フリーランス・個人事業主の美容師が加入できる保険とは? 国民健康保険のメリットと注意点

雇われていたときには、意識しなくても加入している健康保険。フリーランスや個人事業主の美容師として独立する際には、「健康保険はどうしよう」と不安になるかもしれません。
フリーランスや個人事業主の美容師が加入できるのは国民健康保険だけなのでしょうか。国民健康保険のメリットと注意点もあわせてご紹介します。

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フリーランス・個人事業主の美容師が加入できる保険とは?


健康保険とは、加入者が毎月保険料を納めることで、医療機関にかかる際に必要な健康保険証を発行し、医療費の大半を負担してくれる共助の制度です。

国民皆保険制度を原則としている日本では、フリーランスや個人事業主の美容師もなんらかの健康保険に加入しなければなりません。美容師が加入できる保険についてご紹介します。

健康保険とはどういうものなの?

健康保険とは、国民が必要な医療を受けるために要する医療費の一部を保障する「公的医療保険制度」です。

都道府県や市区町村、協会けんぽ(全国健康保険協会)、健康保険組合などが医療保険者となり、加入者(被保険者)から保険料を集めます。被保険者が受診の際にかかった費用の一部を、この保険料で賄う仕組みです。

基本的にすべての国民が健康保険に加入しており、現役世代では医療機関に受診した際にかかった費用の7割を負担してもらえます。

加入できる保険を紹介

それまで美容室に勤務していた人は、事業主(サロン)が保険者、従業員はその被保険者となって健康保険へ加入します。

では、美容師として独立開業する場合、健康保険はどうしたらよいのでしょうか。ここでは、フリーランス・個人事業主の美容師が加入できる健康保険についてご紹介します。

1. 国民健康保険

国民健康保険は、企業などの社会保険に加入していない人を対象とした健康保険です。フリーランスや個人事業主、学生や年金受給者などが加入できます。

国民健康保険は、「市町村国保」と「職域国保」に分かれます。市町村国保は、都道府県あるいは市区町村が保険者となる国民健康保険です。一方、職域国保は、地域の同業者が設立した国民健康保険組合が保険者となる国民健康保険です。

保険料は前年の収入で決まり、収入が増えるほど保険料は高額になるのが特徴です。ただし、保険者となっている自治体によって料率が異なるので、住民票のある市区町村のホームページで計算方法を確認することをおすすめします。

なお、国民健康保険は加入者の半数近くが年金所得者を含めた無職者、残りが農林水産業者や個人事業主とその家族などです。そのため、加入者の所得の平均が低く、中間所得層であっても保険料の負担が大きくなりがちです。

2. 社会保険の任意継続

社会保険のある職場を辞めてフリーランス・個人事業主となる場合は、退職後2年間に限り、職場で入っていた健康保険組合(健保)を任意継続することが可能です。

任意継続の条件は、退職日までに2カ月以上その健保に加入していることと、退職日の翌日から20日以内に各都道府県の協会けんぽ、または各健保組合で手続きを行なうことです。

退職前までは雇用主が保険料を半分出してくれていましたが、任意継続の期間は全額自己負担になりますので保険料は原則2倍になります。しかし、国民健康保険の計算方法と異なるため、自治体の科率によっては任意継続のほうが安く済むかもしれません。

3. 美容健康保険組合|東京美容国民健康保険組合

美容室などで働いていて、一定の条件を満たせば、次の理美容健康保険組合に加入できます。

・全日本理美容健康保険組合 全国の美容関連業全般の法人を対象
・東京美容国民健康保険組合 東京都内の事業所で美容の業務に従事している人(フリーランス加入可)
・大阪府整容国民健康保険組合 大阪府の事業所で理美容(ヘアサロン)業務に従事している人

ただし、全日本理美容健康保険組合と、大阪府整容国民健康保険組合は、フリーランスは加入できません。

また、東京美容国民健康保険組合は、東京または周辺の県(神奈川県・千葉県・埼玉県・茨城県・山梨県)に在住していることが条件です。

4. 家族の社会保険の扶養に入る

フリーランス・個人事業主として開業したばかりでまだ収入が少ない期間は、社会保険に加入している家族の「被扶養者(扶養家族)」として、企業などの健康保険に加入する選択肢もあります。

「被扶養者」とは、公的医療保険のような社会保険上で扶養を受ける人のこと。以下の3条件をみたせば、被扶養者として健康保険に加入できます。

・三親等以内の家族
・年収が130万円未満
・年収が被保険者の年収の半分未満

ただし、年収が130万円を超えた場合は、自分で国民健康保険に加入しなければなりません。

国民健康保険のメリットと注意点とは?


フリーランスや個人事業主になった美容師が健康保険に加入する方法には、国民健康保険に加入する、社会保険を任意継続する、社会保険被保険者の扶養に入るなどがありました。このうち、誰もが加入できるのが国民健康保険です。

ここでは、国民健康保険に加入するメリットと注意点についてご紹介します。

国民健康保険のメリットとは?

