【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】 技術スピードアップで、時短でも売り上げをキープ!/PearL MATSUさん&CHIEさん #1
コロナ禍で、これまでと同じ働き方が難しくなってきた美容業界。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、他サロンはどんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果は?
今回取材したのは、代官山にあるヘアサロンPearLをご夫婦で経営するMATSUさんとCHIEさん。オープンから7年目、若手のスタイリストデビューが決まるなど、新たなフェーズへと進むタイミングでむかえた新型コロナウイルスの流行…。スタッフ7名を抱える中規模サロンが取り組んだ、コロナ禍でのサロン改革についてお聞きしました。
お話を伺ったのは…
PearL 代表 MATSUさん
アートディレクター CHIEさん
共に美容室antiで15年以上の経験を積み、2014年6月にスタイリスト3名+アシスタント2名でサロンオープン。プライベートでは夫婦。5歳のお子さんがいるため、CHIEさんは時短勤務中。昨年2名のスタイリストがデビュー
MATSUさんのInstagram:@pearl_matsu
CHIEさんのInstagram:@pearl.chie
昨年の様子/サロン全体での自主隔離を経て、約2週間で営業を再開
―昨年、新型コロナウイルスが流行し始めた時期の、サロンの様子はいかがでしたか?
MATSUさん:最初に影響を感じたのは3月頭ですね。社員旅行を予定していたんですが、お客様の医療従事者の方々が「今はステイだね」って。それで旅行は断念しました。
その時点では、お客様のご来店状況に変化はなかったんですが、旅行中止を決めてすぐに、右肩下がりになりましたね。
CHIEさん:4月に入ってすぐ、営業時間の短縮と、スタッフの出勤日数を減らす対応を取りました。でもすぐに緊急事態宣言が出て…。
まずは4月7日から15日までの営業自粛を決め、その後情勢を見て22日まで自粛期間を延長し、23日から営業を再開しました。若手2名のスタイリストデビューが決まっていたので、とても残念でした。
―大手サロンさんは1カ月から1カ月半クローズしていましたよね。
MATSUさん:国がどういうジャッジをするか、近郊サロンの動きや大手サロンの対応などをみて、PearLではどういう対応をするか考えました。宣言が出たらクローズすることは決めていましたが、どのタイミングで再開するかは、世間の空気感を読んで決めないといけないなと。どれだけ休んでも、誰も守ってくれませんから。
まずは、自分たちで約3週間、誰とも会わない状況を作りました。当時、2週間何もなければ大丈夫と言われていたので、そこがクリアできたらサロンワークを再開する、という指標を作ったんです。
1カ月クローズしてしまうと、お店の流れが変わってしまいます。僕としては、約2週間の休みは、いいジャッジだったなと思います。それでも4月の損害は、かなり大きかったです。実質稼働したのが12日。サロンオープンの2016年6月も実働12日間でしたが、その時の売り上げの半分以下。これはまずいぞと思いましたね。
勤務システムの変化/子供の登園自粛中は交代制。必然的に予約数は半分に
―お二人はお子さんがいらっしゃいますが、保育園の休園などの影響はありましたか?
CHIEさん:保育園は、3月から登園の自粛が始まりました。美容師は来ちゃダメとは言われていませんでしたが、やっぱり医療従事者の方たちが優先だなっていうのは見ていてわかりましたし、いろいろ考えて私たちも協力しよう、と休園することにしたんです。
―3月ですと、まだサロンは開いていましたよね。お子さんはどうしていたんですか?
CHIEさん:二人で交代しながら、自宅でみることにしました。11時から15時までは私がサロンに出てMATSUさんが家、15時以降は交代して…というかたちで。4時間の中で密を防ぎ制限しているので、1日4・5人に限られ、かなり影響が大きかったですね。休園は、6月頭まで続きました。
―ほかにも勤務体制の変化はありましたか?
