20年愛され続ける「かかりつけサロン」に【エステサロン La Marna主宰 斉藤万奈さん】#1
美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方へ成功している先輩オーナーの経験談を全2回でお届けする本企画。
今回お話を伺ったのは、二子玉川で20年経営を続けているエステサロン「La Marna(ラマーナ)」の斉藤万奈さんです。証券会社で秘書として働いていた斉藤さんは、アロマセラピーのおもしろさに惹かれ、ジュリークショップ青山に入社しました。
前編では、斉藤さんのこれまでの道のりや開業当初の苦労についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
エステサロン「La Marna」主宰 斉藤万奈さん
証券会社で役員秘書として10年間勤務。退職後、ニールズヤードレメディーズのスクールにて英国IFAアロマセラピスト取得。ジュリークショップ青山のPR、スーパーバイザー、新宿伊勢丹BPQCジュリークショップ店長を経て、2002年にエステサロン「ラマーナ」をオープン。2014年より女性ライフクリニック新宿にてメノポーズカウンセリングを担当。
「女性だって活躍したい」退職後に見つけた美容の道
――美容の道に入る以前は、証券会社で役員秘書をしていたそうですね。
10年勤められた会社を退職された理由は?
当時の証券会社は、女性がずっと働ける環境ではなかったんです。ほとんどが結婚して辞めていき、長く勤めている女性の先輩たちは社内で大きなことはできない。そういう話を聞くなかで、自分の力で一生続けられる仕事がしたいと思って、退職することにしました。
――その後、美容に携わろうと思ったきっかけは?
きっかけは、たまたま知ったアロマセラピーでした。友人と買い物に行ったときにアロマセラピーに出会い、1冊の本を買ったんです。それを読んだら、すごく面白くて。アロマが持つ働きやエピソードに惹かれ、自分もやってみたいと思うようになりました。
そのタイミングで、それまでイギリスに行かないと取れなかったアロマセラピストの資格が、日本で取得できるようになったんです。ちゃんと試験があって論文や面接もあって…。ただの「お稽古」ではなく、きちんと学んで仕事にできる。これなら一生の仕事にできそうだと思い、ニールズヤードのスクール第一期生としてアロマセラピーを学び始めました。
――その後、ジュリークショップ青山に入られたんですね。
アロマを学び始めたころ、ジュリークショップ青山がオープンしました。履歴書を持って面接に行ったけど、もう求人の募集は終わったタイミングで…。でもすぐに、「オフィスの仕事をしてくれないか」と連絡をいただいたんです。だから最初はアロマセラピストとして入ったわけではないんですよね。
――施術の経験はどうやって積まれたんですか?
ジュリークショップ入社当初は、ニールズヤードのスクールで学んでいるだけ。それでもスクール終了までの1年半ほどは、月4日は実習で技術を学び、休日は自宅に人を呼んで課題をこなしていました。
その後、伊勢丹のBPQCにジュリークショップが入ることになり、店長になりました。施術に入るようになったのは、そのころからですね。
だから独立前までの施術経験は、豊富とは言えません。でもジュリーク内の研修で、スタッフの技術チェックやモデルをしょっちゅうしていたので、「こうしたら気持ちいいな」とか「これはダメだな」という感覚がわかるようになりました。同じ手技のはずなのに、人によって手の感じや気の入り方など、全然ちがう。それが一番勉強になったと思います。
「自分だったらこんなサロンにしたい」という気持ちが大きくなり独立へ
――では独立の経緯を教えてください。
アロマセラピーを一生の仕事にしたいと思って始めたので、将来的に自分で施術をしたいという気持ちはありました。また、ひとつのブランドのなかにいることで、「私だったらこういうサロンがいいな」とか「もうちょっとこうしたいな」という気持ちが、自分の中ではっきりしてきたんです。
そんな私の考えを聞いてくださった身近な方々のお力があって独立することができました。それが、36歳のときでした。
――開業に向けて動き出したのは?
実際に動き出したのは退職後ですが、サロンを開きたい場所や扱いたい商材というのは、退職前から頭の中にありました。
サロンを作るにあたって、自分がどんなサロンにしたいかという具体的なイメージを持っていないと、すぐに動けないですよね。だから仕事をしながら、サロンのコンセプトや運営のイメージというものは、すごく具体的に考えていました。
会社にいる間は忙しくて全然動けなかったので、退職してから物件探しなどを始め、2カ月半でオープンしました。そのスピード感で開業できたのは、イメージが固まっていたからだと思います。
――オープンから20年、ずっと二子玉川で営業されています。二子玉川にした理由は?
