸師の仕事にあこがれる人は少なくありません。しかし、鍼灸師とは具体的にどんな職業なのか、正しく理解できているでしょうか。資格や仕事内容について知識を深めると同時に、鍼灸師として働ける職場にはどんな場所があるのかも押さえましょう。
鍼灸師とは?
鍼灸師とは、「はり師」と「きゅう師」両方の国家資格を持つ東洋医学の専門家です。ツボを刺激する「鍼(はり)」とツボを温める「灸(きゅう)」により、自然治癒力を活性化させ、病気の改善や予防、健康回復を目指します。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):はり師・きゅう師 – 職業詳細
そもそも鍼灸とは?|はり・きゅう
東洋医学では身体のエネルギーが通過する道を「経絡(けいらく)」といい、この経絡を経由するエネルギーが溜まる場所を「経穴(けいけつ)」といいます。経穴は、いわゆるツボのことです。
鍼灸ではこの経穴に針や艾(もぐさ)を使って刺激を与え、身体の持つ力を活性化して調子を整える施術を行います。
東洋医学・漢方医学の一分野として生まれた伝統的医療
古代中国医学を起源とする中国や韓国、日本などの伝統医学の総称を東洋医学といいます。東洋医学は、それぞれの国ごとに独自の変遷を遂げているのが特徴です。
中国から飛鳥時代(6世紀はじめ)に仏教とともに日本に伝えられた東洋医学は漢方医学として発展し、明治時代の初期(19世紀後半)までの千年以上の間、日本の医学の主流でした。鍼灸は漢方薬とともに、漢方医学の治療体系を構成しているのです。
鍼灸師の仕事とは?|鍼灸治療
鍼灸師は、鍼や灸を使って身体の不調に対する施術を行います。鍼灸師の行う鍼や灸はどのような施術なのでしょうか。
鍼灸師の仕事内容とは? 活躍の場や目指せる方法を紹介
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):はり師・きゅう師 – 職業詳細
鍼による施術
鍼灸の鍼(はり)による施術では、ごく細いステンレスや銀でできている鍼を使って経穴に刺激を与えます。針の太さは0.3mm以下で、長さは1.5~9cm程度です。ストロー状の鍼管に鍼を入れて、飛び出ている部分を叩き、痛みを感じないほど速やかに施術します。
経穴まで挿入したあとは、鍼を上下に動かしたり、回旋させたり、振動させる方法もあるようです。
灸による施術
灸(きゅう)とは、艾を燃やして経穴に熱刺激を与える施術です。
昔は艾を直接皮膚のうえで燃焼させ、痕を残して化膿させる方法がありました。しかし、最近では、直接皮膚のうえで燃やしても気持ちいい程度の熱さでやめたり、皮膚に直接乗せずに輻射熱で温熱刺激を与えたりする方法をとります。
また、艾や火を使用しない機械式の灸なども使われることがあるようです。
脈診
脈診とは、体のエネルギーの流れやバランスを確認するために脈を診ることです。鍼灸が体に効いているかをチェックするために行われることもあります。
望診
望診とは、皮膚や舌の状態・血色・表情・体つきなどを目でチェックして病状を判断する方法です。目に見える部分から判断するため、現代では「視診」ともいわれます。
美容鍼灸
近年は、美容に特化した「美容鍼灸」という施術も浸透してきました。東洋医学を美容に応用し、シワやたるみなどの改善・小顔・バストアップ・ダイエットなどの効果を目指します。
鍼灸院や美容鍼灸専門のサロンで行われるほか、エステサロンの施術メニューのひとつになっているケースもあり、美意識の高い人々に支持されています。
スポーツ鍼灸
スポーツ選手のメンテナンスに特化した、スポーツ鍼灸も登場しています。アスリートのコンディショニング・パフォーマンスの向上・ケガ予防などに貢献。スポーツや体への深い理解が必要ですが、実業団やプロ選手と契約して働けるケースもあるようです。
鍼灸師の給料はどれくらい?