国民健康保険は、会社などに所属していなくても加入できる健康保険です。社会保険は給与によって保険料が算出されるのに対し、国民健康保険では必要経費や各種控除を差し引いた所得に対して保険料が算出されます。

国民健康保険の保険料には上限がありますので、上限を大幅に上回るほどの高所得になれば所得に占める保険料の負担が軽くなる点がメリットです。

国民健康保険の注意点とは?

国民健康保険は市区町村で運営されているため、加入者の構成や、医療費の状況などによって、保険料率が異なります。保険料は前の年の所得によって決まるため、退職した翌年の年収が退職前の年収を下回った場合は、収入に対する保険料の負担が重くなるでしょう。

また、国民健康保険には「被扶養者」がありません。そのため、家族のなかで国民健康保険に加入している人はそれぞれ保険料がかかります。さらに同一世帯において、市町村国保と職域国保の混在は認められていない点にも注意が必要です。

ほかにも、職域の健康保険組合や協会けんぽでは「傷病手当」や「出産手当金」の給付がありますが、国民健康保険で受けられるのは「出産育児一時金」のみです。

社会保険のメリットと注意点とは?

フリーランスや個人事業主の美容師が加入できる社会保険は限られていますが、独立開業する前まで働いていた職場で社会保険を受けていた場合は、社会保険を任意継続することが可能です。社会保険のメリットと注意点を解説します。

社会保険のメリットとは?

社会保険には協会けんぽと健康保険組合がありますが、在職中は保険料の半分を会社が負担するため、保険料の支払い額を軽減できる点が大きなメリットです。任意継続保険料には上限額がありますので、退職時点での給与によっては保険料が安くなることもあります。

社会保険加入者は、被扶養者は健康保険料が免除される点などもメリットです。扶養家族が多い人にとっては、こちらも大きなメリットになるでしょう。また、被保険者の状況によって、傷病手当や出産手当金の給付を受けられるのもメリットです。

社会保険の注意点とは?

社会保険を退職後も任意継続する場合には、退職後20日以内に、各都道府県の協会けんぽ、または、各健康保険組合で手続きを完了しなければなりません。

さらに、任意継続の加入期間は2年間に限定されている点や、会社が負担していた保険料も自分で負担しなければならない点、任意継続の保険料は2年間変わらない点に注意が必要です。

2年目の収入が退職時の収入を大きく下まわりそうなら、収入によって保険料が決まる国民健康保険のほうが安くなる場合があります。

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国民健康保険に加入するには?


開業したばかりのころは、環境が変わりバタバタしてしまって、「いつの間にか手続きの期限が過ぎていた」ということにもなりかねません。

フリーランスや個人事業主になった美容師が国民健康保険に加入するには、いつまでにどのような手続きが必要なのでしょうか。

ここでは国民健康保険への切り替え手続きの期限と窓口、必要書類などについてご紹介します。

どんな手続きが必要なの? いつまでにすればいいの?

社会保険から国民健康保険へ切り替える際には、退職や任意継続期間終了から14日以内に市区町村の窓口で国民健康保険への加入手続きをおこなわなければなりません。

必要書類を揃えて本人または世帯主が窓口に出向き、必要書類を提出すれば、切り替え手続きは完了です。なお、手続きが遅れた場合でも、遡って未加入期間分の保険料を請求されます。

どんな書類が必要なの?

国民健康保険の加入手続きでは、それ以前に加入していた健康保険の資格喪失日がわかる書類と、本人確認ができる書類を、それぞれひとつ準備します。

資格喪失日がわかる書類
・健康保険資格喪失証明書(社会保険事務所で交付可)
・退職証明書
・雇用保険被保険者離職票

本人確認ができる書類
・マイナンバーカード
・運転免許証
・パスポート
・在留カード

加入手続きの注意点とは

社会保険に加入していた際に被扶養者がいた場合、退職証明書や雇用被保険者離職票では、国民健康保険への切り替え手続きができません。社会保険事務所で、健康保険資格喪失証明書や扶養削除証明書を交付してもらう必要があります。

同居家族のなかで国民健康保険に加入している人がいる場合には、世帯主の保険証やマイナンバーが確認できる書類が必要です。

フリーランス美容師の保険は国民健康保険だけではありません


フリーランスや個人事業主の美容師が加入できる公的医療保険は、国民健康保険だけではありません。社会保険の任意継続や家族の社会保険の被扶養者になる、美容業界の健康保険に加入するなどの方法があります。

すぐには収入がそれほど見込めない場合や、扶養家族がいる場合には、国民健康保険以外の公的医療保険のほうが保険料の負担を減らせる場合があるので、よく比較検討してから決めましょう。

引用元
厚生労働省:国民健康保険制度
神奈川県国民健康保険団体連合会:国民健康保険とは?
日本年金機構:適用事業所と被保険者
全日本理美容健康保険組合
東京美容国民健康保険組合:ライフシーンから選ぶ
大阪府整容国民健康保険組合
日本年金機構:国民健康保険等へ切り替えるときの手続き
江戸川区:【資格】会社を辞めたので、国民健康保険の加入手続きをしたいのですが

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