夢を追いかけ続けたら、家事をこなせる子どもたちに成長! 訪問美容師 山田紀子さん #2
訪問美容師として介護施設や病院、個人宅で施術をしている山田紀子さん。前編では妊娠・出産を機に美容師の仕事を中断したものの、10年後に念願だった訪問美容師としてキャリアを再スタートしたお話を伺いました。
後編では、忙しい毎日の中で家事と仕事をどのように乗り切っているのか、家族の協力をどうやって勝ち得たのか、クスッと笑えるエピソードを交えてご紹介します。
お話を伺ったのは…
訪問美容師
山田紀子さん
高校卒業後、いったん社会人を経験。どうしても美容師になる夢を諦めきれず横浜市立横浜商業高等学校別科に進学し直し美容師免許を取得。卒業後、ヘアサロンに就職し、4年後にスタイリストデビューを果たす。25歳でパートナーと知り合い、結婚。妊娠が分かり、いったん仕事をお休みするはずが、ブランクは10年という長期間に。10年前に美容師として復帰し、8年前から介護施設や病院、個人宅を訪れて施術をする訪問美容 Greenのケアスタイリストとして復職。
3年前のケンカをきっかけに家事は夫と子どもたちも分担
――一日のタイムスケジュールを教えてください。
――朝がとても早いですね。
家族の人数が多いので、洗濯をして干すまでが大変! かなり時間がかかります。洗濯機を3回は回しますね。帰宅してから、洗濯物を取り込んで畳むのもひと仕事。最近は娘も手伝ってくれるようになりました。
――男の子が2人だと朝ご飯の支度もお弁当を作るのも大変ですよね。
朝ご飯はお米を炊いて、味噌汁を作っておくと、食べたい人が食べたいものを勝手に食べていきます。お弁当に関しては、息子たちには高校に上がるとき、「お弁当を自分で作るか、1か月分のお弁当代の中でやりくりするか」を選ばせました。長男は「自分で作る」と言ったので、冷凍食品やちょっとした食材を用意するようにしています。次男は「お弁当代でやりくりする」方を選んだので、毎食、買っているようですね。
――作らない宣言ですね。何かきっかけがあったのですか?
今から3年ほど前、夫とケンカをしたのがきっかけです。いつものように大量の洗濯をしていたら出かける時間になってしまい、夫の分だけ干せなかったんです。帰宅してから干そうと思って洗濯機から取り出したら、生乾きのイヤな臭いがして。それを夫が「おまえがもっと早起きしないからだ」とか、文句を言い始めたんです。
このとき、私の中で何かが切れたのでしょう。「なぜ私ばかり」と考えたら、切なくなってプチ家出をして家事の一切を放棄しました(笑)。それ以来、夫に関しては洗濯も弁当作りも何もしないことに決め、今に至っています。これからの世の中、男子でも家事ができなければ生きていけないですよね。子どもたちにも、自分たちのことは自分でするように言い渡しました。
――たしか、パートナーは家事いっさいできなかったのでは?
何もできない人で、洗濯機の使い方も知りませんでした。子どもたちに聞いて使い方をマスターしたようです。お弁当も私が炊いておいたご飯や味噌汁を食べたい分だけ弁当箱に詰めて、持って行っていますね。
――家事の負担が減って、だいぶラクになりましたね。もう仲直りはしましたか?
まだなんです(笑)。向こうが謝ってきたら、許してあげようと思っていますが。私一人では仕事をしながら家事を完璧にできません。やはり夫の理解が必要ですよね。ここ2~3年で夫も理解を示してくれて、少しずつですが家事をやってくれるようになりました。
ストレスが溜まったら体を動かすか、一人カラオケで発散!
――山田さんがストレスを感じるのはどんなときですか?
夫に八つ当たりされるときですね(笑)。サロンに勤めていたときは人間関係に悩まされることが多々ありましたが、今は仕事でストレスを感じることはほとんどありません。
――ストレスはどうやって発散していますか?
すぐに発散したいときはカップ麺やカロリーの高いジャンクなものを食べますね。時間があれば一人でカラオケに行ったり、大好きなマンガを読んだり。週1~2回のペースでテニスを習っているのも、ちょうどいい発散になっています。
――お子さんたちとの時間は、どうしていますか?
息子たちは部活やアルバイトがあって、一緒に過ごす時間はあまりありませんが、娘とはよく買い物に行きます。
――パートナーとの時間はいかがですか?
二人っきりでどこかへ出かけることはないですね。夫はソフトボールチームに所属していたり、フットサルのチームのメンバーだったり、お互いに別の趣味があるので。それぞれが楽しめればいいと思っています。
月に一度は必ず家族みんなで外食をすることにしています。家での食事とはまた違って、絆が深まったり、子どもの成長が垣間見られたりして、いいものですね。
――これからどんな家族でありたいですか?
それぞれがきちんと自立して、家族に何かあったときには助け合い、相談し合える関係でありたいですね。今も私が忙しくてバタバタしていると、それとなく気遣ってくれてます。子どもたちは、私の大変さを分かってくれるようになったのがうれしいですね。
――お子さんたちには、どんな大人になってほしいですか?
自分の言動に責任を持ってほしいですね。それから、他人を思いやる気持ちと感謝の気持ちを忘れないでほしいです。
山田さん流! 仕事と家庭のバランスを取る3つのポイント
1. 家事に完璧を目指さない。あえて手を抜く
2. 自分のことは自分でできるように仕向ける
3. ストレスはため込まず、すぐに発散する
ケンカがきっかけとは言え、いいタイミングでパートナーとお子さんたちに家事の分担を任せることができた山田さん。お子さんたちにとっても、身をもって家事を学ぶことができてよかったのではないでしょうか。
「夫が謝ってくれれば、お弁当も作るし洗濯もする」という言葉に、山田さんの可愛らしさと愛情の深さを感じました。この愛情の深さが、介護施設や病院のお年寄りたちを笑顔にしているのでしょう。