業務委託の美容師がいなくなる?!インボイス制度による収入への影響や緩和措置を徹底解説

面貸しやシェアサロンなどの仕組みも広く知られるようになり、フリーランスとして働く美容師も増えています。フリーランス美容師の働き方のひとつである業務委託ですが、2023年10月からはじまるインボイス制度によって、減るのではないかと心配している方もいるかもしれません。

本記事では、業務委託で働く美容師のメリットとデメリットにくわえ、インボイス制度の影響について詳しく解説していきます。業務委託として働いている、業務委託契約を考えている美容師の方は、是非参考にしてみてください。

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どこが違うの? 美容師の業務委託契約と雇用契約

美容師の業務委託契約と雇用契約には、どのような違いがあるのでしょうか。ここではそれぞれの契約内容と異なる点について解説していきます。

業務委託の美容師とは|個人事業主

業務委託契約と雇用契約のもっとも大きな違いは、雇用契約の場合、そのお店の社員として雇用されるのに対し、業務委託契約ではサロンという事業主と美容師という個人事業主の事業者同士の契約になるという点です。

それでは、業務委託の美容師の場合、どんなメリットとデメリットがあるのかを見ていきましょう。

美容師にとっての業務委託に関するメリット

業務委託では、美容室に支払う費用以外のすべての売上が自分のものになります。売上が上がれば上がるだけ収入も増えるため、努力や頑張りが目に見えてわかるのがメリットです。

さらに、契約の内容次第で働き方を自由に設定できます。そのため、毎日8時間以上、必ず美容室にいなければならないという縛りがなくなり、副業として掛け持ちすることも可能です。

たとえば、雇用契約の美容師は、掃除やタオルの洗濯、閉店後に見習い美容師の指導をおこなうこともサロン業務に含まれていますが、業務委託契約の場合はこれらの業務が契約内容に盛り込まれていなければ、おこなう必要はありません。

また、契約時間外の残業をする必要がない、自分以外のお客様の対応をする必要がない場合もあるため、契約によっては業務内容がかなりシンプルになると考えてよいでしょう。

美容師にとっての業務委託に関するデメリット

業務委託の場合、雇用契約の美容師とは異なる扱いとなりますので、契約内容によってはサロンの機材や備品を使えない可能性もあります。売上から経費として備品代などの出費が必要となる点に注意が必要です。

また、自由である反面、労働基準法が適用されないため、長時間労働や業務・通勤中の事故やケガなどの保障がありません。売上管理や確定申告などの事務作業も一人でこなさなければならないため、大変だと感じることもあるでしょう。

業務委託の美容師がいなくなる?インボイス制度とは

2023年10月からはじまるインボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といい、請求書に登録番号や適用税率、消費税額などを記載しなければならないものです。

これまで免税事業者として、消費税の納税を免除されていた小規模事業者や個人事業主の優遇措置がなくなるため、収入が減る可能性があります。そのため「業務委託の美容師がいなくなるのでは?」とささやかれているのです。

適格請求書(インボイス)に必要なことは?

適格請求書(インボイス)には、これまで請求書に記載していた内容にくわえ、以下の項目を記載する必要があります。

・軽減税率の対象品目
・税率ごとに合計した対価の額
・税率ごとの消費税額と適用税率
・適格請求書発行事業者の登録番号

適格請求書(インボイス)を発行できない事業者と取引をする場合、美容室側が消費税分を負担しなければなりません。そのため、課税事業者として登録していない事業者との取引を避ける美容室が出てくるのではと懸念されており、これまで免税事業者だった業務委託の美容師も、課税事業者にならざるを得ないというのが実情です。

引用元
インボイス制度の概要|国税庁

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インボイス制度による業務委託の美容師への影響は?

インボイス制度がはじまることで、これまで消費税の納税を免除されていた事業者にどんな影響があるのでしょうか。年間収入が1,000万円以下の個人事業主の美容師の場合、特にこの制度の影響があると考えられます。

業務委託の美容師への影響について、ケースごとに詳しく見ていきましょう。

引用元
インボイス制度の概要|国税庁

美容室からインボイスの発行を求められた場合

業務委託契約を結んでいる美容室から、インボイスの発行を求められた場合に考えられるケースは、以下の3つのパターンです。

1. 報酬の割合はそのまま

まずは、美容室から支払われる報酬の割合が変わらないケースです。インボイス登録事業者として登録し、適格請求書を発行すると、納税する消費税の分だけ収入が減ることになります。

2. 報酬の割合を上げてもらえる

つぎに、美容室側が報酬の割合を上げてくれる、または消費税分を上乗せで支払ってくれるケースです。インボイス登録事業者として登録して適格請求書を発行しても、大きく収入が減る心配はないと考えられます。

3. 美容師が適格請求書の発行を拒否

美容室側から適格請求書の発行を求められても、当然それを拒否することはできます。その際、消費税分を差し引いた金額を請求するように求められたり、一方的に契約を解除された場合、これらのことは、下請法や独占禁⽌法などで禁止されています。

しかし、美容室にとっては、免税事業者と契約することにメリットを感じない、トラブルになるのを避けたいというのが本音でしょう。インボイスに登録している美容師と業務委託契約を結びたいと考える美容室が出てくることも考えられます。

引用元
厚生労働省:インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え⽅

美容室からインボイスの発行を求められず、報酬の割合も変わらない場合

インボイス制度がはじまっても、美容室からインボイスの発行を求められず、報酬の割合も変わらないケースもあるでしょう。その場合は、収入も変わることなく、これまでと同じように働くことができます。

2023年10月以降の緩和措置とは?