「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、鍼灸師を含む「その他の保健医療従事者」の企業規模10人以上での月給は30万5,300円です。また、job tagデータによるはり師・きゅう師の年収は443.3万円でした。
経験や勤務先などによって異なるので、目安として考えてください。
引用元
e-Stat:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
e-Stat:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(ダウンロード)
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):はり師・きゅう師 – 職業詳細
e-Stat:日本標準職業分類(平成21[2009]年12月統計基準設定)専門的・技術的職業従事者 その他の保健医療従事者 あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師,柔道整復師
鍼灸師の資格とは? ほかの医療系資格との違いを紹介
つづいては、鍼灸師として働くための資格とはどんなものか、ほかの医療系資格とどう違うのかを解説します。
国家資格|はり師・きゅう師
鍼灸師として仕事をするには資格が必要ですが、鍼灸師という資格があるわけでなく、鍼と灸の資格それぞれを取らなければなりません。国家資格は「はり師」と「きゅう師」にわかれてはいますが、試験は同時に受けることができます。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):はり師・きゅう師 – 職業詳細
国家試験の受験資格とは?
鍼灸師として働くためには、はり師・きゅう師の国家試験を受けて資格を取得しなければなりません。
国家試験を受けるための受験資格は、高校卒業後に厚生労働省または文部科学省が認めた大学や3年以上の専門学校で、鍼灸に関する必要なカリキュラムを履修することです。
ほかの医療系資格とはどこが違うの?
はり師・きゅう師の資格に似ている他の医療系資格との違いを押さえましょう。
柔道整復師との違いとは?
柔道整復師とは、骨や関節などを固定・整復して、筋・腱・じん帯などの損傷に働きかける施術を行う資格。施術内容も異なりますが、鍼灸師との大きな違いは、基本的に道具を使わず手技のみで行う点です。
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柔道整復師になるにはどうすればいいの? 求められるスキルや適正とは?
あん摩マッサージ指圧師との違いとは?
あん摩マッサージ指圧師は、鍼灸師同様東洋医学がベースの資格ですが、施術方法が異なることが特徴です。手を用いてなでる・たたく・もむ・押すといった施術を行い、不調にアプローチします。
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なぜおすすめ? 鍼灸師の資格を取得するメリットとは
鍼灸師として働くためのはり師・きゅう師の資格を取ることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
治療家として活躍できる
鍼灸の施術は体の痛みや不具合を軽くするだけでなく、身体がもともと持っている自然治癒力を引き出したり、体質自体を変えたりしていくことが可能です。経験や技術を積むことで、鍼灸を施した相手の体調がよくなり感謝されること、その人の笑顔を見ることも治療家としての喜びになるでしょう。
働ける場所が多い|介護業界や美容業界など
鍼灸師の働く場所は鍼灸院だけでなく、病院や美容業界にも広がっています。さらに最近では、実務経験を積んだ鍼灸師が機能訓練指導員として介護の現場で活躍するようになり、求人も多くなってきています。
経験を活かして独立開業も可能
はり師・きゅう師の資格を取得すると、鍼灸院を開業することができるようになります。豊富な経験と高い技術を身につければつけるほどリピーターも多くなりますし、経営者として自分自身の考え方で工夫していくこともできますので、モチベーションも上がるでしょう。
鍼灸師が活躍できる場とは?
ここからは、鍼灸師が活躍できる主な職場を見ていきましょう。
鍼灸師の主な就職先を紹介!自分に合った職場を探すには?
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):はり師・きゅう師 – 職業詳細
鍼灸院
もっとも知られているのは、やはり鍼灸院です。顧客の症状に合わせて鍼や灸を使用した施術や脈診、望診などを行います。後述しますが、経験を積んだのちに独立開業する人も多いです。
病院・医療機関
鍼灸師は、医療機関の整形外科・神経科・リハビリテーション科などで働くことも可能です。医師や理学療法士など、ほかの専門職と連携しながら、患者に対して施術を行います。
介護福祉施設
介護福祉施設という選択肢もあります。高齢者などを対象に、体の機能回復などを目指した施術を行うことが主な仕事です。
鍼灸師は機能訓練指導員にもなれる
機能訓練指導員とは、介護施設で利用者のリハビリをサポートする職業です。鍼や灸の技術を持つ鍼灸師は、体の構造などへの知識も持っていることから、機能訓練指導員としても活躍できます。
ただし、鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設などで6カ月以上の実務経験を積むことが必要です。
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機能訓練指導員は鍼灸師もなれる! 鍼灸師に必要な実務経験とは?