それまでは青山や新宿に勤めていたので、お仕事帰りやお買い物帰りの方が多かったんです。そうなると、施術が終わってから電車に乗ったりするから、もう一度お化粧をして髪を整えないといけないし、外出着にオイルがつかないか心配になったりしますよね。
そんな様子を見ていて「自分でサロンを作るなら、家の近くにあって朝起きぬけでもいいから行けて、そのまますっぴんで帰れる…そんな『かかりつけサロン』にしたいな」と考えるようになりました。
そのコンセプトに、二子玉川はぴったりでした。住宅街で、自然もあって…当時は今みたいに大きな商業施設がたくさんある駅ではありませんでしたが、たまに遊びに来ると雰囲気がすごく良くて「なんかいいなぁ」って。「ここなら地域に密着した、かかりつけサロンができそう」と思ったんです。
――独立したてのころ、不安はありましたか?
新宿から二子玉川に活動場所が変わったので、私を指名してくださっていたお客様にいらしていただくことは難しく、最初は集客面での不安がとても大きかったです。それに、いろいろな仕事をさせていただきましたが、施術者としての経験は2~3年程でしたから、それも少し不安の種になっていました。
ですからいろいろな集客方法を試しました。PRの仕事をしていたので少しメディアとのつながりもあり、3誌くらいサロン情報を掲載していただいたり。当時あった近くのネイルサロンに、お客さんを紹介してもらったり。でも結局、ポスティングやチラシ配りが、一番効果がありましたね。
オープンから3カ月後には反響が出てきて、コンセプトどおり地域の方が来てくれるようになったんです。
アロマとエステを融合したメニューで「かかりつけサロン」に
――「かかりつけサロン」というコンセプトでスタートして20年、リピーターの方が多いのかなと思います。顧客にする秘訣は?
リピーターは多いですね、オープン当初から通ってくださっている方もたくさんいらっしゃいます。私が一番大切にしているのは、悩みの原因を一緒に考えることです。会話をするなかで、その方も気づいていないことを聞き出す。そうして気づきを与えられると、「ここに来て話をしたら原因が追究できて改善できる」と感じていただけます。そんな深い話ができる大切な場所になれたら、という気持ちは常に持っています。
だけど仲良くし過ぎないことも大切。お客様ではなく友だちになってしまうと、逆に変な遠慮が出てきてしまいますから。
――オープンから今でも変わらず大切にしていることはありますか?
大切にしているのは、サロンの柱をどこに作るかということ。オープン当初は「ビューティ&リラクゼーション ラマーナ」という名前で、エステの「ビューティ」とアロマの「リラクゼーション」という2本柱でやろうと決めていました。
「アロマセラピーでやっていこう」と決めていたのでアロマはベースにありつつ、もっとエステティックの美容らしいこともしたいと思っていました。女性にとって一番テンションが上がるのは、施術後に鏡をみて「こんなにキレイになった!」という瞬間だと思います。それにはアロマだけでは足りないなと感じて。だからアロマとエステをちゃんと融合させたメニューを作りたかったんですよね。
お店を続けていくうえで大切なこと3か条を教えてください。
1.サロンの具体的なイメージを持つ
2.常にサロンの柱を確認していく
3.いろんなことを点にしない
まずは、どんなことをしたいのか、具体的に思い描けているかどうか。開業はお金がかかることなので、どこを節約してどこにお金をかけるのかまで、しっかり自分の中で決めておくことが大切だと思います。
それを軸に、サロンにとっての柱を考えます。例えば私はアロマセラピーが軸にあるんですが、アロマサロンだけでは絶対に無理だと思っていました。それはジュリークでの経験で、物を売らないと経営が安定しないと知っていたから。だからエステという美容の柱をちゃんと作ったんです。
サロンの柱は入れ替わりがあってOK。だけど、その柱に沿ったメニュー作りや商品選びが必要で、柱が変わればターゲットも変わるということを意識しないといけません。そういう風にいろんなことを点にせず、つなげて考えていくことが大切だと思います。
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「一生の仕事を見つけたい」という気持ちだけで証券会社を飛び出した斉藤さん。アロマセラピーと出会ってから独立までの5年のスピード感に驚かされました。
「やろうと思ったら、いろんなことがワーッと決まっていきました。そういうタイミングだったんでしょうね」と言う斉藤さんは、それから20年同じ場所でお仕事を続けています。
次回後編では、20年の間のサロンの柱の変化と、独立を目指す人へのアドバイスをお聞きします。
取材・文:山本二季
撮影:高嶋佳代