「むちゃぶりに答え続けるたびに、プロとして成長できる」ネイリスト RENTANさんのキャリアアップ術
サロン経営、講師、ジェルネイルメーカーのディレクションインストラクターとして大活躍中の「SWALLON NAIL」オーナーネイリスト、RENTANさん。前編では、色彩学を取り入れることでお客さまに自信を持って色の提案をできるようになったことや、時短につながったこと、さらには目につきやすい看板で集客もできていることを伺いました。
後編では、RENTANさん流のキャリアアップ術について伺います。精力的に活動するRENTANさんですが、数々のお仕事のきっかけを伺っていると出てきたのは「自分としては、積極的にやりたいと思っていたわけではないんですけど」という言葉。一見、消極的に聞こえる言葉ですが、その根底にあったのは「プロとして食べていくなら人から求められるものを見極め、磨いていくことが大切」という思いでした。
強みを教えてくれた友人のむちゃぶり、自ら手をあげて積極的に行動するきかっけとなったサロンスタッフの存在、そしてネイリストとしての道を歩ませてくれたお子さんとのエピソードを聞きながら、その核心に迫ります。
今回、お話を聞いたのは…
RENTANさん
サロン勤務を経て、2014年埼玉県戸田市にネイルサロンをオープンし、現在はスタッフ4名を抱える。サロン経営のかたわら、ネイル業界No.1シェアを誇るジェルネイルメーカーPREGEL(プリジェル)と専属契約を結び、ディレクションインストラクターを務めている。また色彩検定を1級まで取得したのち、文部科学省後援の公的資格である「A・F・T色彩検定協会」認定講師を取得。ネイリストに必要な色彩学の知識と、実践を組み合わせたネイル色彩学を考案。2021年6月からは「RENTAN教授と色彩の不思議〜ネイル色彩基礎学」を開講中。
友人からのむちゃぶりで痛ネイルが売りに!
求められているものに答えていけば道は開ける
————RENTANさんのインスタグラムは、痛ネイルの投稿が印象的ですが、ご自身の売りにしようと考えてやり始めたんですか?
自分としては売りにしようと思ったことはなくて、お客さまに売りにしていただいたという感じですね。正直に言うと、今でもできればやりたくないのが本音です(笑)。
痛ネイルはその方の推しキャラクターを描くことが多いので、納得できるような完成度になるかは本当に緊張します。さらに線を引くときなどは息を止めて描いてますし、1本描くのに50分から90分くらいかかるので、すごく疲れるんです(笑)。
元々のきっかけは自宅サロンをやっていたころに、友達にむちゃぶりされたことでした。初めて描いた痛ネイルは丸1日がかりで何とか仕上げるといった感じでしたが、求められて描いているうちにだんだんと完成度とスピードがあがっていったこともあり、むちゃぶりが自分を成長させる一番のきっかけになるんだなと思っています。その友人がいなければ痛ネイルに飛び込むことはなかったと思いますし、そのおかげで自分の認知度もあがったわけなので、その友人にはとても感謝していますね(笑)。
————求められていることが、売りになるということですね。
はい。痛ネイルだけでなく、さまざまな場面でそう感じることがありました。お客さまに求められたときに「できない」と立ち止まってしまうのではなく、たとえ自信がなくても「うまくできないかもしれないですが」と伝えたうえでやってみる勇気がときには必要ですね。接客業はなんでもそうだと思いますが、ネイリストもお客さまに育てていただく存在なのだと思います。
そして求められたことを磨いていく、これがプロとして成功するための確実な道なのかなと。私はジェルネイルメーカーに所属をさせてもらっているので、デザインを考えるときも求められているのは、その商材をいかに魅力的に見せるかということだと思うんです。自分の好きなものだけを作っていくのではなく、相手が欲しいものをくみ取る力が必要だと思っています。
————ネイリストの方のなかには、まだそのようなきっかけがなく、自分の強みを見つけられないという方もいると思いますが、そういうときはどうすればいいでしょうか?
強みがわからないのなら、お客さまに聞いてみるのが一番ですね。直球で「なぜほかのネイリストではなく、私を指名してくれているんですか?」と聞けば、きっと教えてくれると思います。接客なのか、技術なのか、スピードなのか? 具体的なところまで聞いてみて、多くのお客さまが同じことを言うのであればあとはそこを磨いていき、自分の売りだと発信していくことです。発信することでさらに、自分の売りを定着させることができます。
認知度アップに必要なのは積極的に手をあげる行動力
————セミナー講師やジェルネイルメーカーとの専属契約などご活躍ですが、そのような活動をするには認知度をあげる必要もありますよね。何かやっていたことはありますか?
やってみたいことを見つけたら、とにかく手をあげていくことが大切だと思います。ネイリストの場合は、ネイル問屋さん主催のセミナーが盛んなので、よく足を運んでいましたし、仲良くなったネイル問屋さんのイベントの手伝いに行くこともあり、そこからセミナーに登壇する機会が増えていきました。ジェルネイルメーカーのPREGELと契約できたのも、元々は問屋さんからとてもがんばっているメーカーさんだと教えてもらい、自分もそれを盛り上げるために一役買いたいと思って、コンテストに応募していたことがきっかけでつながりができました。
————積極的な行動をするのが苦手な方は、どうしたらいいでしょうか?
