シニア特化の新人美容師! そんな人が増えたら、シニアスタイルがもっと新しい感性でおしゃれになるんじゃないかな。えがお美容室♯2 ディレクター テルイタカヒロさん編

シニアに特化した「えがお美容室」のヘアスタイルをつくってきたのが、ディレクターのテルイタカヒロさん。シニアの経験が多いわけではなかったテルイさんは、「えがお写真館」のヘアメイクさんがつくるスタイルを、シニアの方がどうやったら自宅で再現しやすいかを考えつつ、若者のヘアスタイルや外国人のシニアスタイルなどいいと思うものをパズルのように組み合わせて、「えがお美容室」のスタイルを作り上げてきたそうです。

「シニアの方は、お医者さんに病気を診てもらうのと同じような感覚で髪の悩みを解決したいと美容室に来店します」とテルイさん。テルイさんは、シニア層の悩みをしっかりと聞き、悩み解決のためのバリエーションをたくさん用意することで、シニア層の絶大なる信頼を得てきました。また、新しいシニアスタイルの創造にも余念がなく、「新人美容師が、シニアの新しいヘアスタイルを作り出したら、斬新なシニアスタイルが生まれるのでは?」ともおっしゃいます。

お話を伺ったのは…
えがお美容室
ディレクター テルイタカヒロさん


30代半ばで「えがお」代表の太田さんと出会い、シニア特化の「えがお美容室」をスタート。グレイヘアのヘアカラーとパーマを得意とし、シニアのお客様から絶大な信頼を得ている。著書に『髪型を変えれば若返る! シニアビューティヘア 』(講談社)がある。

シニア予備軍や若い層に「褒められる」スタイルを目指して

「『えがお美容室』に移った大きな理由は、新しいシニアスタイルをつくっていきたいと思い立ったことです」(テルイさん)

――テルイさんが、えがお美容室で働くようになったきっかけを教えていただけますか?

以前は、若いお客様が多いお店に勤務し、流行の髪型をつくっていましたが、30代に入り自分のスタイルを模索する中で、「すでに流行っているヘアスタイルを追い求めて、真似をしていることが多い。自分じゃなくてもつくれるよね」という気持ちがだんだん強くなってきたんですね。そのタイミングで、たまたま代表の太田と知り合い、シニア特化の美容室をやりたいという話に賛同しました。それから、とんとん拍子に話が進み、2018年「えがお美容室」が始動しました。

――それまではシニアの経験が豊富だったというわけではなかったのですか?

はい。前のお店では9割が若い層だったので、シニアスタイルってどういうもの? というところからスタートしました。「えがお写真館」のヘアメイクさんがつくるスタイルを、シニアの方が自宅で再現するにはどうしたらいいのか? ヘアメイクさんがつくるスタイルをヒントに、カット・カラー・パーマのやり方を考えていきました。その他、若者のヘアスタイルや外国人のシニアスタイルなどいいなと思うものを深堀りして、それをパズルのように組み合わせていき、「えがお美容室」のスタイルが完成しました。

――「えがお美容室」のスタイルの特徴を教えてください。

僕がいつも思っているのは、まわりから褒められるスタイルです。40~50代のシニア予備軍には「将来ああいうふうにしたい」、若い子からは「ああいうおばあちゃんになりたい」と思ってもらえるようなスタイルを目指しています。

――ホームページやシニア雑誌の監修企画からも、その雰囲気が伝わってきます。

ありがとうございます。見えない部分ではありますが、お客様に「悩みが解決された」という満足感をもっていただけるようにということも常に考えています。

グレイヘアへの移行期間も素敵なカラーを楽しめるプラン

「シニア特化のため、他店とはシニアの施術経験が圧倒的に違います」(テルイさん)

――えがお美容室=グレイヘアのイメージがありますが?

グレイへアブームのときに、グレイヘアに移行するカラーだけでなく、シニアの髪の悩みを解決するカットやパーマなどいろいろなことを提案していたんですが、雑誌に発表したスタイルが注目されたことで、「えがお美容室」=グレイヘアのイメージが定着したんだと思います。

――グレイヘアのメニューで、他店との違いを教えてください。

最初の段階で、グレイヘアへの移行プランをつくったことは大きな特徴だと思います。オープン当初、幅広く髪の悩みを解決したい方が多かったんですが、グレイヘアにしたいというお客様もいらっしゃいました。まだ白髪ぼかしという名前などがなかったので、白髪を育てるために、毛先をいかに根元に近づけるようにコントロールするかが大事でした。そこで、移行プランをつくったんです。移行プランは、白髪の伸び具合やカラー、どれくらい切れるかで個人差がありますが、1年~1年半くらいが目安になります。その間、根元は染めずに、毛先の白髪染めだった部分を根本に近づけていくカラーを楽しみながら、根元の白髪部分をどんどん育てていく。移行期間も素敵なヘアカラーで過ごしましょうというプランです。

――移行プランが終了すると、カラーを卒業ということになるのですか?