美容鍼灸サロン・美容サロンなど
前述したように、鍼灸は美容ジャンルでも需要が出てきており、美容鍼に特化した美容鍼灸サロンや、美容鍼を取り入れている美容サロンなどでの活躍も可能です。美容目的で顔や体のパーツに鍼を施術します。
スポーツ施設・個人契約
スポーツ施設や実業団・プロ選手と契約し、スポーツトレーナーとして働く道もあります。
スポーツトレーナーになること自体には、必須の資格はありません。しかし、はり師やきゅう師の国家資格を持っていれば、鍼灸によって、対象者の疲労回復やケガのサポートなど専門性の高い施術を行えます。
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独立開業
上記のような職場でキャリアを積んだのちに、独立開業するという選択肢も。自分の鍼灸院や美容鍼サロンなどを開き、施術を実施します。それまでに培った経験を活かしつつ、自分の好きな雰囲気やスタイルでサービスを提供できることが特徴です。
自分に合った職場を探すには?
つづいて、鍼灸師が自分に合った職場を探す方法を2つ取り上げます。
就職・転職エージェントを利用する
まずは、就職・転職エージェントを利用する方法。就職・転職エージェントとは、人材が欲しい企業と、仕事を探している人をマッチングさせるサービスです。鍼灸師なら、医療系や美容系など、自分の進みたい方向に強いエージェントを利用してみましょう。
求人サイトで探す
もう一つは、ハローワークのような公共サービスやリジョブのような民間企業が提供する、求人サイトを利用する方法です。たくさんの求人情報が載っており、条件を決めて検索できます。
鍼灸師には、医療系や美容系など、同じく自分の希望分野に強い求人サイトがおすすめです。
鍼灸師の履歴書で押さえておきたいポイントとは?
履歴書の基本的な書き方のポイントには、以下のような点があります。
・シャープペンや消えるペンは使用せず、黒のペンやボールペンで書く
・誤字脱字に気をつけ、見直しをする
・間違いがあった場合は修正ペンなどを使わず書き直す
・略字や略称は使わない
・年を書くときは和暦か西暦かで統一する
・「はり師」の資格と「きゅう師」の資格は別々に書く など
また、履歴書で重視されやすい項目の一つに「志望動機」があります。これまでの経験やキャリアを振り返りつつ、ほかの職場ではなくその職場に勤めたい理由や、入社したあとにどんな貢献ができるか、自分の強みはどんな点なのかなどを存分にアピールしましょう。
鍼灸師の面接で好印象を与えるには?
履歴書のポイントとあわせて、鍼灸師の面接時のポイントも押さえましょう。
・清潔感を意識した身だしなみで臨む(シワや汚れのある服・派手な格好・ひげなどはNG)
・遅刻しない・はきはきしたあいさつや受け答えをする・目を見て話すなどマナーが重要
・前もって聞かれやすい質問を調べ、スムーズに答えられるようにしておく
・逆質問をされた際にたずねる内容を考えておく など
面接では、社会人としてのマナー・人柄・スキルなどを見られるとともに、その職場に合っているかもチェックされています。相手に失礼がないかはもちろん、応募先のイメージも研究してから挑むとよいでしょう。
鍼灸師の活躍できる場所は多い
日本の伝統的医療、鍼や灸を使って身体の不調に対する施術を行う「鍼灸師」として仕事をするには、はり師ときゅう師の国家資格が必要です。いずれの国家試験を受験する場合でも、専門学校で鍼灸に関する必要なカリキュラムを3年以上かけて履修していなければなりません。
また、鍼灸師には幅広い活躍の場があるため、自分に合った職場で腕を磨きましょう。職場探しには、転職満足度98%※の求人サイト「リジョブ」がおすすめです。希望する条件を設定し、ぴったりの求人情報を見つけてみてください。
※転職満足度98%|リジョブ経由で採用された1,242名を対象に実施した満足度自社調査より(実施期間:2023年2月8日〜2023年3月8日)