トレンドを創る人 Vol.10 air・木村直人さん “人と人とをつなぐ力”#2
『トレンドを創る人』10人目は、日本で今おそらく一番、美容業界以外にも名をはせる美容師、air(エアー)執行役員ディレクター木村直人さんです。
個人で運営する「naotokimura.tokyo」は年間閲覧者数1000万人越え。ネット上の会員制コミュニケーションサロン「マルチバース」は会員数が500人を超えるという人気っぷり。まさにネット時代のカリスマ美容師ともいうべき木村さんの、マルチな活躍のほんの一角をお伝えします。
美容師だけで終わらない美容師になる
――ブレンドフェスでお会いしたとき「美容師はやりきった」とおっしゃっていましたよね。
「その通りです。この10年間、たんたんと仕事をやってきて、徐々に段階が上がって、ある程度評価してもらえるようになって。でも振り返ると仕事しかしていなくて(苦笑)
美容師としてはもう十分やりきったから、これからは充実した時間を過ごしたいと感じました。
自分の人生を自分の生きたいように生きる。僕自身がそういう時期に入っているということです。美容師としてこれ以上の欲はないんですよね。むしろ今の体制で(執行役員で、オンラインサロンやメディアの編集長をしながら)ほかの事業もやりたいし、上場できそうなくらいの会社を起業したいねと社長の岩田(卓郎氏)とも話しています。
もともとairという会社の考え方が“美容師で終わらない美容師になる”でしたから、そこで終わりたくない、それだけじゃないという思いでいろんな可能性を模索してきました。その1つがネットでのコミュニケーションであり、オンラインサロンやウェブメディアであり、入社してから今まで10年かかって、そうした美容以外の目標を具体的に実践しているのが僕であると。そう認識しています」
“アクティビスト”として自分ができること
「木村さんって何なんですか?とよく聞かれるんですけど、自分では“アクティビスト”-駆動させる人、歯車になる人、組み合わせて回す人―だと答えているんですね。いろんな能力のある人の間を取り持って駆動させるというイメージです。
『スロウジャーナル』で編集長をやっているのも、僕以外に書く人がいて、それを運営している人がいて、ここの間を取り持って、主に僕が記事をチェックして公開する。駆動させて円滑にやることで、あのメディアが月間約100万PVとかフツーにあるわけで、
そういう美容師を超えるような活動がもっとできればいいなと。例えば社長の岩田が考えていることを僕が吸い取って、何かに落とし込んだり、能力と能力のある人をアサインして(任命して)組み合わせ、稼働させるとか、つねに考えています。
今、実際に商品をつくっているんですが、その部分の組み合わせやすり合わせをすることが会社にとって必要なのかなと。今後はこうしたことをやりながら自分のしたいこともできたらいいなと思っています」
多様性を認めて、切り替えるとき
――どうしたら木村さんみたいに達観できるんでしょう?
「いろんな人と会ってきたからこういう考えになったんだと思います。今は直接、会わなくてもネットでも十分知り合えますけど(笑)経営本とかビジネス本は読まないですが、堀江貴文さん(ホリエモン)の『多動力』にあるみたいに、今は1人の人がいろんな肩書きを持っていていいし、実際にいろんなことをやれる時代になってきているわけで、それをきちんと認めて、メリット・デメリットを見極めていけばいいと。
修業時代は僕自身も目標に向かってガツガツしていたけど、段々といろんなことがわかってくると、“うまいの正解ってナンなんだ?”とか、いろんなことを問うようになって。以前はカット技術が上がらないとお客さんがこないと思っていましたが、今はカットがうまいからってそれだけではお客さんは取れないですよね。
技術に対しての正解論がすでに崩れ始めている今、何が正解って、お客さんが来ることが正解であって、うまくカットできるのが正解ではないわけです。
今後は今以上に働き方の多様性や柔軟性が美容界でもどんどん求められてくるだろうし、中には僕みたいにフルタイムで働かないという男性美容師が出てくるかもしれません。
これまではフリーになるのか独立するのかという選択肢しかなかったけど、これからは多様性を認めてあげないと、人は去るしかないですからね。どこで切り替えるか。結局は自分次第ですが、経営者など下の人を巻き込む可能性がある人は、どっかでちゃんと考えないといけないタイミングかもしれないですよね。まあ僕が言うことではないですが(笑)」
取材・文/山岸敦子
撮影/内田龍
取材協力/株式会社ビューティーエクスペリエンス
『THROW journal(スロウジャーナル)』http://throw-web.com/journal
Salon Data
air(エアー)
都内11店舗を展開するトータルビューティサロン。
タレントやモデルからの支持も多く様々な雑誌やコレクションをも手がけている。
木村さんは現在、銀座と青山の店舗を行き来し、サロンワークを行う傍ら、スタッフ教育や多角的な事業展開も視野に入れて活動中。
http://www.air.st/
『オンラインサロン マルチバース』
https://synapse.am/contents/monthly/multiverse
トレンドを創る人 Vol.10 air・木村直人さん “時代(とき)を読むチカラ”#1>>