業界の前例や慣習にとらわれない、「自由」を持たせた革新的な内部体制とは【Bee dandy オーナー 松井祐太さん】#2

メンズ専門サロン「Bee dandy」のオーナー・松井祐太さんは、自他ともに認めるハッピーメーカーです。松井さんがつくり出すダンディなスタイルと愛嬌たっぷりの人柄で、お客様のみならず、その周りの人たちをもハッピーにさせてきました。男性、ときにパートナーを連れた女性といった松井ファンのお客様たちが日々新橋の店舗を訪れます。

後編では、松井さん流のファンづくりのコツと、自由を持たせた経営方針について伺いました。美容業界の慣習にとらわれないスタイルは必見です。

教えてくれたのは…
「Bee dandy」オーナー 松井祐太さん

地元・福岡県のサロンで数年間勤務した後、30歳で関東に進出。神奈川県のメンズサロンで店長を経験し、2021年に「Bee dandy」を開業。どんな男性もカッコ良いスタイルに導くセンスと技術力のみならず、愛嬌たっぷりの人柄にもファンが多数。

お客様の信用を得てから、自信を持って提案する。それでついてきてくれるのがファン

「シャンプーが下手だったら美容師じゃない」と断言する松井さん。オートシャンプーを導入していても、松井さんのお客様の多くはハンドシャンプーを選ぶのだそう

――松井さんは「ファンづくり」を大事にしていますが、ファンをつくるコツはありますか?

美容師は変幻自在であること。

僕が新人だった頃に上司に言われたのが、「彼氏にも、彼女にも、旦那にも、妻にもなれる自分でありなさい」ということ。要は、美容師はお客様に合わせて変幻自在でなくてはいけないということです。美容にあまり詳しくない方にはなるべくわかりやすく説明しますし、美容に詳しい方にはより専門的な説明をします。

「Bee dandy」のお客様には経営者や弁護士、税理士の方から就活の学生さんまで様々な方がいらっしゃいます。お客様の雰囲気を見て、その方に合う接客スタイルを考えること。自分が良いと思ったものを提供しがちですが、相手に合わることの方がもっと大事なのではないでしょうか。

――ファンづくりの最初の一歩は「合わせる」ことからなんですね。

だと僕は思います。お客様の本音を引き出して、引き出して…。そうして相手に合わせた接客をしていれば自ずとお客様に信用していただけると思うんです

お客様の信用を得てから、自分の自信をぶつけてみる方が良いですね。そのときに「こうした方が良いと思いますよ」ではなく、「こうしたらカッコ良いですよ」と言い切るのがポイントです。それでついてきてくれるのがファンなんじゃないかなと。

美容業界の労働条件を一般企業に近づけたい

「美容師の組織離れは『自由がない』ことも理由の一つなんじゃないかな。休みたいなら『休みたい』と言ってくれたら良いし、言いにくい環境を僕はつくりたくない」(松井さん)

――スタッフさんにとって働きやすい環境にするためにどんなことを意識していますか?

僕がこのサロンの長ではあるけれど、全てにおいて僕が一番やらなければいけないと思っています。まずは、掃除ですね

――掃除ですか!

経営者のお客様に学んだことですが、成功している人たちはみんな掃除をしています。スタッフに「掃除しとけ」と言うのって嫌なんですよ。自分がやっていればスタッフもついて来るんじゃないかなと。

――言葉ではなく背中でということですね。勤務時間はどのようなシステムですか?

勤務時間は基本的に実質9時間で、何時から何時まで働くかは各々の自由。ですが、うちの場合は予約が集中するのは夕方以降なので、13時〜22時の勤務スタイルが多いですね。残業をするかしないかは本人に任せています。残業の有無は毎回聞きますが、あくまで確認です。「働いてくれ」とは言いません。

あと、美容師は土日に休めないことが多いですが、申し訳なさそうに「土日に休みたい」と申し出るのはストレスじゃないですか。だから、うちでは月1で日曜定休を導入しています。

休憩時間もきっちり1時間取ってもらっています

――1時間きっちり休憩を取れる美容室は珍しい気が…。

僕、お腹が空くとイライラしちゃうので(笑)。最高のパフォーマンスを提供するためにも自分がきっちり休憩してリフレッシュしたいってのもあるんですよね。

どこで休憩時間を取るかは事前にスタッフに聞きます。外にご飯を食べに行っても全然OK。新橋には飲食店がいっぱいありますから(笑)。

美容業界は1時間もきっちり取れないし、お客様がいらっしゃったら休憩中であろうと対応しなければいけない。おにぎり一個だけ流し込んで終わり、ということもザラ。一般企業では当たり前のことが、美容業界では許されないことがたくさんあります。そこに風穴を開けたいと思ったんです

――美容業界の「当たり前」を廃止しようとしているんですね。

業界の慣習にとらわれずに、中でも労働条件は一般企業に近づけたいんです。

サロンオリジナル商品も展開

――給与面で特徴的なのが「指名料は100%還元」。どういう意図があるのでしょう?

お客様を自分のファンにする努力を惜しまないでほしいから。指名が全て自分の対価になるのなら頑張りますし、お客様への対応も変わってくると思うんです。スタッフも嬉しいし、お客様も嬉しい。Win-Winじゃないですか。

これまでの経験で、指名料の半分がサロンに持っていかれることを嬉しく思えなかったので、自分がサロンを立ち上げたらスタッフの指名料は100%還元すると決めていたんです。指名料もスタッフそれぞれで自由に設定しても良いかなとも思っています。

――スタッフ教育の面では、何か松井さんのこだわりはありますか?

基本的には自由ですね。接客も技術も個性を発揮しながら精進していけば良いと思っています。けれど、共有部分はしっかりすること。例えば、シャンプー台は次に使う人のことを考えてきれいにするとか、みんなが気持ち良く働ける行動は心がけてほしいですね。

――どちらかというと人間性の教育ですね。

なんだかんだ人間性が良ければOKだと思うんです。例え何か失敗することがあっても、人間性が良ければ「次、頑張れよ」と許してもらえたり、逆に励ましてもらえたりすることってありますよね。そういう人間性や関係性づくりは大事だと思うんです。

――今後、どんなサロンを展開していきたいですか?

目標は10年以内に福岡と東京にそれぞれ5店舗ずつ展開すること。時代のニーズに合ったサロンを10店舗つくりたいと思っています。美容室だけれど、「髪を整える」以外の何かもできるサロンをつくっていきたいですね。今で言うなら脱毛とか。

内部体制としては、スタッフがコソコソしなくて済む会社にしていきたい。彼らがもし独立したいと言うのなら、僕も何か手伝えることがあるかもしれない。自由にやらせることができ、「何でも相談して」というスタンスの会社にしていきたいですね

――最後に、どんな仲間と一緒に働きたいですか?

楽しく仕事をしたい人ですね。「勉強したいから」「技術を高めたいから」「稼ぎたいから」というのも大事ですが、それより、「楽しいから」がベースになっている方が長く続くと思うんです。勉強も技術も稼ぐことも、まずは楽しんでからじゃないですか。楽しく仕事ができる人が集まれば強いと思うんですよね。

松井さん流!「自由に働ける」サロンにするために必要なこと

1.まずはオーナー自身が動く。前例や慣習にとらわれない

2.休憩時間はきちんとリフレッシュしてもらう

3.スタッフの「個性」と「楽しい」を尊重し、人間性を育てる

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI

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Salon Data

Bee dandy
住所:東京都港区新橋5-8-3 代市ビル B1F
電話:03-6452-9078
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