インボイスの登録をしてもしなくても、なんらかの影響があると考えられる業務委託の美容師にとっては頭の痛い問題です。美容師に限らず、これまで免税事業者だった方にとって、大きな負担となることが懸念されています。そこで、売上がそこまで大きくない小規模事業者や個人事業主への負担を軽減するために、緩和措置がとられることになりました。

業務委託の美容師に関係のある、緩和措置について紹介します。

2026年9月30日まで|8割控除

2023年10月1日から3年間は、消費税の納税額を売上税額の2割に軽減できるという「2割特例」が適用できます。以下の条件を満たしていれば、確定申告書にその旨を記載するだけでよく、事前の申請などは不要です。

・基準期間(個⼈︓前々年、法⼈︓前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下
・資本金1,000万円以上の新設法人ではない
・調整対象固定資産や⾼額特定資産を取得して仕⼊税額控除をおこなっていない
・課税期間を1カ月または3カ月に短縮する特例の適用を受けていない

引用元
インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答|財務省
インボイス制度の改正案に関する資料|財務省

2029年9月30日まで|1万円未満の取引でインボイス不要

2023年の10月1日から6年間、1万円未満の取引については、インボイスなしでも、仕入税額控除が可能です。この適用を受けられるのは、2年間の課税売上が1億円以下、または1年前の1~6月(法人の場合は上半期)の課税売上が5,000万円以下の事業者で、全事業者のうち90.7%が対象になるとされています。

引用元
インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答|財務省
インボイス制度の改正案に関する資料|財務省

持続化補助金に一律50万円が加算される

小規模事業者や個人事業主を対象に、販路拡大の支援をおこなうことを主目的とした「小規模事業者持続化補助金」の上乗せも決定されています。免税事業者からインボイス登録で課税事業者に転換した事業者に、一律50万円加算して補助金が支給されるものです。

広告費や展示会出展費用などに利用できるものなので、この機会に是非活用するといいでしょう。

引用元
「小規模事業者持続化補助金」が拡充されます|経済産業省 中小企業庁
インボイスの登録で補助金が50万円上乗せ?|財務省

登録申請手続きの柔軟化

登録申請の手続きも緩和されています。当初、令和5年3月31日までに登録しなければ、10月1日の制度施行から適用を受けることはできないとされていました。これが、4月以降の登録でも適用が受けられるようになっただけでなく、申請が遅れた際に記載が必要だった「申請が困難な事情」が不要に。

さらに、実際の登録が10月以降となった場合でも、課税期間の初日または登録希望日に登録を受けたものとみなすと変更されました。

引用元
インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答|財務省
インボイス制度の改正案に関する資料|財務省

契約書は忘れずに作ろう!

業務委託契約では、一般的に契約書を交わしてから業務に入ります。しかし、サロンによっては、口頭の打ち合わせのみで業務契約をするところもあるようです。きちんと契約書を交わしていないと、トラブルが発生した際に解決が難しくなる可能性があるので、必ず契約書を作成してください。

契約書には、業務委託契約を交わすうえで必要なことを必ず盛り込みます。サロン側と美容師側で抑えておきたい内容は異なりますが、美容師側が必ず入れておきたいのは、大きく分けて「報酬などお金に関すること」、「勤務時間に関すること」、「業務に関すること」の3つです。

特にインボイス制度が開始されると、請求業務も煩雑になることが予想されます。報酬の割合や備品の使用についての取り決めなども含めて、お互いが納得することが大切です。

契約書のひな形はサロン側が持っている場合も多いですが、インターネットからダウンロードもできます。作成した契約書は、可能であれば弁護士に目を通してもらい、双方が納得したうえで契約を交わすようにしましょう。

インボイス登録申請はまだ間に合う!美容室としっかり話し合い、ベストな働き方を見つけよう

業務委託契約と雇用契約の大きな違いとして、「働き方を選べる」という点があげられます。雇用契約の場合、美容室は週1日の休みで土日祝日は完全出勤とされているところも多いです。そのため、子どもがいる人や家庭の事情で遅くまで働けない人は、フルタイムでの勤務が難しいでしょう。

メリットも多い業務委託ですが、インボイス制度がはじまることで事務的・金銭的な負担が増えるなど、影響があることも考えられます。どのような影響があるのか、自分にとってベストな働き方は何かを考え、美容室としっかり話し合うことも大切です。

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