MATSUさん:営業時間は、5月から20時にはクローズするように変更しました。あとは、うちの規模だと出勤時間をシフト制にするというのは難しいので、それぞれの休みを増やしましたね。
CHIEさん:密にならないようにと、当初はスタッフの出勤人数を最低限にしたり、1席空けて座っていただいたりもしていました。保育園休園中、私たちが交代でサロンワークをしていた時は、それも可能だったんですが、二人一緒にサロンに立つとなかなか難しくて…。
MATSUさん:緊急事態宣言明けの6月は、かなりお客様がいらっしゃいました。サロンを開けていれば、お客様は来てくださる。でも、ここで完全にコロナ前に戻すことはできないよな、と。そこで、お客様の滞在時間を極力短くする方向に、シフトしていきました。
接客の工夫/技術スピードのアップで、密を防ぎつつ回転率を上げる
―お客様の滞在時間を短くする、というと?
MATSUさん:もう「売り上げを伸ばそう」という意識は捨てて、7月からは積極的に予約の段階でご来店数を調整するようにしたんです。よくて1年前の8割くらいのイメージで。
もともと30分に1名間隔で予約を取っていたのを、1時間1名に減らし、施術メニューも2つまでに限定しました。おひとりの滞在時間を2時間におさめる。そうすれば、席の稼働率が低くなり、密も回避できます。
―対策は取りつつ、最低限の売り上げを上げていく…。なるほど。
CHIEさん:本当は、「頻繁に外出できないから一度にいろんなメニューをしたい」という方も多くいました。でも、滞在時間を短くするためにということで、頭を下げてお許しいただいて…。
メニューごとに担当を変えて、対応させていただくこともありました。カットは私、カラーはRISAとか。そうやって、1時間に1名という枠が全部埋まるように予約は調整しつつ、実際に施術に入る際は、少しでも手が空いているスタイリストが、全員で対応するようになりました。その方が、スピードが上がりますから。
MATSUさん:これは徹底していますね。スタッフには、「誰の指名であろうと、すべてのお客様がPearL全員のお客様」という認識を持つように、口を酸っぱくして伝えてきました。アシスタント含め、みんな同じように動く。そして、僕含め、スタイリスト全員には、技術スピードのアップというのをお願いしています。
CHIEさん:本当に、みんなずっと動いていますね。そういう意味では、コロナ前より連携が高まったな、とも思います。
MATSUさん:そういう営業スタイルになってから、お給料も増やしました。営業がギュッと凝縮されて、体感として忙しくなっている。それなのに給料が少なくなるのは、やっぱりおかしいじゃないですか。少しでも還元してあげたいな、と。
お店としての売り上げは落ちているんですけど、ここで増やすのがPearLだよねってことで、泣く泣く(笑)。
売り上げはどう変わった?/予約数調整期間は、例年の8割程度。予約枠を戻すタイミングの見極めが重要
―昨年は、売り上げの変動が大きかったと思います。
MATSUさん:実は、昨年の2月の売り上げが、過去最高くらいよかったんです。そこからの急降下だったので、かなり落ち込みましたね。7月以降は予約数を調整していたので、一昨年の7・8割が続きました。お店としては、厳しい状況でしたね。今年の3月から通常の予約枠に戻しましたが、昨年の3月よりは少なめ。でも4月は一昨年と同じくらいまで戻りました。
PearLのお客様は、長年の顧客という方が多く、1・2カ月に1回定期的にいらしていたお客様の来店周期が伸びたので、どうしても売り上げは落ちましたね。
でも、そういう方々は、PearLを想ってくださる気持ちから、「自分が感染していたら」と、サロンにいらっしゃらないんですよね。お店を守っていただいているなと感じるところが、すごくありました。
CHIEさん:そういうお客様たちに、安心してご来店いただけるようにと、さまざまな対策を取ってきました。結果、ご来店の際には「PearLはちゃんと対策をしていて安心する」と言っていただけて、マスクやアルコールを差し入れてくださる方もいて…。愛を感じる1年でしたね。
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2020年2月時点では売り上げも上々、4月にはスタイリストがデビューと、さらなる飛躍を感じていた中での新型コロナウイルスの流行。営業自粛から数カ月は、PearLとしての対応を模索する日々だったというMATSUさんとCHIEさん。
昨年は、お客様の安全を第一に考えた営業スタイルを続けてきました。その結果、顧客が離れることなく、通常営業に戻すとすぐに売り上げも回復したんですね。
後編では、そんなお二人の一日のタイムスケジュールや、コロナ禍で新たに導入したこと、今後目指す働き方についてお伺いします。
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【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】 コロナ禍で見えた「休みたいときに休めるサロン」へシフトする道筋/PearL MATSUさん&CHIEさん #2>>
取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