卒業する方もいますし、いざ全体が白髪になってみると、華やかさがなくてちょっとつまらないなという人もいらっしゃるんです。そこで、白髪を活かしたカラーの出番! 部分的なハイライトや、白髪だからこそ映えるカラーがあるので、グレイヘアを経て、次のカラーを楽しむ方も多いですね。

シニアの方は、お医者さんに病気を診てもらうのと同じような感覚で美容室に来店する

「えがお美容室」の95%がシニア女性。あとの5%は、ご紹介の娘さんやご主人だそう。

――シニアを担当する上で留意されていることはありますか?

若い世代の方は、おしゃれを楽しみたい、こんなカラーにしたいと憧れを持って来店されますが、シニアの方は、髪がぺちゃんこ、白髪をどうにかしたいなど悩みを解決したい方が多いんです。ある意味、お医者さんに病気を診てもらうのと同じような感覚で来店される方が多いので、その症状をしっかりと聞くことを心がけています

――お医者さんに病気を診てもらうのと同じような感覚とは、目から鱗ですね。

「えがお」の出版物をお持ちになって、なりたいイメージが明確な方もいらっしゃるんですが、シニア世代になると、なりたいイメージと実際の髪質とのギャップが大きくなる傾向があります。そのため、髪に触らせてもらって、その素材の中でできることとできないことをきちんとお話するようにしています。

お客様が希望する施術方法は難しいけど、分け目をなくすとこんなふうに見えるとか、お悩みを解決するためのいろんなバリエーションを用意して、丁寧に説明します。そうすると、「じゃあおまかせします」と言ってもらえることが多いですね。

――シニアの方とコミュニケーションをとるのは大変だったりしますか?

意外に、息子みたいにかわいがっていただけることが多いですよ。シニアの方だから気を遣うということはとくにないですね。シニア特化と知って来店されるお客様がほとんどなので、どちらかというと世間話より、髪がいつ頃からこうなってきたかとか、過去のスタイルなど、髪の話をすることが多いです。それが信頼に繋がっていると思います。

「新しいシニアスタイルをつくるために大事なのは、それまでのスタイルに固執しないこと」(テルイさん)。

――シニアスタイルは今後どうなっていきますか?

白髪ぼかしが流行ったり、シニア特化のメディアが増えたり、シニアの注目度は高くなっていますが、まだまだ課題はあると思います。先日、グレイヘアのコミュニティに入っているお客様が、「東京や大阪にはグレイヘアが多いけど、地方ではみんな染めてる」とおっしゃっていました。白髪は老けて見えるという風潮が、全国的にはまだまだあるんですよね。これは、美容師側に問題があるんじゃないかと思います。美容師が、シニア世代のデザインをもっともっと広げていかないといけないと思うんですね。そのために、現在のお客様の悩みを解決して、最大限素敵にするのはもちろんですが、シニア雑誌や業界誌などで美容師さんに向けて発信していければと思っています。

――テルイさんが新しいスタイルを提案するとしたら、なにをヒントにしますか?

僕はいま、悩みを解決するところから入っていますが、デザインから入ってもいいのかなと思っているんです。シニア世代のファッションは、花柄のコンサバなおばあちゃんから、カジュアルな雰囲気に変わってきていますよね。ファッションからイメージを膨らませて、そこにインナーカラーのような若い層がやっているスタイルも取り入れながら、且つ悩みを解決できるデザインを提案できたらいいですね。

――デザインから入るシニアスタイル、なんだかワクワクしますね!

凝り固まった年齢より、20~30代のほうが絶対的に感度が高いはず。これから美容師になろうとしている方は、どうしても若い層から入っていく傾向にあると思いますが、はじめからシニア世代からスタートしてもいいですよね。そいう美容師さんが増えると、シニアスタイルがもっと新しい感覚でおしゃれになるんじゃないかな

テルイさんがシニアから絶大な信頼を得ている理由は

1.シニアの悩みをしっかりと聞く。

2.悩み解決のためのバリエーションをたくさん用意する。

3.新しいシニアスタイルの開発に余念がない。

若い層の流行のスタイルを作ることは、結局は流行っているヘアスタイルを作っている誰かの真似をしているだけなのでは…。今後どんなスタイリストを目指すか悩んでいた時期に、シニア特化の「えがお美容室」に出会ったテルイさん。「はじめから、シニア特化の新人美容師もいいのかも」とテルイさんがおっしゃるように、シニア特化には、とんでもなく新しいものが潜んでいるのでは…という気がしてなりません!

撮影/山田真由美
取材・文/永瀬紀子

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Salon Data

えがお美容室
住所:東京都豊島区巣鴨3-20-14山下ビル2F
電話:03-5980-7522
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