私も元々は引っ込み思案な性格でした。この性格を変えた1つ目の転機はサロン開業。ひょんなことからサロンをオープンすることになりましたが、場所を借りて人を雇うということは責任を負うということで、自分が動かないと店も人も守れない。そんな状況に置かれたからです。2つ目の大きな転機となったのは、中国のジェルネイルメーカーと契約したこと。半年間、月のうちの20日を中国で過ごす生活を送り現地の方と触れ合ったことです。中国は人口が多いので、どんなに技術があっても存在を知ってもらわないと埋もれてしまうことがあり、中国人の方は自己アピールがすごく上手なんですね。日本人に不足した積極性に感銘を受け、自分が行動しなければ何も始まらないんだと思うようになりました。
私の場合、自分の認知度をあげたいというよりも、サロンスタッフの採用に困っていたため、認知度アップはさけては通れないと思っていたことも、積極的な行動を起こさせた理由の1つでした。自分やお店を知ってもらわない限り、うちで働きたいと思ってはもらえないだろうと考えていたんです。自信がなくても積極的に手をあげるしかない状況で、だんだんと行動力が身についていきましたね。無理やり自分を一歩先のステージに立たせてみるのが、自分を成長させる鍵だと思いますよ。
————それでスタッフの方の採用は、うまくいくようになりましたか?
現在4名スタッフがいますが、講師やメディア活動などをきっかけにインスタのフォロワーが増え、インスタから応募をいただけるようになりました。とはいえスタッフの育成面では、まだまだ自分の課題を感じています。私がなかなかスタッフとの時間をちゃんととれていない現状がありますし、もっとうまく教えられるようになりたいと考えていますね。
実はオンライン講座を開いた大きな理由の1つは、スタッフの育成をきちんとしたいという思いでした。女性が主な業界なので子育てしながら働く方も多く、なかなかみんなが集まって練習ができません。一人一人に教える時間もないですし、動画ならみんなが空いた時間に見れる! と思ったんです。配信してたくさんの方に見てもらうことで、サロンの売上も保て、お店も守れます。いろいろと活動はしていますがサロン運営が私の柱であり、一緒に支えてくれているスタッフが安心して働ける環境をもっとちゃんと整えていきたいですね。
行動力の源は子どもたちの存在。
ハグと目を見るコミュニケーションを大切に
————多方面でお忙しくされていますが、心が折れそうになることはありませんか?
大きなモチベーションになっているのは、子どもたちの存在ですね。私はシングルマザーで、ネイリストになったきっかけも子どもたちを食べさせないといけないという思いでした。最初は子どもたちとの時間も大切にしたいと思い、自宅でネイルサロンを開いていたんです。でもそれではお小遣い程度しか稼げず、これではだめだと思ってそこからがむしゃらにやってきました。
————家族を大切にされているんですね。
苦い経験を1つしていまして…。私が中国のジェルメーカーと契約し、月の半分以上日本を離れていた時期に、家族間がボロボロになってしまったんです。もちろん中国では貴重な経験をさせていただき、感謝しかないのですが、どんなに自分の仕事がうまくいっていても、子どもたちのために働いているわけですから、そこが壊れてしまったら本末転倒だと思います。相変わらずあまり時間はとれないのですが、量より質のコミュニケーションをとるようにしていますね。
————量より質…具体的にはどのように?
一緒に過ごす時間が少ない分、言葉ではっきり「愛してる」と伝えたり、ハグをしたりしています。お兄ちゃんはもう中3なんですが、まだ嫌がる感じはなく(笑)。あとは忙しいときこそ、朝の5分間、ほかのことをせずに目を見て話すことを大切にしました。私はわりと完璧主義者なところがあってご飯は全部手作りじゃないといけない! とか毎日30品目、栄養バランスを考えて! とか忙しいなかでそれをこなす努力をしてきましたが、今は考え方が変わりました。そんな努力をして時間に追われて、毎日子ども達に怒りながら食事をとらせるより、総菜や弁当でもいいから、心に余裕をもってニコニコしながら子ども達と一緒にご飯を食べるほうが大切だろうと。もちろん栄養バランスも大事ですけどね!
今でも子ども達に寂しい思いをさせているときもありますが、一緒に過ごせるときは、思いっきりベタベタするようにしています。「大好きだよ」と言葉に出して伝えながら。
プロとして活躍するためのキャリアアップ術
RENTANさんがプロとして活躍するために実践してきたキャリアアップ術を伺うと、以下の3つでした。
1. 無茶ぶりをされたら、自分の成長のきっかけととらえ、勇気を持って挑戦する
2.人に求められているものを磨きあげて、売りにする
3. 自分がやりたいことには、積極的に手をあげてアピールする
徹底的に相手の求めているものを見極め、提供することでネイリストとして活躍し続けているRENTANさん。その原動力となっているのは、お子さんたちやスタッフへの愛でした。プロとして活躍していきたい方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
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